大好評!ゲームデザイナーの野中大三さんによるプロレスコラム!
■『ベルク Presents WRESTLE KINGDOM 18 in 東京ドーム』
1月4日(木)14:45開場 16:30開始
東京・東京ドーム
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※「ロイヤルシート」「アリーナA」「アリーナB」「バルコニースタンド」「車椅子席(1Fスタンド)」は完売となりました。
■第70回「SANADA対内藤はスペックと世界観の闘い」
みなさんこんにちは!
年末恒例の『WORLD TAG LEAGUE』も終わり、今年も残すところあとわずかです。
新日本プロレスの2023年は変化がたくさん見られた1年でした。
新ユニットの誕生に、海外遠征中選手の帰国、選手のユニット間異動。そしてなんといっても最大の変化はIWGP世界ヘビー級王座にSANADA選手が着いたことでしょう。
4月の初戴冠以来、“V4”を達成し、王者のまま年を越して東京ドームのメインに立ちます。
今回はそのSANADA選手がドームで内藤選手を迎え撃つIWGP世界ヘビー級選手権試合についてゲーム的に論じていきましょう。
それではゲーム的プロレス論、PUSH START!
■スペックのSANADAと世界観の内藤
SANADA選手と内藤選手。どちらも試合巧者のいわゆるテクニシャンタイプという点では似たスタイルの選手と言えますが、トップに登りつめるため選んだ道は異なります。言うなればプロレス思考が異なります。
SANADA選手のプロレス思考とは何か。
それは身体能力を最重視したプロレスの競技性の追求にあります。
L・I・J時代から身体能力の高さを強みにしてきたSANADA選手ですが、Just 5 Guys結成後はそのスタイルに磨きをかけています。コスチュームは装飾物を減らし、肉体を全面に見せるように変え、コメントでも着飾ることをやめ、素のままをさらけ出すようになりました。試合で魅せるスタイルです。
L・I・J時代のフィニッシュ Skull Endに加え、新フィニッシャーのデッドフォール、師匠・武藤敬司さんのシャイニングウィザードを投入し、相手選手を振り切るスタイルが完成しました。
『G1』では好勝負の果てに相手の技も体力も出し尽くさせた状態で勝ちを重ね、ブロック全勝の成績。
プロレスでSANADAには着いていくのは困難、と思わせる強さを示したのです。
プロレスラーとしての性能の高さで勝負することを重視したスタイルはスペック追求型と言えるでしょう。
一方の内藤選手は世界観を突き詰めるスタイルです。あらゆるスタイル、テイストの試合に対応できる内藤選手ですが、その魅力は我を通す制御不能な世界観にあることは語るに及びません。
この一戦に向けても「今のSANADAよりドームのメインに価値がある」となかなかの爆弾を投下しザワつかせてくれています。気が向くまま自由なスタイルでプロレスを楽しむその世界観がファンの耳目を集めるのです。結果、タイトルに絡まずプロレス大賞MVP受賞。「これぞ内藤哲也」を存分に発揮しました。
「ドームのメインに戻り、勝って大合唱をする」という公約を果たすまであと1勝。
プロレスラーの欲がファンを酔わせ夢中にさせます。リング内外で自分中心のドラマを作り上げるスタイルは世界観求道型であると言っていいでしょう。
スペック偏重でトップに登りつめたSANADA選手と、独自の世界観でトップに君臨している内藤選手。
この対比がこの一戦の注目ポイントになります。
■スペックvs世界観論はゲーム業界の永遠のテーマ
スペックか世界観か。
この議論はゲーム業界ですっーーーと繰り広げられてきました。本当に長く終わりなき議論になっています。
スペック重視のタイトルの代表例はEAの『FIFA』シリーズ、SIEの『GRAN-TURISMO』シリーズ、Rockstar Gamesの『Grand Theft Auto』シリーズなどでしょう。
これらはとにかく「圧倒的」の一言に尽きます。キャラクターモデルの作り込み、キャラの多さ、マップの広さ、遊びこみの深さなど、とにかく作り込みがすさまじい。キャラクターの顔のシワ一本、石ころ一つに魂が宿る作り込みがにじみ出る驚愕の技術が詰め込まれています。
他方、世界観でユーザーを夢中にさせるゲームもたくさんあります。技術力ではなく、あくまで情緒に訴える作品性で感動を与える作品たちです。アトラスのペルソナシリーズやスクエア・エニックスのニーアシリーズが世界感追求型の代表作言えるでしょう。
スペック追求型と世界観求道型。どちらも魅力あるゲームであることに変わりはありませんが、刺激される心の場所は異なります。
「こんなところまで作り込んでいるなんてすごい!」
「こんな魅力的なキャラクターは見たことない!」
どちらも感動ですが、評価軸は異なります。
比較できない要素だからこそ比較論が白熱します。矛盾を抱えながらもわがままにどっちがおもしろいか、楽しめるかを想像してゲームを選ぶ。このわがままで非科学的な比較ができるのもまたエンタメ分野のおもしろさでもあるのです。
■比較できないからこそ競うのがおもしろい
話題をイッテンヨンに戻しましょう。
SANADA選手はL・I・J時代、内藤選手が作り出すL・I・Jという世界観の登場人物でした。
L・I・Jを抜けた以上、世界観で競うのではなく得意としている身体能力を追求するスタイルに絞り込みをしました。肉体の張り、体捌きのキレ、フィニッシュ時の畳みかけは対戦相手の追随を一切許しません。
「やっぱり今のSANADAには勝てない。」
そう思わせる説得力に満ちています。まさにスペック追求型の極みと言えます。
一方の内藤選手も世界観求道型として仕上がっています。
手書きのけんりしょうを携えて、ジェフ・コブ選手との一戦を勝手に権利証争奪マッチに変え、ファンを沸かせました。ドームの向け目の手術を行った後の欠場期間も突然会場に姿を見せるなど制御不能の世界観は今もファンに歓喜の動揺を与えています。
「やっぱり内藤はおもしろいな。」
これが今の内藤選手を見てファンが抱く思いでしょう。制御不能なプロレス世界観ここに極まれり、です。
新日本プロレスの入門テストを同日に受けた二人はニアミス、合体を経て、対角に立つ関係になりました。
どちらが強いかと聞かれれば、どちらも強い。では勝敗を分けるのは何なのか?
それは両者が求めてきたプロレス観に違いない。
スペックを求めるSANADA選手か、世界観を究める内藤選手か?
比較にならない思想だからこそ比較するのがおもしろい。
プロレスの醍醐味、贅沢さが詰まった最高の一戦を楽しみましょう!
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■野中大三(のなかだいぞう)
dotswreslerアーティスト、コラムニスト
プロレスラーをドット絵で表現するdotswrestlerをTwitterで公開中。
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https://twitter.com/daizonnonaka
●新日本プロレスメールマガジンにてコラム「今週の一点集中」連載中
https://sp.njpw.jp/columnprofile/nonaka
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