試合後、内藤は立ち上がって勝ち名乗り。そして、大の字の武藤に視線を落としてから、右腕を突き上げる。
すると武藤は立ち上がり、内藤の拳にプロレスLOVEポーズを合わせ、内藤の手を握ってからコーナーにもたれる。内藤は感極まった表情を見せる。
そして武藤がロープを開けると、内藤はリングを下りる。内藤はL・I・Jのメンバーと共に退場。
ここで武藤がマイクを握る。
■武藤のマイクアピール
「東京ドーム、たくさんのご来場、ありがとうございます!(場内拍手&歓声)。39年間、続けてきたプロレス、今日で引退しますが、武藤敬司のプロレス人生、最高に幸せでした!(場内拍手&歓声)。みなさんのおかげです、ありがとうございました(場内拍手&歓声)。
えー、自分がいなくなっても、プロレス界は、ますますバク進していきます!(場内拍手&歓声)。どうか、これからもよろしくお願いします!(場内拍手&歓声)。
というところで、まだ自分で歩いて帰れるし、ちょっとエネルギーも残ってるし、まだ灰にもなってねえや!(場内拍手&歓声)。どうしても、やりたいことが一つあるんだよな!(場内拍手&歓声)。蝶野!(場内拍手&歓声)。俺と、戦え!!(場内拍手&歓声&蝶野コールが発生)。アレ、服部さん、いない? 服部さん? 服部さん! あの、裁いて、レフェリーして、レフェリー! 蝶野、カモン!(場内拍手&歓声)。戦え、蝶野! (ここで蝶野はヘッドセットを取り、杖をついてリングに向かう)」
場内に蝶野のテーマ曲『FANTASTIC CITY』が流れ、蝶野コールが巻き起こる中、蝶野がリングに上がる。
そして服部レフェリーの合図で開戦のゴング。リングアナは「特別試合、シングルマッチ、武藤敬司vs蝶野正洋を行ないます! 特別レフェリー、タイガー服部!」とアナウンス。
場内が大きな拍手と歓声に包まれる中、武藤と蝶野はロックアップ。武藤は押し込むが、蝶野は顔面かきむしりから張り手。
そして蝶野はシャイニングケンカキックを炸裂。続いて蝶野がSTFを決めると、武藤はたまらずギブアップ。場内が大きな拍手に包まれる中、蝶野は笑顔で武藤の肩を叩く。
そして服部レフェリーが両雄の腕を突き上げる。蝶野は武藤とガッチリ抱擁し、リングを下りる。
続いて古舘伊知郎氏がリングに上がり、武藤に以下の餞の詩を送った。
■古舘氏の詩
「山梨県富士吉田市に生まれし一人の男子。
入門から半年あまり、あの月面の奥義を身につけて、気がつけばアメリカマット界を席巻していた。
いったい、プロレスLOVEとはなんなのか? この男に二元論は通用しない。ストロングスタイルか、アメリカンプロレスか? ベビーフェイスか、ヒールか? はたまたプロレスか、格闘技か? まったく通用しない。
思えば昭和、平成、令和。時代は移ろっても、技、試合のありよう、そして観客の声援スタイルが変わろうとも、一貫してこの男は二者択一を超えて、格闘芸術を作ってきた。
作品を作るとき、必ず心は削られていく。両の膝に人工関節を埋め込んで辿ってきたいばら道。じゃ、心は削られたのか? 団体を渡り歩き、まばゆいスポットライトを浴びながら、常に志半ばで逝った橋本を思い、プロレスに殉職した三沢を抱き、昨年旅立った猪木を仰ぎ見ながら戦ってきた。
もう、限界なんてとっくに過ぎていた。しかし、限界を超えてもなお輝き続けた夢物語。そろそろ、今夜がお開きか。
そう、これ、昭和プロレスの終焉なり。さあ、ザ・ファイナルカウントダウン。武藤、この610文字に愛を込めて、いま積年の思いを込めて、さよならムーンサルトー!」
そして『HOLD OUT』が鳴り響き、古舘氏は武藤と握手をかわし、リングを下りる。大きな「武藤」コールの中、武藤は四方に礼をすると、リングをあとに。
武藤は花道を下がりながら場内に手を上げ、入場ゲートまで進む。ここで立ち止まると『HOLD OUT』が止まり、武藤が振り返る。
そして「赤コーナー、245パウンド、“プロレスLOVE”武藤~、敬司~!」という最後のコールと共に、武藤はプロレスLOVEポーズ。
ここで『HOLD OUT』が再び流れると、武藤はバックステージへ。そしてテーマ曲が鳴り終わると、ビジョンには「プロレスLOVE 武藤敬司」の文字と共に、武藤、三沢さん、橋本さんの写真が浮かび上がる。こうして天才レスラー、武藤敬司は現役生活に幕を閉じた。