メインイベント(第8試合)では、内藤哲也が武藤敬司(NOAH)の引退試合に出陣。
1.21横浜アリーナで武藤から引退試合の相手に指名された内藤。かつて自身がプロレスラーを目指すきっかけとなった武藤の介錯人として、今回はドームの大舞台に立つことに。
完敗を喫した2012年の1.4東京ドーム以来、約11年ぶりの対決で、内藤はその成長の跡をレジェンドの肉体に最後に刻みこむのか? それともプロレス界に多くの功績、そして影響を残した武藤が、勝利でレスラー人生にピリオドを打つのか? まさにデスティーノ(運命)という言葉にふさわしいドリームカードが、いま決戦の火蓋を切る。
まずは武藤の闘魂三銃士の盟友・蝶野正洋が花道を入場。リングに上がると、「蝶野」コールに包まれる中、マイクを手にする。
■蝶野のマイクアピール
「ガッデム! アイアム、チョーノ!!(場内拍手&歓声)。ついに、この日が来てしまいました。 武藤敬司、引退試合。本当に、お疲れさまでした(場内拍手)。今日はみなさん、最後まで武藤敬司の応援、よろしくお願いします!(場内拍手&歓声)」
そして蝶野は放送席へ。棚橋弘至も含め、リングサイドからこの大一番を見届けることに。
続いて煽り映像が流れてから、まずは内藤が入場。内藤はリングに入ると、高々と右腕を突き上げる。セコンドにはL・I・Jのメンバーの姿が見える。
そして武藤の歴代のテーマ曲がメドレーで流れ、武藤は姿を現すと『HOLD OUT』の旋律と共に、「武藤」コールの中を花道を進む。リングサイドにはNOAH正規軍が集う。
選手コールが終わると、内藤は武藤に笑みを見せながらスーツを脱ぐ。
開始のゴング、武藤は内藤をジッと見つめる。内藤は場内を見渡し、両者はゆっくりと動き出す。
そしてロックアップで組み合うと見せかけ、内藤は下がって間を外す。今度こそロックアップで組み合い、武藤がロープに押し込む。
内藤は体勢を入れ替え、クリーンブレイクと思いきや、武藤の足を取りにいく。これはレフェリーが割って入る。
続いてグラウンドの攻防に移ると、武藤が内藤の左腕を捕獲。そしてヘッドロックへ。
この状態で立ち上がると、内藤が足を取ってレッグロックで捕らえる。武藤はキーロックで切り返すが、内藤は回避してヘッドロック。
そして内藤は腕ひしぎ逆十字を仕掛けるが、武藤はアキレス腱固めで切り返す。内藤もアキレス腱固めで対抗。だが、武藤がヒールホールドで締め上げると、内藤はロープエスケープ。そして場外へ。
内藤がリングに戻ると、今度は力比べの体勢に。そこから武藤はダブルリストアームサルトで投げ、グラウンドでヘッドロック。
そして武藤はフライングメイヤーを決めると、フラッシングエルボーをお見舞い。武藤の口付近からは出血が見えるが、武藤はそれを拭うとSTFへ。これは内藤がロープエスケープ。
武藤は内藤を起こす。だが、武藤はエルボーからフライングメイヤー。そして低空ドロップキックを食らわせ、武藤の首根っこをつかむ。
武藤が場外にエスケープすると、内藤はロープワークからリングに寝転んで右腕を突き上げる。その右手のかたちはプロレスLOVEポーズ。
内藤は場外で武藤を捕らえ、花道の上に上げる。そして花道でデスティーノのように腕を取るも、武藤は逃れる。
すると内藤はバックエルボーを連発。武藤が腰から崩れると、内藤は花道で低空ドロップキック。さらに花道を十分に下がると、疾走して低空ドロップキックをお見舞い。そしてリングへ。
武藤がリングに戻ると、内藤は両足で武藤の首と肩を締め上げる。武藤は足をロープにかけてエスケープ。だが、内藤はそのまま締め上げ、場内の一部からブーイングが発生。
続いて内藤はコーナーミサイルをヒットし、右腕を突き上げる。内藤がエプロンにエスケープすると、内藤は場外に蹴落とす。
そして内藤は場外で武藤の膝裏を踏みつけ、さらにレッグロック。内藤は武藤をリングに戻し、エプロンに上がる。
すると武藤は低空ドロップキックを見舞い、ロープ越しのドラゴンスクリューを炸裂。さらに武藤はドラゴンスクリューを食らわせ、4の字固めで捕獲。内藤は苦悶の表情を浮かべながら、必死にロープに手をかけてエスケープ。
すると武藤は内藤の膝に低空ドロップキック。さらに追撃のドラゴンスクリューを狙うも、内藤は顔面かきむしり。
それでも武藤はドラゴンスクリューの体勢に入るが、内藤は延髄斬り。そして再び両足で武藤の首と肩を締め上げる。武藤は懸命に足をロープにかけてエスケープ。
すると内藤はバックエルボーを武藤の首筋に乱打し、武藤の頭を小突いて挑発。さらにバックエルボーを繰り出すが、武藤は闘魂三銃士の盟友・故・橋本真也さんのような袈裟切りチョップで反撃。
そして天にプロレスLOVEポーズを送ると、DDTを炸裂。続いて武藤は団体を超えたライバルだった故・三沢光晴さんを彷彿とさせるエメラルド・フロウジョンを繰り出してカバー。だが、内藤はカウント2でキックアウト。
ならばと武藤はシャイニングウィザードを炸裂しカバー。しかし、これはカウント2。続いて武藤はシュミット式バックブリーカーから、なんとムーンサルトプレスの体勢に。
しかし、武藤はコーナーを上ったところで足を止め、コーナーを叩いて悔しげな表情。そして武藤は内藤に串刺しシャイニングウィザードを決めると、内藤をコーナー最上段に設置し、雪崩式フランケンシュタイナーを狙う。
だが、内藤は回避し、武藤の膝裏にドロップキック。内藤は笑みを浮かべ、武藤にエスペランサを炸裂。
そして内藤はコリエンド式デスティーノを狙うも、武藤は内藤の膝にカウンターの低空ドロップキック。続いてドラゴンスクリューからもう一度4の字固めを決める。内藤は雄叫びを上げながら耐える。
内藤はなんとかロープに手をかけてエスケープ。すると武藤は追撃のドラゴンスクリューから、シャイニングウィザードを炸裂。場内は「武藤」コールが発生。
すると、武藤は内藤の後頭部にシャイニングウィザード。そして武藤はプロレスLOVEポーズから、もう一度シャイニングウィザードを炸裂しカバー。しかし、内藤は必死にカウント2でキックアウト。
ここで武藤は天を見つめてから、内藤にシュミット式バックブリーカー。そしてもう一度ムーンサルトプレス狙いでコーナーを上るが逡巡。
武藤は再びリングに下りるも、スキをついて内藤が低空ドロップキック。そして掟破りのドラゴンスクリューを炸裂。内藤の眉間付近からは出血が見られる。
続いて内藤はなんとシャイニングウィザードを炸裂。しかし、カバーはカウント2。すると内藤は相手のお株を奪う4の字固めへ。
武藤は悲痛な叫びを上げ、場内は「武藤」コールが発生。その状態で武藤が両肩を着くと、レフェリーはマットを叩く。武藤はカウント2で肩を上げる。
すると内藤は自ら4の字固めを解除し、武藤の後頭部にシャイニングウィザード。さらにもう一発シャイニングウィザードを叩き込んでカバー。だが、武藤はカウント2でキックアウト。
すると内藤はプロレスLOVEポーズを見せてから、一気にデスティーノを炸裂。そしてカバーすると、武藤は返すことができず。内藤がレジェンドを見事に介錯してみせた。
内藤「(鷹木、BUSHI、ヒロム、SANADAのL・I・J勢を引き連れて現われ)俺は武藤敬司選手に憧れを抱き、武藤敬司選手になりたくてプロレスラーを目指し、新日本プロレスに入ってプロレスラーになって、今、ここまで歩んできましたよ。今日、引退試合を迎えた武藤敬司選手。でも、試合終了のゴングが鳴るその瞬間まで、勝利への執念を感じましたよ。
最後の最後までレスラーとして上を目指そうとした武藤敬司選手の姿になんか心打たれるものがあったし、やっぱ俺は武藤敬司選手に憧れてプロレスラーになって良かったなって思いましたよ。こうして最後引退試合の相手に指名されたこと、嬉しくないわけないでしょ? こんな幸せなプロレスラー、他にいないんじゃない?
この1分1秒を大切にしながらリングに上がりましたよ。そして、武藤敬司選手との時間を楽しみましたよ。もう武藤敬司選手はリングを降りるけど、まだ俺のレスラー人生は続くわけで、こうして武藤敬司選手のようにレスラー、お客様、そしてこうして報道陣の皆様に惜しまれながら、俺も最後を迎えたいなって思っちゃいました。まあその最後が明日なのか、来週なのか、来年なのか、10年後なのか、30年後なのかは分からないけど、これからも俺はこの新日本プロレスのリングでロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンとして闘い続けますよ。
まあ確かに今日、大事な試合は終わったかもしれない。でも、また明日から大事な試合は続くわけでね。そう、明日から『FANTASTICA MANIA』が始まるわけで、休まる暇がないよ。そう、まさにオクパード、忙しいんでね。じゃあ今日は何人いるのかな? かなり多くの報道陣の方がいらっしゃいますけど、皆様、明日の高松大会も来るんですよね? ちゃんと顔を一人ずつ覚えておきますからね。
じゃあ皆様、明日は『FANTASTICA MANIA』高松大会でまたお会いしましょう。アディオス!(と言うと拳を突き上げ、そこに鷹木、SANADA、BUSHI、ヒロムも拳を合わせる)。(帰り際にもう一度)アディオス!」
武藤「(松井珠理奈さんから花束を受け取り)ありがとうございます! 持っていたほうがいいか。な? ハァ、おかげさまで自分の足で…あっちょっとそこまで車イスで来たけど(笑)。まあ自分の足で帰りました」
──引退試合を全て終えて今のご感想は?
武藤「感想? なんかそれほど悲しくもないし、またここまでの道のりの方がしんどかったな。終わってみたらなんかやっと終わったかなっていう感じで。ですね」
──内藤選手に関しては?
武藤「いやもう、指名した時からもしかしたら彼が…もしこの後ね、プロレスビジネスが落ちたらアイツのせいだよ(笑)。そういうの観察しときますよ」
──試合途中に三銃士と四天王の技を出しましたけど。
武藤「そうっすね。ただ、慣れた技じゃないからね、決めるまでには至らなかったですね。しかも、自分のムーンサルトもね、飛ぶガッツがなくてね。昔、『プロレスのためには足の1本や2本あげてもいい』っていうようなことを言ったことがあんだけど、やっぱりあげれなかったな。ちょっと俺は嘘つきだよ。あそこで躊躇しちゃったよ」
──コーナーで迷われた場面がありましたけど、どういう思いだったんですか?
武藤「いやもう家族の顔とかさ、医者の顔とか、しかもみんな怒ってる顔なんだよ。それが出てきてね、躊躇しちゃったよ」
──最後の3カウントを聞いた瞬間は?
武藤「いやもう天井見てたよ。『広いなあ、天井は』って。なんか東京ドームのあんなど真ん中で仰向けに寝られるのもないことだし、嬉しかったっすよ」
──最後終わった後に蝶野さんを指名していましたけど。
武藤「これはね、どうしてもやりたかったことなんだよ。なんだかんだ言って、蝶野とデビュー戦を一緒にやって、締めくくりはやっぱり蝶野にしたかったんだよ。よくアイツはあそこまで動けたよ。大したもんだよ。アドレナリン出てたよ、アイツ。嬉しかったっす。期待に応えてくれて」
──最後、引退試合だと10カウントゴングが恒例なんですけど、なかったのはこだわりでもあるんですか?
武藤「いや、なんとなくあっさり終わりたい、全体的に。まあ、カラッとしてんじゃん、俺。あんまりジュクジュクジュクジュクしたくないじゃん。だから、いい終わり方だと自分でも思います」
──ご自身が「ゴールのないマラソン」と言ったプロレスを今日ゴールしてみて、どんなマラソンでしたか?
武藤「やっぱり今年で39年間、途中厳しかったこともあるよ? なんつったって、怪我が絶えなかったし、今回もこの1カ月ね、ハムストの肉離れには本当に参っちゃってね。幸いにも今日はそこまで。やっぱり治療とか一生懸命やったし、リハビリとか。思った以上に自分の中でも動けて良かったですよ。まあこれは誰しも抱えることだね、怪我とかね。ゴールできて良かったっす、本当に。本当に多くのレスラーがこういうふうに引退試合ができてない中で、本当に俺は幸せなプロレス生活でした」
──そういう意味ではこれをやっとけば良かったとか悔いとかはありますか?
武藤「試合の中の悔いなんか凄えあるよ。もう少しできなかったかなって、今反省しながらこの道を。次がないのにね。次がないのに、なんか次こうしたないなっていうような気持ちで、まだ自分で引退するって実感できてねえのかもしれない(笑)。こうしときゃ良かったのになとかさ、細かいこといっぱいあんだよ」
──もう一回リングに上がりたいという気持ちは?
武藤「そんなもう、ケジメつけたんだから。そんなこと言わないでくれよ。後ろ髪引かれんじゃんかよ(笑)。もう辞めるよ」
──これからの夢を教えてください。
武藤「これから? いつも言ってんじゃん、『普通のおじさんになりたい』って。普通のおじさんになるってなかなか大変なんだよ? こんなのやっぱり人工関節の足も抱えてるし、なんとなくまともにも歩けないし。普通のおじさんはまともに歩けるからな、ゴルフ行ったり。そういうのも俺はできないんだから。普通のゴルフに行けるような体になりたいですよ。(少し間を置いてから)思ったよりも悲しくもなんともないな。ジワジワ来るんだろうな、多分ね。後からジワジワ来るんだよ。明日から何すればいいのかな、俺(笑)」
──トレーニングはしますか?
武藤「トレーニングはするよ。トレーニングしないと、人工関節とか骨弱ったら合わなくなってくるからね。そういう意味で、そういう意味も込めて普通のおじさんになりたいって言ってんだから。やっぱり自分で歩いて活動できるぐらいに常にしたいというか」
──やっぱりトレーニングはホビーであってライフワークですか?
武藤「そうですね。ルーティーンであって、そんなに1日のルーティーンは変えないつもりでいますよ」
──体が元気になってきたらどうしますか?
武藤「これだけ盛大に祝ってもらって、もしかして復帰したら、詐欺で捕まっちまうよ」
──これからのプロレス界にこうあってほしいという、自分がいなくなった後のプロレス界に言いたいことはありますか?
武藤「今日まじまじと古舘さんのコメントっていうか、なんていうの? アレを聞いてて、これでなんか猪木プロレス終焉だっていうようなことを言ってましたよね。俺もそう思うし、多分、今からは新しいプロレスというものが生まれてくるんじゃないですかね? で、この興行もPPVとかで放映して、どれぐらいの人が見ているか分からないけど、そういう部分でも大きなお金が集まってくればレスラーも豊かになったりとかして、豊かになってくればだんだん人材も増えてきたりとかして、グローバルで商売もできたりもして、それがきっと新しいプロレス界の未来かなって思う中で、今日の全ての興行が糧になってくれればいいかななんて思っています。OK! 皆さん、39年間、本当にありがとうございました」