• 2024.4.12
  • #Media
「歴史、ドラマ、生きざま……すべてを見せつけてくれたメインイベント、内藤哲也vs辻陽太戦」4.6“春の両国決戦”を大総括!【“GK”金沢克彦の新日本プロレス通信】

プロレス界随一の論客・“GK”金沢克彦氏の独特の視点から、現在進行形の新日本プロレスに関するコラムを続々レポート(不定期連載)!!
 
今回は「歴史、ドラマ、生きざま……すべてを見せつけてくれたメインイベント」4.6“春の両国決戦”を大総括!

 

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■ひとことで言うなら、自分がプロレスラーを志したときからの目標が、IWGPヘビー級ベルトであったということ。

4・6両国国技館大会では、5大タイトルマッチが組まれた。とはいえ、やはり最大の注目カードはメインイベントのIWGP世界ヘビー級選手権。

 内藤哲也vs辻陽太のロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン同門対決にあったことは間違いない。3月の『NEW JAPAN CUP 2024』をZ世代の先陣をきるカタチで辻が制覇した。

「新時代の扉が開いたぞ!」と辻は堂々と宣言。対する内藤は、辻の大躍進を喜びながらも「オレが辻にいまの新日本プロレス、いや、いまのロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンのプロレスを存分に堪能させてやるぜ!」と、まだ時代を譲る気などないことをアピールしている。

 ここ半年のIWGP世界王座をめぐる闘いの図式は、SANADAvs内藤だった。その言葉の発信力にかけては新日本プロレス随一といっていいのが、内藤である。一方、もともと寡黙なSANADAは滅多に言葉を発しないから、前哨戦というか舌戦に関しては噛み合うことがなかった。

ところが、辻は言葉をもつ男。『NJC』を制覇した直後に、「IWGP世界ヘビー級ベルトとIWGPインターコンチンタル王座をふたたび分割し、インターコンチを封印し、IWGP世界をIWGPヘビー級ベルトに戻したい」と提示した。

ひとことで言うなら、自分がプロレスラーを志したときからの目標が、IWGPヘビー級ベルトであったということ。その歴史と伝統のあるベルトに自分の名を刻み込みたい、という意思からくるもの。

もしかしたら、辻と同様の考えを持っている選手、ファンはまだ多数いるのかもしれない。初代=アントニオ猪木からスタートしたIWGPヘビー級王座の歴史。猪木を知らない世代である辻だが、「新日本プロレスを背負う」と心に決めたときから、その思いを抱くようになった。

それにしてもIWGP世界ヘビーが新設されてから、そこに対して明確に意見した男は辻が初めてだろう。

■当時から辻が独特の言いまわしで新日本マットの現状を表現していること、内藤に負けないだけの言葉を持っていたことに驚いてしまう


 また、辻にはもうひとつ、いやふたつのこだわりがあった。日体大卒業後、一般就職した辻が衝撃を受けプロレスラーへの道を目指すようになったのは、あの試合を観た瞬間から。2016年の4・10両国国技館で、時のIWGPヘビー級王者であるオカダ・カズチカに挑戦し初のベルト奪取に成功した内藤。

悲願のIWGPヘビーを手にしながらも、そのベルトを高々と宙に放り投げ退場していったシーンを目撃したときだった。この自由奔放、制御不能な生きざまを目の当たりにプロレスラーを志し、内藤と同じくアニマル浜口ジムに入門したのである。

さらに、2021年8月1日、海外修行に出る辻の壮行試合の相手を務めたのが内藤だった。11分余、辻は内藤の高角度逆エビ固めにタップした。

戦前から辻は内藤との初シングルマッチを執拗にアピールしていたし、内藤のフィニッシャーであるデスティーノを出させたいと口にしていた。

しかし内藤がフィニッシャーとして選んだのは、辻の後頭部を膝で踏みつけながらの変型ボストンクラブだった。そこで振り返ってみたとき、試合後の両選手のコメントが現状とともに未来をズバリ言い当てているのだ。

「辻の気迫は凄かったね。オレにとってデスティーノは特別な技、オレの運命を変えてくれた技だから。まあいつか、デスティーノを出すに相応しい相手となることを願っているよ。なあ、辻、オレからひとことあるとすれば、アスタ・ルエゴ! また会おうぜ!」

「最後に憧れである内藤さんと試合ができて良かった……いや違う! せっかく自分の憧れる相手と闘えるチャンスが来たのに、結果を残せなかった自分が悔しい! 内藤さん、近い将来、気付いたときにアンタはかならず内藤哲也が辻陽太の壮行試合の相手で良かったと思ってるはずだ! 今日でオレは新日本プロレス、ヤングライオンという船を降りる。どんなことがあろうとも耐えてくれる立派な船だ。ただ、進みが遅いんだ。これからはオレ自身の船で旅に出ようと思う。どんな荒波も乗り越えて、世界をも手にするレスラーになって帰って来る!」

……どうだろう? これが2年と8カ月前に両選手が発した言葉。この4・6両国決戦を迎えるにあたり、あらためて確認してみるとじつに興味深い。とくに、この当時から辻が独特の言いまわしで新日本マットの現状を表現していること、内藤に負けないだけの言葉を持っていたことに驚いてしまう。

かくして迎えた2年8カ月ぶり、最高峰のIWGP世界ヘビー級王座を懸けた二度目の一騎打ち――……。

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