大好評!ゲームデザイナーの野中大三さんによるプロレスコラム! 今回は「SANADA、覚悟のフルリニューアル」
■第59回「SANADA、覚悟のフルリニューアル」
みなさんこんにちは!
寒波との格闘シーズンを終え、花粉との格闘シーズンを迎えている野中です。
暖かくなると観戦意欲がより一層強くなるので春は花粉症対策を万全にして観戦回数を増やそうと計画中です。
さて、『NEW JAPAN CUP 2023』は勢力図の変化を強く感じるトーナメントでした。
ベスト4がSANADA選手、マーク・デイビス選手、タマ・トンガ選手、デビッド・フィンレー選手という顔ぶれになることを予想した人はいたのでしょうか?
予想外の展開の結末は、SANADA選手の初優勝で幕を閉じました。
戦前からSANADA選手を推す声は大きかったのですが、それはもちろん“L・I・JのSANADA”だったはず。“JUST 5 GUYSのSANADA”は予想外の結末だったはずです。
今回はひときわ大きな変化を見せてくれたSANADA選手についてゲーム的に論じていきます。
それでは、ゲーム的プロレス論、PUSH START!
■SANADA選手のリニューアルはまだ進行中
昨年末のスランプ発言から一転し、SANADA選手が大躍進を遂げました。
きっかけは言わずもがな、自身のリニューアルに踏み切ったことにありますね。
『NEW JAPAN CUP』中に見られたリニューアルポイントは4つ。
① 3.5後楽園ホール大会で新フィニッシュに変形DDT「デッドフォール」を初披露。
② 3.17後楽園ホール大会で内藤選手を破りL・I・J離脱、JUST 5 GUYS加入を宣言。
③ 3.19 群馬大会で髪を黒く染め、ビジュアルを変更。
④3.21長岡大会でシャイニング・ウィザードを披露し、デッドフォールに繋げてNJC制覇。
4月シリーズからはJust 5 Guysのタンクトップを着用し、ユニットのテーマ曲で入場するなど、入場パフォーマンスも変えてきました。
一気に変えるのではなく変え続けるリニューアルはこれまでにないやり方でこだわりの強いSANADA選手らしさを感じます。
この先、コスチューム、SANADA選手単独の入場曲、キャッチコピーの変更があるのか気になりますね。
ファンの耳目を集めるリニューアルができている時点でSANADA選手の決断は成功と言えるでしょう。
■リニューアルのリスク
リニューアルには大きな勇気が求められます。
SANADA選手自身が言っていた「ぶっ壊す」覚悟がないとリニューアルは大抵の場合失敗します。
これはゲーム業界でも全く同じことが当てはまります。
ゲームシリーズにもリニューアルという現象は存在し、大きな成功を残した事例もあります。
ゼルダの伝説シリーズは2017年に発売された「ブレス オブ ザ ワイルド」で完全オープンワールドシステムにリニューアルし、世界のゲームアワードを総なめにしました。まさしく、伝説の一本に進化しました。
オープンワールドを採用したタイトルの中では後発でしたが、間違いなく同ジャンルのトップランナーとなった作品です。2023年5月に続編が出るので気になる方は手に取ってみてはいかがでしょう。
スマホアプリの「プリンセスコネクト!Re Dive」は2018年にフルリニューアルが実施された作品で、その後も人気アプリとしてサービスを継続しています。リニューアル前があったことがあまり認知されていないほど、新規ユーザーを多く獲得し、ビジネスを数段上のステージに押し上げました。
ここに挙げた2タイトルはリニューアルをすることで大成功した例です。
しかし、失敗したタイトルはこの数十倍はあるのが実情です。変えてはみたものの、「こんなの〇〇じゃない」「変な仕様変更はしないで欲しい」といった批判を受けるのみ、という悲惨な結果に終わること多数です。
それくらいリニューアルは大きなリスクがあるのです。
リニューアルするということはすでに作り上げたものがり、同時にそれを支持するファンもまた存在するということです。
ファンは提供されたものを受け取り、評価し、その結果気に入れば応援してくれます。
つまり、既存ファンがリニューアルを求めるということはありえないのです。
すでに獲得できているファン層を裏切る可能性があるにも関わらず、新規層の獲得を目指すために行われるのがリニューアルの実情です。この段階で既存ファンの意見を重視してしまうと、中途半端なリニューアルに終わり「ガラリと変わる」ということはできません。
かといって、変化の方向性が既存ファンにも新規ファンにも受け入れられないという残念な事例もあります。
成功すれば既存ファンに加えて新規ファンも獲得できるが、失敗してしまうと既存ファンもいなくなってしまう。
失敗を恐れてしまうと判断が鈍り、効果的な一手を打つことができなくなってしまう。
それがリニューアルという行為の本質です。
まさにALL OR NOTHING。
全てを失うリスクを乗り越える勇気をもったものだけが全てを手に入れるリニューアルができるのです。
■ベット済のSANADA選手は結果を出すのみ
4.8両国大会のオカダ・カズチカ選手vs SANADA選手のIWGP世界ヘビー戦はSANADA選手のリニューアルの結果が問われる一戦です。
この一戦の重要ポイントはSANADA選手はがすでにリニューアルに関するリスクを支払っている点です。
そう。SANADA選手はベット済なのです。
タイトル戦でいろんなリニューアルをしてくる選手はいますが、今回はその前例にはあてはまりません。
ユニットは移籍済で、新フィニッシュは何度も見せている。かつてのSANADA選手を好んでいて、今回のリニューアルで離れてしまった人もゼロではないでしょう。
クラシカルなファイトスタイルのCold Skullはもう捨てた後なのです。
先に捨てたからこそSANADA選手には空き領域が増えました。その領域に新しいものを詰め込み、新しいSANADAができあがりつつあるのです。
本人が言う「SANADAが獲ることで一番景色が変わる」という結果のために腹を括った男はすでに大きな賭けに出ています。SANADA選手がリニューアルを進める背景にはその覚悟がある。
NOTHINGを受け入れる覚悟を持ったSANADA選手だからこそALLを手にし、新しい景色を作れるのではないでしょうか。
オカダ選手vs SANADA選手のストーリーはこの一戦から第二章に突入することでしょう。
第二章の幕を開けるのはSANADA選手なのです。
■野中大三(のなかだいぞう)
dotswreslerアーティスト、コラムニスト
プロレス観戦歴、ゲーム歴ともに38年。
プロレスラーをドット絵で表現するdotswrestlerをTwitterで公開中。
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