大好評!ゲームデザイナーの野中大三さんによるプロレスコラム。今回は「オカダ・カズチカはジャンル『プロレス』のキラータイトルになる!」
■第48回「オカダ・カズチカはジャンル『プロレス』のキラータイトルになる!」
みなさん、こんにちは。
コラム「ゲーム的プロレス論」の野中です。
熱い熱い『G1 CLIMAX』が終わりました!
史上最大規模の『G1』は長くて熱くて、ものすごくおもしろいシリーズでした。
気温も高くて連日35度超えの猛暑日続き。
猛暑に見る激戦こそG1の醍醐味であると再確認できた1ヵ月でした。
最終戦が終わるともに空気は秋らしくなり、『G1』とともに夏の終わりを肌で感じる今日この頃です。
さて、今回のゲーム的プロレス論は『G1』総括としてお届けします。
おもしろかったのはもちろんですが、“その先”や“その周り”が見えたエンディングをゲーム的に論じていきます。
■主役はずっとオカダ・カズチカだった
28人参加4ブロック制というルールでの開催となった今年の『G1』は、新しい見どころをたくさん生み出してくれました。6試合に限定されたリーグ戦は1戦の勝敗価値が重く、緊張感のある試合が続きました。
4ブロックあることでシリーズ中盤に脱落する選手が少なく、終盤までファイナルトーナメント進出の可能性を残す選手が多くなり目の離せない状況が続きました。
ジョナ選手、ヘナーレ選手、タマ選手、フィンレー選手らが大きく評価を上げ、ニューヒーローの台頭を感じさせたこともよかったです。
このように新しい見どころがたくさん生まれましたが、終わってみれば最初から最後まで主役はオカダ選手だったと言えます。
モンスターブロックと称されるAブロックはまさしくオカダ包囲網でしたが、見事にそのブロックを1位で通過。
ファイナルトーナメントの準決勝と決勝も横綱の貫禄を漂わせた試合運びでした。
武道館3連戦のランス・アーチャー戦、タマ・トンガ戦、ウィル・オスプレイ戦はどれも大熱戦でしたが、どの試合も戦前のファンの観点は「オカダに勝てるのか?」という点につきました。
それだけ今のオカダ選手は充実していて一段も二段も上のレベルにいるのでしょう。
熱戦を制して頂点に立ったオカダ選手ですが、奇策もなければ新技もありませんでした。
オカダ選手がとった戦術はただ“オカダ・カズチカを貫くこと”でした。
ここまで積み上げ、磨き上げてきたオカダ・カズチカのプロレスを貫くこと、信じることで『G1』を突き抜けることに成功したのです。
優勝までの8戦中7戦が外国人選手との試合だったことも注目すべき要素です。
グローバル展開を推進する新日本プロレスであっても中心にいるのはオカダ選手であることを見せつけました。
初対戦となったジョナ選手、トム・ローラー選手を含め世界の強豪と闘い抜いての頂点はこれまでにない価値ある優勝と言えます。
優勝したオカダ選手が口にしたのは「IWGP世界ヘビーへの挑戦」だけではありませんでした。
・G1優勝の価値向上。
・東京ドーム大会のメインイベントの確定。
・東京ドーム大会を超満員にしたい。
この発言に新日本プロレスだけではなく、プロレスというジャンルの代表者の自覚を感じました。
ゲーム業界ではゲーム業界を代表するゲームタイトルを「キラータイトル」と呼びますが、オカダ選手はプロレス界のキラータイトルになりつつある、ということなのです。
■キラータイトルの負う責任
ゲーム業界にはいくつもキラータイトルがあります。
単におもしろい、よくできている、というだけではなく「ゲームをはじめるきっかけになるタイトル」であることがキラータイトルの定義です。
そのゲームを遊びたいからゲーム機を買ってみる。これは強く、わかりやすい魅力がないとできないことです。
ゲーム作りをしているとどうしても現役のユーザーさんを見てしまいます。商売ですから、すでにこちらを意識してくれているユーザーさんの期待に応えることを第一に考えてしまうのですが、それだけでは新規顧客の獲得はできません。わかる人に伝わる、という深さを求めるコンテンツ作りはとても大切ですが、わからない人にも伝わる魅力を作ることは新規参入者を増やし、市場の活性化につながります。
普段はゲームをしない人がゲームに興味を持つ、そんなきっかけを作るのがキラータイトルなのです。
■高い視座に求められるのは芯の通った覚悟
新規顧客を獲得して業界を盛り上げるのがキラータイトルの役割。
とてもかっこいいです。尊さすら感じます。
しかし、現実はそう甘いものでありません。ジャンルを代表する存在になるのは簡単なことではないのです。
ゲーム業界なら競合メーカーからどんどん新作が発売され、既存顧客の奪い合いが常態化しています。
既存顧客から目を離していては売れるゲームは作れません。業界の発展は大切ですが、シリーズの継続、タイトルのヒット、もっと現実的なことを言うと今期の売上が一番大切なのです。
こういった目の前に迫る事情に奔走していると業界全体の未来を考えるという高い視座を保てなくなります。
プロレス界も同じことが言えます。ライバル選手に勝ち、タイトルを奪い合い、ファンの満足度の高い試合をする。眼前に迫る生存競争を生き抜くことがプロの使命です。
熾烈なしのぎ合いが激しい闘いを生み、盛り上がり、ファンを呼び込む引力を発生させるのがプロレスの魅力ですが、1選手が能動的にプロレス界を盛り上げるという高い視座を維持するのはものすごく難しいことです。
かつては棚橋選手がタイトルマッチをこなしながら多角的なメディア露出を行い、新日本プロレスをV字回復させることに成功しました。
その姿を見ていたオカダ選手だからこそ、次は自分が新日本プロレスを背負うという覚悟を持ったのでしょう。
『G1』という過酷なリーグ戦を戦い抜いたあとに「ドームを超満員にしたい」という高い視座からの発言ができるオカダ選手には間違いなく芯の通った強い覚悟があります。
この覚悟があればオカダ選手は高い視座を持ち続け、プロレス界をけん引する存在でい続けるでしょう。
『G1』を勝ち抜きオカダ選手が勝ち取ったのはトロフィーと優勝旗だけではなく、プロレス界を代表し、世界を見据える高い視座だったのではないでしょうか。
この高い視座を持てる選手が生まれた新日本プロレス、いや、プロレスというジャンルは強い。
2022年下半期、プロレス界はオカダ選手が引っ張ってくれるでしょう!
■ゲーム的プロレス論『G1』アワード
最後に野中が選ぶゲーム的プロレス論G1アワードを発表させてもらいます!
・MVP:オカダ・カズチカ選手
・ベストバウト: 8月17日日本武道館大会、内藤哲也選手vsウィル・オスプレイ選手
・インパクト賞 :ジョナ選手
・ブレイク賞 :デビッド・フィンレー選手
・ベストテクニック賞: トム・ローラー選手
次のシリーズがはじまるまでの期間、みなさんもG1を振り返り、余韻を味わい尽くしてみてください。
■野中大三(のなかだいぞう)
dotswreslerアーティスト、コラムニスト
プロレス観戦歴、ゲーム歴ともに38年。
プロレスラーをドット絵で表現するdotswrestlerをTwitterで公開中。
●Twitterアカウントはコチラ!
https://twitter.com/daizonnonaka
●TAICHI GAMEPLAY CHANNEL Tシャツ新発売!
https://shop.njpw.co.jp/products/4495
●TJP選手「dotswrestler」Tシャツ新発売!
https://shop.njpw.co.jp/products/4442
●高橋ヒロム選手dotswrestlerタオル新発売
https://shop.njpw.co.jp/products/4370008456
●棚橋弘至選手 BIG PIXEL Tシャツ好評発売中!
https://shop.njpw.co.jp/products/4298
●L・I・J 「dotswrestler」ver.3 Tシャツ好評発売中!
https://shop.njpw.co.jp/products/4305
●SANADA選手×dotswrestler Tシャツ好評発売中!
https://shop.njpw.co.jp/products/4251