プロレス界随一の論客・“GK”金沢克彦氏の独特の視点から、現在進行形の新日本プロレスに関するコラムを続々レポート（不定期連載）!!

今回は「“中心軸”となるべき男は、やはりレインメーカーしかいない」『G1』日本武道館3連戦を大総括！　　

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■私が見てきたかぎりで言うなら、ランス・アーチャー史上ベストマッチと言っていい内容となった

2000年の第10回大会以来、じつに22年ぶりの4ブロック制を採用し、さらに史上最多の28選手が参加し開催された今年の『G1 CLIMAX32』（以下、『G1』）。

大混戦のさなか迎えた8月16~18日の日本武道館3連戦はまさにクライマックスとなり、最後はオカダ・カズチカが2連覇、通算4度目の優勝を飾った。

今回は日本武道館3連戦を振り返るとともに、ファイナルトーナメント決勝戦で相まみえたオカダとウィル・オスプレイの2人にテーマを絞って総括してみたい。

まず、16日のメインイベントに組まれたAブロック最終公式戦のオカダvsランス・アーチャーの一戦に関して。率直にいうなら、武道館のメインとしては「どうなのかな?」という感覚を大会前には抱いていた。

ところが、この一戦が凄まじいばかりのド迫力マッチと化した。開幕前から、「Aブロックは怪物ばかり」とオカダが言っていた通りで、ジェフ・コブ、ジョナ、バッドラック・ファレ、ランスとモンスター外国人たちが集結した過酷なAブロック。

そのトリを飾るに相応しい激闘となり、私が見てきたかぎりで言うなら、ランス・アーチャー史上ベストマッチと言っていい内容となった。もう入場時からランスの気合の入りかたは半端ではない。先に入場すると、リング中央に仁王立ち。

あと入場のオカダに一瞥もくれず、開始のゴングが鳴っても仁王立ちのまま微動だにしない。やや戸惑いながらオカダが仕掛けると、いきなりハイアングルのチョークスラム。この一撃で観客のハートを鷲づかみにしてしまった。

場外戦でもドギモを抜かれた。鉄柵に後頭部が挟まるような体勢で尻もち状態のオカダに向かって、2m超え、120㎏超えの巨体を躍らせてキャノンボールを叩き込む。大袈裟ではなく、「あわや大事故か!?」といった戦慄シーンだった。

さらに得意のオールドスクール（ロープ渡り）からムーンサルトアタック。掟破りの逆レインメーカーなど一撃必殺の大技はすべてバズーカ砲のようだった。どちらかといえば、巨体ながら運動神経のいいランスには器用貧乏なイメージもあった。ところが、どうだ! 完全にモンスターとして覚醒した感がある。

その猛攻に必死に耐え抜くオカダの姿を見ていると、全盛期のアントニオ猪木の姿がオーバーラップしてきた。対スタン・ハンセン、対ブルーザー・ブロディ、対ビッグバン・ベイダーと、動けるモンスターたちを相手に死線を彷徨うかのような大激闘を展開してきた猪木。

オカダはあのころの猪木そのものだった。相手の力を何倍にも引き出しておいて、耐えに耐えぬいた末にギリギリで仕留める。

最後の開脚式ツームストンパイルドライバーからレインメーカーでの大逆転勝利は、まさしくそれだった。ランス史上最高のモンスターぶりを引き出したオカダは、ついに神であるアントニオ猪木の域まで達したのではないか!? 素直にそう感じるほどスリリングな好勝負であった。

■ひとことで言うならノンストップ。スピード、切り返し、立体攻撃と天才肌の両者はまったく譲ることなく動きまわる。

翌17日のメインイベントは、ファイナルトーナメント準決勝となる内藤哲也（Cブロック1位）vsウィル・オスプレイ（Dブロック1位）の一戦。なんと、両者は初のシングルマッチ。これは超プレミアカードである……。

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