自他ともに認める、プロレス界を代表する大のスーパー・ストロング・マシンファンとして知られるのが村田晴郎アナウンサー。
今回は、新日本プロレスの実況&会見でもおなじみの村田アナが、今回の“マシン引退”の報を聞いて、去来した想いを特別寄稿!
大会を目前にWEBで無料公開!!
『共闘ことばRPG コトダマン Presents KIZUNA ROAD 2018 ~スーパー・ストロング・マシン引退セレモニー~』
6月19日(火) 17:30開場/18:30開始
東京・後楽園ホール
★チケット情報/★対戦カード情報
※当日券は16:00より発売!
※今大会は休憩時間がございません。あらかじめご了承下さい。
■マシンは最後までマシンであることを選択し、マシンのままリングを降りる
2018年6月19日後楽園ホール。
スーパー・ストロング・マシン選手が引退する。
引退試合はなく、セレモニーのみだが私は満足だ。
「闘えるコンディションではない」
あの頑固でプライドの高いマシンがそう言うのならそうなのだ。
らしくていい。
悲運のマスクマンと呼ばれ「マスクマンはヘビー級では大成できない」なんてことも言われてたような気もする。
素顔になるタイミングは何度かあった。
だがマシンは最後までマシンであることを選択し、マシンのままリングを降りる。
スーパー・ストロング・マシンを愛した者としてそれが嬉しい。
中学生の時にワールドプロレスリングでストロングマシーン1号を見た瞬間、私はマシンの虜になった。
プロレスファンとして初めて特定の選手を好きになった。
それ以来、人に「一番好きな選手は?」という質問には必ず「スーパー・ストロング・マシン」と答えている。今でも。
もちろん好きなプロレスラーはたくさんいるし、応援し続けているプロレスラーもたくさんいる。プロレスを見続ける限りそれはもっと増えていくだろう。
でも「一番は?」と問われたらマシン以外の答えはない。
マスク、ファイトスタイル、リングでの生き様、全てが私の心を捉えた。
将軍KYワカマツに操られる悪の戦闘マシーンが心とプライドを取り戻し、意志を持って闘う姿に燃えた。
私はマシンがチャンピオンになり、トップとして君臨することを望んでいた。純粋なファンとしての願いだ。
しかし、昭和新日本プロレス黄金期、強烈なライバルたちがひしめき合うリングはあまりにも過酷だった。
あと一歩というところまできて、思いを果たせないマシンの姿を見て私も悔しさを噛み締めた。
そんな辛い現実にふと寂しくなってしまうこともあったが、それでも「俺もやれるんだ!」ともがき闘い続ける孤高のマシンは最高にかっこよかった。
間違いなく私のヒーローだった。
■マシンの虜になったことによって、私はディープなプロレスファンへの道を歩み始めた
あくまでも少年時代の娯楽のひとつという位置付けだったプロレス。
マシンの虜になったことによって、私はディープなプロレスファンへの道を歩み始めた。
テレビ観戦だけでは飽き足らず、もっとプロレスを知るために、ついにプロレス雑誌を買うようになったのだ。
書店で偶然見かけた雑誌の表紙にマシンがいた。雑誌名は『週刊ビッグレスラー』。当時創刊したばかりの新雑誌だった。
プロレス情報誌として選ぶなら『週刊プロレス』か『週刊ゴング』が正解なのはわかっていたが「『ビッグレスラー』はマシンの記事と写真が多い。マシンの情報ならこれが一番だ」という気のせいというか、完全な思い込みによって購読し続けた。
マシンの試合レポートに一喜一憂し、マシン以外のプロレスも深く知るようになった。
ハガキにマシンのイラストを描いて送ったら読者コーナーで採用された。
だが程なくして『ビッグレスラー』は廃刊に。
それなりに愛着があったので残念だったが、その後ちゃんと『週プロ』と『週ゴン』を読むようになったので結果オーライである。
■本物のマシンに興奮と緊張の私、声を振り絞り「せ、背中に書いてください!」とお願いし、背中を向けた。
プロレスファンとして経験値を積んだ私は、プロレスショップに足を運ぶようになった。
当時、御茶ノ水駅の近くにプロレスショップがあり、クラスメートのプロレス仲間としょっちゅう通っていた。
ある日、店に行くとなんとマシンのマスクが売られていた。
初めて見る本物の玉虫ラメ生地の試合用マシンマスク。
めちゃくちゃカッコいい。
欲しい! …が、値段は1万5千円。
現在と比較すると破格だが、当時の中学生にとってはあまりにも高価。ファミコンが買えてしまう。
悩みに悩んだが、我慢できずに貯金をはたいて(プラス親からの援助)購入。
記念すべきマスクコレクション第1号となった。
マスクを買ったことによって熱心なマシンファンと認知されたのか、ある日、店長がニヤリと笑って私にこう言った。
「マシンの公認ファンクラブを作ることになったんだ。近々ファンクラブ限定のサイン会をやる。今なら会員番号は2番だ!」
もちろん断る理由などない。
「No.2」と刻印された会員カード。
「2号か…」と複雑な思いはありつつも、自分が世界で2番目のマシンファンになった気がして興奮した。
そして待ちに待ったサイン会当日。
あらかじめ購入していたマシンTシャツを着た私は「背中に直接サインを書いてもらう!」と決めていた。
目の前にいる本物のマシンに興奮と緊張の私、声を振り絞り「せ、背中に書いてください!」とお願いし、背中を向けた。
するとマシンはあのごわごわした声で「こうかー」と言いながら私の背中をぽりぽりと掻いた。
マシン渾身のスーパー・ストロング・ジョーク!
しかし緊張マックス状態の私には笑う余裕など当然なく
「ち、違います!」
と言うのが精一杯。
そしたらマシン「わかってるよ!」とやっぱりあのごわごわした声で即答。
多分ボケを殺されたことが恥ずかしかったのかもしれない。
でも、その後は「背中に書いたら着れなくなっちゃうよ、いいのかー?」と言いながらサインしてくれた。
いいんです。着ないから。
そのTシャツは30年以上経った今でも宝物としてタンスに保管してあります。
マシン選手と私の接点は今のところそれが最後。
大人になり、プロレスの実況をするようになって「仕事としていつかご一緒できるかなぁ」と漠然と思ってはいましたが、その機会は訪れませんでした。
■あぁそうか、私はマシン選手の引退試合を実況していたのか。何という巡り合わせ。
そのうちマシン選手は表舞台に姿を見せなくなってしまいました。
近年は道場でコーチをされているという話を聞き「お元気なんだな」と嬉しく思うと同時に「もうマシンの姿を見ることはないんだろうな」と少しずつ気持ちの整理をつけてきました。
私の中でマシン選手の存在がメモリーになりかけていた今年の4月、公式に引退の報が発表された。
正直ホッとした。
「これでちゃんと見届けられる」
そしてマシン選手が引退される6.19後楽園ホール大会、新日本プロレスワールド生中継の実況を私が担当することになりました。
引退試合はなし。
セレモニーのみ。
よってマシン選手のラストマッチは2014年4月2日の後楽園ホール大会での6人タッグマッチになります。
井上亘さんの引退興行でした。
ん?
あれ?
その大会はサムライTV生中継してたぞ。
実況は…私だ。
あぁそうか、私はマシン選手の引退試合を実況していたのか。
何という巡り合わせ。
こんなことってあるんだなぁ。
人生って不思議で面白い。
14歳の頃の自分が知ったら「すげー!すげー!」と大喜びするだろうな。
当日はどんな想いが胸に去来するのか?
自分でも全くわからない。
だが、マシンファンの自分と実況アナウンサーである自分は全然違う。
それはそれ、これはこれ。
当日はしっかりと今の新日本プロレスの闘いを解説の方と一緒に伝えようと思います。
そしてスーパー・ストロング・マシン選手の最後の勇姿を会場の皆様、配信をご覧なってる皆様と共に目に焼き付けたいと思っております。
●村田晴郎(むらた・はるお)
新日本プロレスの実況アナウンサーや記者会見の司会でもおなじみ。プロレスのみならず、インディカーシリーズ、そしてキックボクシング『KNOCK OUT』など幅広い分野で実況を担当。ナレーター、声優としても活躍中。2018年4月よりフリーとなる。
Twitterアカウントはコチラ→@MTharuo
Instagramのアカウントはコチラ→ https://www.instagram.com/mtharuo/
『共闘ことばRPG コトダマン Presents KIZUNA ROAD 2018 ~スーパー・ストロング・マシン引退セレモニー~』
6月19日(火) 17:30開場/18:30開始
東京・後楽園ホール
★チケット情報/★対戦カード情報
※当日券は16:00より発売!
※今大会は休憩時間がございません。あらかじめご了承下さい。