新日本プロレスは、ただいま北米に遠征中!! カナダ2連戦(BCW5・9ウィンザー、ROH&新日本合同興行5・10トロント)を終えた一行は、5月11日(現地時間、以下同じ)にアメリカに移動。翌12日は休養にあてた。
13日は夕方からROH道場(ペンシルベニア州ブリストル)でセミナー&トライアウトが行われる予定であり、昼過ぎまで自由時間。このタイミングで中邑が動いた。
この日、ROH道場近辺の、フィラデルフィア郊外に一行は滞在。なんとダニエル・グレイシーの道場がフィラデルフィア市内にあると聞きつけて、突然の“敵情視察”におもむいた。
突然の行動のため、もちろん“アポなし訪問”。中邑が到着したのはちょうど時計の針が正午を回ったあたり。それでも足を踏み入れた道場では、大勢の道場生が汗を流していた。
その時点で道場内にダニエルの姿は見当たらず。道場破りが目的でないとあって、そのまま練習は続けられ、中邑は興味深く練習風景を眺めていた。
中邑が到着して1時間ほど経過しようとしたころ、奥から姿を見せたのがダニエル・グレイシー。最初は目的をはかりかねてか、真っ直ぐ中邑の元に歩を進めて一触即発の 雰囲気に。
しかし、中邑が「近くまで来たので、どんなところか寄ってみた」と伝えると、攻撃的な姿勢は一転。追い払うことなく、あえて手の内を見せるかのように、さらに熱を帯びた練習を指示。
それだけでなくダニエルは中邑に「いつ来てもらって構わない。なんなら、ここで練習してもらってもいい」と余裕の発言。5月25日の横浜アリーナ決戦に向けての自信がうかがえた。
視察を終えた中邑に、“ホームグラウンド”でのダニエルの姿がどのように映ったか直撃、次のコメントが返ってきた。
■中邑真輔に一問一答
■プロレスで「自分を発揮できてない」とか「慣れてない」って部分ばかり見えてたのとは、考えを変えないといけないかも
——なぜ、ダニエル・グレイシーの道場を訪問しようと思ったのですか?
中邑 ま、せっかくだから。近所まで来たんでね。
——実際に足を踏み入れて、イメージしていた道場とは違ってましたか?
中邑 治安がそんなによくない所にあることで、まず見る目が変わりましたね。行くまではイメージするどころか、まったく見えてなかった。柔術の世界チャンピオン、それにグレイシーという実績と名前だけで捉えていたのが、実際の姿を今日は、初めて見た感じ。
——ダニエルのリアルな姿が見えてきたというか。
中邑 ジムはどうなっているのか? どういう生徒が練習しているのか? どういうファイターが彼の下に集まって来てるのか? そのへん凄くわかりました。さらにリング上だけのダニエルでなく、彼自身のバックボーンも見えてきた。これはちょっと、いままでのように「プロレスで自分を発揮できてない」とか「まだプロレスに慣れてない」って部分ばかり見えてたのとは、ちょっと変えないといけないかもしれない……。
——いままでのように表面ばかりで捉えていてはダメだと?
中邑 そうですね。それと彼の生徒の練習の“濃さ”を見てると、自分の2005年までぐらいの生活を凄く思い出しました。こういう場所を仕切るのとか、ほかのジムからも練習に来ているのもあって、セコンドについてもらうとか、試合でのオペレーションがシッカリしてるというのは、彼らに「命を預けられてる」わけで。そういう部分、リング上だけでは知る由もなかった。正直、来てよかったなと。
——たしかに見えてなかったダニエルの総合的な人間性が見えてますよね。
中邑 プロレスのリングは彼にとってチャレンジなんでしょうけど、いろんな意味で、危険なダニエルと闘うのは自分もチャレンジだし、これまで自分が培ってきたモノを懸けるという部分は、ほかのレスラーの誰よりもリスキーですよ。ただし、そのぶん「誰もやれない」って部分では非常におもしろいんで、光栄というか、誇らしいですけどね。
——なるほど。
中邑 ただファイトに関しては、それが出るのはいいのか悪いのかボクにはわからないけど……。一回、総合(格闘技)で負けてる(2002年12月31日、「INOKI BOMBAYE2012」にて腕ひしぎ十字固めで敗戦)わけなんで、いくら自分が総合デビュー戦だったと言っても、いろんな意味で「勝ちたい」っていう気持ちがより一層強くなりましたね。ここに来てみて。
■思っている以上に、「もしかしたらダニエルたちは、プロレスというものを理解してるんじゃないか?」と。
——ダニエルの本当の姿を見たことで、横浜アリーナで闘ったあと、共感できるものが生まれる可能性もある?
中邑 ただ、「グレイシーがなぜプロレスに?」という思いはいまだにあって、それがおそらく彼の自己主張なんだという部分でね。そこは興味がありますね。コレは直接聞いたわけじゃないですけど……、ダニエル自身、じつはもの凄くプロレスが好きらしいじゃないですか? まぁ、仮に本当にそうだとしても、その部分を披露するのは横浜アリーナの後になると思いますけど。
——「グレイシーが新日本に乗り込んできた」ということで、侵略として見られてますけど、その奥にも何かありそう?
中邑 「侵略」的に見られてきましたけど、じつは違うんじゃないかっていうね。ただ、今後どうしていくのかは、自分にはわからないですけど。
——侵略という1点だけで、横浜アリーナの闘いを見ていては本当の部分は見えないと?
中邑 思っている以上に、「もしかしたらダニエルたちは、プロレスというものを理解してるんじゃないか?」と。それが、まだうまくフィットできてないだけで。プロレスのリングでプロレスにとらわれることなく、柔術にもとらわれることなく、本当のフリーファイトってモノを理解すれば、必ず恐ろしい存在になると思いますね。
——それを引き出すという考えは?
中邑 ん〜。それは意図してやるものでなくて、試合にいかに自分を投影するかとか、試合に入り込むことで生まれてくるモノですから。
——あくまでも、結果的に見えてくる部分というか。
中邑 この試合に関しては、いい試合という評価も見る人によって違ってくるし。ダニエルであったり、自分であったり、いままでの経験だったり、バックボーンだったりを感じれば感じるほど、非常におもしろいというか。時代が変化してるのを表すことになるんじゃないかな、と。ボクが第三者的に冷静に見れば、「とんでもない世界になってきたな?」と思いますね。
——たしかに、「ありえない」ことが起こってますよね。
中邑 というよりも、自分の中の“グレイシー”というイメージ。柔術家で、総合格闘家で、って無意識にトレースされてきたモノが壊されるんじゃないか? って。その現場の矢面に自分がいる。しかも相手がダニエル・グレイシー。もの凄く運命的なものを感じますね。
——11年越しの因縁があるわけですからね。
中邑 ええ。自分の総合デビュー戦の相手であり、グレイシー一族の誇りを持ってる存在であり。それを、彼のあの場所にある道場で、彼を慕ってるみんながいて、という状況をメディアじゃなく、生で見たってのは、非常に有益だと思います。いや、ガッチリきました。
——ホイスやヒクソンがUFCやさまざまな総合格闘技のリングに上がったのも、彼らにとってチャレンジだったというか。
中邑 チャレンジというより、証明でしょうね。
——今度はプロレスで、グレイシーの何かを証明するとも考えられるわけで…。
中邑 そうでしょうね。プロレスにおいてはダニエルやホーレスがパイオニアになるんじゃないかと思いますね、彼がもしプロレスを続けるならば、ですけど。その現場に立ち会えるってことで理解してるのは、プロレス界においてボクだけでしょうけど。まぁ、独りでたぎってるというか(苦笑)。
——ダニエルの道場を訪問して、たぎる度合いはアップしましたか?
中邑 フフフ。「勃起してる」って書いといて下さい(ニヤリ)。なんたって、あのグレイシーがプロレスをやりたいって言ってんだから。ボクにとって、「もの凄く夢があるな」と思いますね。世の中の杓子定規のものなんかじゃないもので、プロレスをやっててよかったなと思います。ま、とにかく横浜アリーナが楽しみですよ。
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