11月17日(火)、東京・後楽園ホールで開催されたDDT『#大家帝国主催興行〜マッスルメイツの2015〜』に、棚橋弘至と小松洋平が参戦した。
今回の参戦の発端は、8月23日のDDT『両国ピーターパン2015〜DDTより愛をこめて〜』両国国技館大会。棚橋が“DDTのエース”HARASHIMAとの試合後に残したコメント(「俺は珍しく怒ってるよ。グラウンドで競おうとか、打撃で競おうとか、技で競おうとか。ナメたらダメでしょ。これは悪い傾向にあるけど、全団体を横一列で見てもらったら困るんだよ!(※机をドンと叩く)。 ロープへの振りかた、受け身、クラッチの細かいところにいたるまで、違うんだから」)が波紋を起こしたのがきっかけとなった。
その後、10月7日に後楽園で行なわれたDDT『ドラマティック総選挙2015結果発表大会』で、ユニット部門1位となった#大家帝国が自主興行『マッスル』の開催を宣言し、「今年一番、DDTでモヤモヤしたことを解決したい」として、DDTに同大会への棚橋のブッキングを要求。HARASHIMAも涙ながらに棚橋との再戦を熱望。その後、正式にDDTサイドから新日本へオファーを出した結果、棚橋&小松vsHARASHIMA&大家健の一戦が実現することに。
今大会のメインにマッチメイクされたこの一戦。先に入場した大家とHARASHIMAには、大歓声が送られると共に大量の紙テープがリングに投げ込まれる。続いて登場した棚橋&小松には場内から大ブーイングが巻き起こった。
場内が大「DDT」コールに包まれる異様な雰囲気の中、小松がゴング前にHARASHIMAに殴りかかって開戦。棚橋は大家を場外に連れ出すと、リング上ではHARASHIMAが小松にカカト落とし、さらにストンピング。そして張り手からストマックバスター、ストンピングと一気呵成に攻め立て、場内は大HARASHIMAコールが巻き起こる。
続いて大家が登場すると、小松は棚橋にスイッチ。場内は棚橋に大ブーイングが飛ぶも、新日本のエースはそれを煽るようにポーズ。そして、棚橋は大家の張り手を受け流すと、お返しの強烈な張り手一発でダウンを奪う。続いて小松
も大家の左足に狙いを定めると、エルボーからレッグロック。そして新日本組は二人がかりで大家を攻め込んでいく。
グロッキー状態の大家に対し、棚橋はエアギターポーズを披露して観客を挑発。さらに棚橋は急角度の逆エビ固めで大家の身体をのけぞらせる。すかさず小松もHARASHIMAにエルボーを叩きこみアシスト。だが、大家はなんとかロープエスケープ。
依然として、新日組が優勢のままで試合は進行。小松は大家の左足を攻め込むと、不敵な笑みを浮かべる。しかし、続いてブレーンバスターの体勢に入るも、大家は意地を見せるように投げ返す。そして、HARASHIMAにタッチしようとするも、すかさず棚橋が阻止。
さらに棚橋は大家に串刺しボディアタックを放つが、これはかわされてしまう。大家は渾身の力で棚橋を担ぎあげるとカミカゼ。続いて登場したHARASHIMAは、棚橋にミドルキックを連発してダウンを奪う。そして串刺しキックを叩きこむと、雪崩式ブレーンバスターを狙うが、棚橋もこれをこらえて、両者はコーナー上での激しいエルボー合戦へ。
これに競り勝った棚橋はHARASHIMAを前方に投げ捨てるも、続く攻撃は大家が棚橋の足しにしがみついて阻止。このスキに、HARASHIMAは棚橋に雪崩式ブレーンバスター敢行。さらにHARASHIMAはブレーンバスターの体勢に入るが、棚橋はツイスト&シャウトで切り返す。
棚橋vsHARASHIMAは雄叫びを上げながらエルボー合戦へ。ラチがあかないと見た棚橋は張り手を叩きこんでからロープに飛ぶも、待っていたのはHARASHIMAのジャンピングキック。続いて大家が棚橋に突進するが、カウンターの低空ドロップで容赦なく迎撃した棚橋は、ドラゴンスクリューからテキサスクローバーホールド。これは大家が必死の形相でロープエスケープ。
棚橋とスイッチした小松は、大家に串刺しエルボーからハーフハッチスープレックス。そして、棚橋が羽交い締めにした大家目掛けてウルトラタイガードロップを放つが、これは寸前で誤爆。だが、躍動する小松はHARASHIMAにエルボーからファルコンアロー爆発。
さらに小松はHARASHIMAのバックを取るが、切り返したHARASHIMAは鋭いハイキック。そして、蒼魔刀を仕掛けるが、なんと小松は回転して逆エビに捕らえると、場内からどよめきが発生。さらにSTFへと移行するが、ここが大家がヘッドバットでカット。
ここを勝負どころと見た新日本組は、大家にダブル攻撃を狙うが、大家は二人まとめてスピアー! 続けて棚橋にも豪快なスピアーを決め、HARASHIMAに託すように場外戦へ。HARASHIMAは小松にエルボーからリバースフランケンシュタイナーを決め、最後は強烈な蒼魔刀を小松に叩きこんで3カウントを奪取。DDT組が新日本組に劇的な逆転勝利を収めた。
■DDT「#大家帝国主催興行〜マッスルメイツの2015〜」
11月17日(火)東京・後楽園ホール 観衆:1,800人(超満員札止め)
【メインイベント スペシャルタッグマッチ 30分1本勝負】
○HARASHIMA&大家健(17分36秒 蒼魔刀→体固め)棚橋弘至&小松洋平×
試合後、棚橋はHARASHIMAとにらみ合うも、すぐに踵を返してリングを降り、小松に肩を貸して退場。その後ろ姿に、場内からは大きな拍手が送られた。しかし、棚橋は進路を変えて放送席に移動すると、マッスル坂井を手招きし、何やら指示を送る。
そして、棚橋は唐突に「試合が終わった直後ですが、プレゼンテーションを始めたいと思います!」と宣言。この予期せぬ事態に棚橋コールが巻き起こる中、棚橋は「お題はこちら、プロレス界を盛り上げる方法!」と、場内のスクリーンを使って、まさかの“終わりパワポ”を開始。
まず、「棚橋弘至とは何か?」を説明すると、さらに自身の強みとして、「新日本道場で鍛え抜いた肉体」「ハイフライフロー」を挙げる棚橋。そして今回の煽りパワポがスーパー・ササダンゴマシン(マッスル坂井)からの依頼であることを明かすと、「新日本とDDTは8月の僕の発言をきっかけに、極度の緊張関係にあります。なので、これは無理でしたが、おたがいに所属している松竹芸能(坂井)とマセキ芸能(棚橋)は友好的な関係にありますので、べつの仕事と勘違いして受けてしまいました」と、その経緯を説明。
続いて、いよいよ本題の「プロレス界をもっと盛り上げる方法」へ。まず、自分がファン時代に盛り上がった試合として、95年の10.9東京ドームで行なわれた新日本vsUWFインターナショナルのメインイベント、武藤vs高田を挙げた棚橋。そして、今年8月の自身とHARASHIMAの一戦も団体の威信を賭けたエース対決ながら、あのときの武藤vs高田で感じた興奮と熱狂を上回ることができなかったと述懐。そして、「その悔しさから、試合後のコメントで感情をぶちまけてしまいました。それはHARASHIMAさんに向けた言葉ではなく、俺の一人よがりでした。HARASHIMAさん……、ゴメン」と、素直に謝罪。
さらに「なんでこういう発言が出たか。それはもっともっとプロレス界全体を盛り上げたい!」と語ると、“棚橋、来年の計画”として、「①16年1月、IWGPヘビー級を奪取! ②8月、『G1』二連覇達成! ③9月にDDT総選挙に出馬! ④16年11月、ユニット主催興行開催!」の4つの公約を発表し、場内のどよめきを誘う。
試合中のブーイングとは打って変わり、「棚橋最高!」コールに包まれる場内。
最後に棚橋は「長くなりましたが、本日のまとめ! 今日ここにいるすべてのファンのみなさん、愛してま〜す!」とシャウトし、HARASHIMAと大家と拳を突つきあわせて退場した。
棚橋が退場した後、リング上ではHARASHIMAが「とりあえず、いまの気持ち、混乱してます。まず言いたいことは、こういう場を作ってくれたディーノ、大家くん、本当にありがとう。許可を出してくれた新日本プロレス棚橋選手、小松選手、ホントにありがとうございます。混乱はしてますけど、棚橋選手、大丈夫なのかな?(笑)。でも、みんながいま笑顔でいる、こういう空間がプロレスから生まれたんだから、いいんじゃないかと思います」とマイク。
大家は「坂井! 俺はオマエに対して悔しい気持ちでいっぱいだよ! でも、悔しかった気持ちって言うのはみんな一緒だ! うれしかった気持ちも一緒だ! そうだよね!? 」とコメント。
HARASHIMAは「プロレスの試合はいろんなことがあります。今日の帰り、あの試合観てよかったなと思える試合を、これからもしていきたいと思います。こうやって、試合をしていけばいまのプロレス人気がもっともっと上がって、メジャースポーツ、そういうとてつもなく凄い存在にプロレスがまたなると思います。僕はみんなが笑顔になれるプロレスをこれからもしていきたいです」とマイク。
最後は「プロレスヤッテヤルサー! 次のマッスルも2030年もちゃっかり出てやるさー! なんでかって、それは鍛えてるからだー!」と締めくくった。
■棚橋弘至のコメント
棚橋「あのね、HARASHIMA選手が……HARASHIMAさんがでいっか。HARASHIMAさんが8月からモヤモヤしていたように、俺もモヤモヤしてましたよ。今日、ここにね。机がなくてよかったすよ、机がなくてね(苦笑)。ただ……そうなんすよ。団体の対抗戦という今日ね、シチュエーションができて。くやしいけど、ファンのボルテージ。DDTのファンの皆さんの……。新日本のファンのね、皆さんには、ホントくやしい思いをさせたけど、また頑張ることでシッカリとお返ししていきますから。ハイ。今日はホントに……なんだろ、次に向けていいスタートというか。……これ以上はもう聞かないで! あんまり言うと、超デッカイブーメランになって返ってくるから(苦笑)」
——パートナーの小松選手に関しては?
棚橋「ああ、ホントに。意思の疎通というか。新日本プロレスのヤングライオンは末恐ろしいですと。ホントにね、小松は……俺以上の“スター”になるから。そんときはまたDDTに、呼んであげてくださいよ。ね? それが……ああ、俺はもうホント、小松をスターにしますから。ね? 今日はありがとうございました。ね、……そうなんすよね。DDTの選手はDDTのファンをみんな笑顔にしているっていうね。この事実。ホント動かせないけど、俺は新日本プロレスのエースとして、絶対、自分が正しいという姿勢は、最後、貫いて行くってことだけは、ここで言っておきます。ありがとうございました!」
※小松はノーコメント
撮影/山本正二