4月某日、NHKの大河ドラマ『おんな城主 直虎』(毎週日曜・総合20時~ほか放送中)に出演する真壁刀義選手が、オンエアを目前にしてマスコミの合同取材に応じた。
真壁選手が演じる“力也”は、荒くれ者が集まる盗賊団“龍雲党(りゅううんとう)”の一員で、頭(かしら)である龍雲丸(演:柳楽優弥)を支える主要メンバーの1人。ワイルドな風貌とタフな強さが、リング上とピッタリ当てはまっている。
『直虎』特製のスタッフジャンパーに身を包んで現れた真壁選手は、大河ドラマという大舞台で本格的な演技に初挑戦する意気込みや苦労、撮影秘話などを約1時間に渡って熱弁。
主役の“おんな城主”井伊直虎(いいなおとら)を演じている柴咲コウさんと初対面したときは、演技に対する真剣な姿勢に刺激を受け、「本腰を入れて頑張らなきゃいけない」と決心したという。また、自分の衣装が草履だったため、冬山のロケではあまりの寒さでギブアップ寸前になったと回想していた。
さらには、「カウボーイの殴り合いで“先に倒れたほうが負け”」というプロレス論まで飛び出すほど、トークが絶好調だった真壁選手。取材後もすぐにスタジオへ直行し、やる気満々で残りの収録へ臨んだ。
真壁選手の登場は5月下旬頃(決定し次第、告知予定)を予定! どうぞご期待下さい!
■質疑応答
――最初に出演オファーを受けた率直な感想は?
真壁 「え!? 何言ってんの!?」って感じ(笑)。「いやいや、俺に(オファーが)あるわけないだろう」って。ビックリしました、ホントに。最高の栄誉だと思ったけど、(マネージャーに)「最高だね!」と言ってから1~2分経ったあとにプレッシャーですよ。「この大舞台を用意してくれた方たちに、恥をかかすわけにはいかない」と思いました。とにかくね、ビビりましたよ、最初。「ウソでしょ!? 大河って、あの大河だよ」って話で(笑)。
――大河ドラマのイメージは?
真壁 一流のアクターしか集まってないわけですよ。その中で、プロレスラーですよ!? スイーツ真壁ですよ!? 「演出の方たちは正気なのか!?」っていう感じで(笑)。ありがたいです。感謝ですよね。それと同時に僕はプロレスラーなので、演じるということに関してまったく無なんですよ。無の状態で「いかに与えられたステージで自分を見せようかな?」って凄く考えたんですよね。助けてくれる仲間もいて、自分なりにいろいろ演技の勉強とかもさせてもらいましたけど。オファーから撮影(開始)までがあっという間でしたので、準備をすることができない。「じゃあ、どうしようかな?」って(考えて)。たとえば、言葉中心に動くのではなくて、身振り手振り中心に動くってことを学びましたね。それが僕らしくもあり、「間違いなくこれなんだ」と思いました。あとは「どうして俺がここに呼ばれたのか?」と考えて。「ああ、だったら“真壁刀義”だな。“スイーツ真壁の部分もありながらの真壁刀義”で勝負すればいいんだな」と思ったので。「それを純粋に出すしかない」と思いました。
――撮影初日はどんな様子でしたか?
真壁 周りのことばかりチラチラ見てましたね。「オ~、ヤベェ! 大御所来たぞ、大御所!」とか言って。龍雲党の頭が柳楽君じゃないですか? 「映画、見たことあるよ」って心の中で思いましたね。あと、(漫才コンビ)まえだまえだのお兄ちゃん(前田航基)ですよね。「なんだ!? お兄ちゃん、よくしゃべるな!?」とか思いながら(笑)。でも、(前田君は)子役からのキャリアがあるので。僕は今年でプロレスラー20年なんですけど、芸能の仕事をやらせてもらってからまだ1~2年なんですよ。だから、まえだまえだのお兄ちゃんからしてみたら、逆に僕が小僧なんで。勉強することがいっぱいありました。それと、「この所作はどうやってやればいいのかな?」というのを、エキストラの方たちを見てずっと勉強してましたね。
――龍雲党のメンバーは撮影以外でも凄く仲がいいそうですね。プライベートでの付き合いもあるのですか?
真壁 僕自身は試合もやるので、なかなか時間が取れず、まだみんなで集まったことはないんです。ただ、昨日LINEで回って来たのが、「みんなで飲みに行こうか?」みたいな話になっていて。ストーリー上で話せないこともあるんですけど、僕らが“クライマックスに上がるとき”に“いままでと違う感じ”になったんですよ。凄く抽象的になってしまうんですけど、それまではその場で会った“いち共演者”“いちグループの仲間たち”という括りが、あたかも“何年か一緒に仕事をやっていた仲間”のように、グッと距離が縮まったんですね。龍雲党というのは、凄くポップで明るい雰囲気なのに、そのときばかりは凄く重々しい感じになって。監督に「龍雲党はそうじゃなくてポップな感じだから」と言われて初めて気づいたぐらい(笑)。それほど仲間を思う気持ちがクッと入ったんです。僕らはドラマで人の心を動かすじゃないですか? それをやっている人間たちの心がまず動いたんですね。その意識が(自分自身に)あった瞬間、「この人たちと集まって仕事をやらせてもらってよかったな」と思いました。
――柳楽さんの印象は?
真壁 役柄では、実力もあり、頭が切れ、そつなく、人間味に厚いというのが、凄く出ているんですよ。かといって、プライベートな柳楽君というのは、ちょっとホワンとしてるんですね。そこが凄くソフトな感じで。しかも、挨拶とか一般人として当たり前のことが当たり前にできる。だから、(初対面のあと)「今日はどうもお疲れ様でした!」って(自分が)車に乗った瞬間、「オイ! 柳楽君、カッコいいな。あいつ、いいヤツだな!」って(マネージャーに話して)。そこから(交流が)始まったんですよ。「やっぱり頭(役)にはもってこいなんだな」って思いますね。“見た目が男前”ってよく言う話で、“中身が男前”なんです。そこに凄く惹かれました。劇中で頭と殿…姫(直虎)ですよね。(2人が)つかず離れずみたいな感じになるんだけど、「もう言っちゃえよ!」と思うんです(笑)。高校生のときみたいに「付き合っちゃえよ!」って。というぐらい、(物語の中に)気持ちが入るんですよ。それが(自分で)面白かった。
――プライベートでも仲間意識が?
真壁 そう、信頼感が凄くあります。たかだかここ何ヶ月、一緒にいるだけなんですよ!? でも、気持ちが凄く近づいたんですね。龍雲党の連中は、エキストラも含めてみんなそうです。で、スタッフさんもみ~んな一生懸命なんですよ。いい意味で怒鳴り合うし。それだけみんな熱い。僕らプロレスの世界でもそうなんですけど、やっぱりいいモノを作りあげたいんですよね。だからこそ気持ちがぶつかり合う。それを感じたので、「ああ、これは間違いなくいいドラマだな」と思ったんです。それで、龍雲党っていうグループが本編のストーリーにいいスパイスを与えていると感じたので、「俺たちはホントに死ぬ気で頑張らなきゃダメだな」と思いましたね。
――感情移入してしまうというのは、大河ドラマならではの感覚ですか?
真壁 “人対人”なんですよね。僕がいままでドラマとかに出させていただいたのは、“真壁刀義役”なんですよ。プロレスラーのイカついヤツが「オオ! テメェよ!」って言う役。だから、気持ちが入る・入らないというよりも“それ”を演じていただけなんです。素で見せていただけ。でも、この力也というのは、真壁刀義でもないし、スイーツ真壁でもないので。粗暴な感じだけど、一致団結している仲間の1人。「頭を男にしなきゃいけねぇ」って、その気持ちをみんな持ってる。それが発しなくても(自然と)出るんですね。
――真壁選手が芸能活動を始めたきっかけは、プロレスを広めるためですか?
真壁 「プロレスを見て何かを感じてもらえたら」と思ったんですね。みんな毎日苦しいことがいっぱいあるじゃないですか? だから、プロレスを見て勇気づいて、「よーし、あいつがあれだけやってるなら俺も頑張ろう」と思ってくれればそれでいいと思って。あとは、僕自身の可能性ですよね。「真壁刀義がバラエティー(番組)で笑いを取れるのか!?」「ドラマでどれだけ人の感情を揺さぶることができるか!?」というのが、僕の狙いでもあり、新しい挑戦でもあります。僕、こう見えて、新日本プロレスのタイトル、全部獲ってるんですよ。もう1回言っておきますよ!? タイトルみんな獲ってるんですよ。IWGP(ヘビー)のベルトを持ったり、『G1 CLIMAX』を獲ったりしてるんです。もう1回だけ言いましょうか!?(報道陣爆笑) まあ、そういうことなので、プロレス界でもまだ(次の目標を)目指すことはできます。ただそれ以上に、もっとプロレスのカテゴリを広めることと、真壁刀義自身の名前を広めるのは「何かな?」と(考えて)。やっぱりこの芸能の仕事。一番メディアに出て(世間に)訴えることができるじゃないですか。だから、こういう仕事をやらせてもらったんです。それが僕の根本ですね。
――この大河ドラマ出演で、より幅広い人に届くかもしれません。
真壁 そうですね。「真壁、凄いね。面白いね! じゃあプロレス見に行こうか」って、プロレスの扉を開いた瞬間、「(オカダ・)カズチカ、カッコいいね!」とか「柴田(勝頼)カッコいいね!」とか。「いや、俺じゃねぇの!?」って(笑)。でも、それでいいんです。プロレスは十人十色でいろいろ面白いレスラーがいるので、僕を入口にしてプロレスを見てもらえばいい。だって、真壁刀義が有名なのは誰でも知ってるじゃないですか? もう1回だけ言いますよ!? 知ってるじゃないですか!? もういいね(笑)。このあいだ、カジ(吉田健悟)が試合を見に来たんですよ。だから、主演の柴咲コウさん、それから柳楽君も、みんな含めて試合を見に来てもらおうと思ってるんですよ。まえだまえだのお兄ちゃんやモグさん(モグラ役のマキタスポーツ)もプロレスが好きだしね。そうやって役者さんたちがプロレスを見てくれて、「面白いね」って言ってくれればいいと思ってるんで。そうすれば、会場にいるプロレスファンも「柳楽君カッコいい!」「柴咲コウじゃん!」と言って。「オイ、それ誰のおかげだと思ってんだよ!? ま、俺なんだけどね!」って。ただそれをやりたいだけなんだけど(笑)。「じゃあ、(真壁は)ドラマだけなのか?」というと、そうじゃないんですよ。これをプロレスに還元することができるんです。なぜかというと言葉。言葉の発し方、言葉のチョイス、これが物凄く見ている人に響くんですね。まさかの“大河風の言い方”(笑)。時代は違うけど(プロレスにも)使えると思うので。その部分でいい刺激を与え合うことができればいいですね。
――今回の撮影は本業を休んで臨むこともありましたが、プロレスファンにメッセージはありますか?
真壁 さっきも言ったように(ドラマを見る)入口はこの真壁刀義でいいと思うんです。ただ、真壁刀義が絡む人間、その人間たちを見たら、ますます役者さんたちの魅力が伝わると思う。僕はフィルターであればいいわけです。「プロレスを見てよかったな」「真壁を通して大河ドラマを見てよかったな」と(思ってくれれば)。
――お互いの相乗効果になればいいということですね。
真壁 だから、僕自身が凄く刺激を受けましたね。「アクターとしてこの場に立ったときに何をどう演じたらいいのかな!?」って、凄く考えて。だって、あの人たち、見ている側を沈黙でうならせるんだよ!? 俺、ずっとしゃべってるから(笑)。ガマンできないもん。沈黙が嫌いだから。(役者は)凄いよね! このあいだも、コウちゃん…あ、柴咲コウちゃんね(笑)。柴咲さんがすぐそばで演技をしているのをモニターで見ていたんだけど、ニコッとする顔に嫌味がないのよ。「ああ、『こういう顔しろ』って言われたら俺できないもんな」と思って。顔が絶対にひきつる。「ああ、この人は美しいなー」って思って。“気持ちよくなれる笑顔”っていうの? それを凄く感じましたね。
――ご自分の演技に及第点は出せそうですか?
真壁 そうだね~。俺自身はホントに難しいよね~。「50点いけばいいほうだな」と思ってる。まあ、周りは「100点」って言うけど…。ハハハ! ウソウソ! まだまだ勉強だと思う。いまは(演技で)「いや~、ちょっと焦ったな」とか、そういうのが凄く出てしまうから。だってさ、(周りの役者は)みんな普通に目を見て心に響くこと(セリフ)を言うんだよ!? こっちはあたふたするよね。それがちょっとまだダメ(照笑)。やっぱり一流の人に囲まれたら、刺激されることも物凄いものがあるから。ホントの一流の人になるべく修行と経験をさせてもらっています。
――まだ収録が残っているということですが、これから自分で足りないと思う部分を演技で出せそうですか?
真壁 そうですね。今日もこれからまた(収録が)夜中まであるから。爆発させたいと思うよね(※と言って“エア”ソファーに寄り掛かったポーズを取る)。
――お気に入りのシーンはどこですか?
真壁 僕が仲良くしていたまえだまえだのお兄ちゃんが、弓でやられちゃうんだよね。その瞬間にガーッ!って怒りが湧き上がってきて、「コノヤロー!!」と言って敵とやり合うんだけど。そのシーンが、まあ~難しくて。でも、ゴクウが弓で撃たれた瞬間、いままでにないような感情が溢れてきて。あれ、弓で撃たれてないんだよ、本当は!? わかってる!?(笑) でも、倒れてるからさ。ホントに(ゴクウが)撃たれてる感情になって。「コノヤロー!!」って怒りが湧いてくるんだよね。このとき、第三者の自分として考えたら、「あ、これがこの力也を任された部分なんだな」と思って。“カーッときて暴れ回る”という。それが自分の中で印象に残っているシーンですね。だから、そういう感情が入らざるを得ないというのは、ホントに(龍雲党の)仲間意識なんじゃないですかね。
――演技もできてトークも面白い真壁選手ですが、普段はどこから刺激を受けているんですか?
真壁 そもそも映画とドラマが大好きなんです。僕はいま、冗談抜きでオフがないくらい忙しいんですよ。もう1回だけ言いますよ!? オフがないぐらい忙しいんですよ。ホントに(笑)。でも、いまから十数年前の僕自身はレスラーとしての価値もなかったし、ホントに忙しくなかったんです。だから、僕の仕事は何かと言ったら、プロレスラーとしてリングの上で闘うことと、練習をすることなんですよ。だけど、試合がないオフの時期にはホントに何もなくて。もちろん練習はするんですけど、その合間に何をするか!? そのときによく見ていたのが映画なんです。ホントにいろんなジャンルの映画をよく見ていました。僕は本物の役者さんよりは(演技が)うまくないです。だけど、異業種の人間が「ドラマをやってみろ」って言われた中では、うまいほうだと思うんですよ。それぐらい自分の中で自信はあるんです。自信はね(笑)。勉強といえば、演技指導の先生とかに表現の仕方を学んだことぐらいで。あとはもうホントに、映画とかドラマを食い入るようにずっと見ていたんで。「それが根本にあるかな」と思いますね。
――改めて、ドラマのどういうところを見てもらいたいと思いますか?
真壁 いま日本にどのくらいのプロレスファンがいるかわからないけど、その人たちに「プロレスラー真壁刀義が出てるんだよ」、そして「その『直虎』がどれだけ面白い作品か?」というのを見てもらいたいですね。“いちスパイス”として真壁刀義と龍雲党を見てもらいたいんですけど、『直虎』はそれ以外のストーリーが面白いから。『直虎』を最初から最後まで見てもらって、ぜひ何か感じてもらいたいですね。
★番組情報
番組名:NHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』
放送日:毎週日曜・20時~ほか
放送局:NHK総合
●「力也」紹介
龍雲丸率いる盗賊団“龍雲党”の一員。木を伐る技術を持っているが、訳あってふるさとの村にいられなくなったらしい。見た目通りタフな力自慢で、「力也」と呼ばれている。
●物語
戦国時代に男の名で家督を継いだ「おんな城主」がいた――。
遠江(静岡県西部)井伊家の当主・井伊直虎である。
戦のたびに当主を殺され、ただひとり残された姫が、「直虎」と勇ましい名を名乗って乱世に立ち向かった。
自ら運命を切り開き、戦極を生き抜いた女の激動の生涯を描く。
★NHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』のホームページはコチラから!