4月6日両国国技館大会で、突如として、IWGPヘビー級王者のオカダ・カズチカを急襲し、新日本プロレスに参戦表明!! 5月3日『レスリングどんたく』でいきなりオカダの王座に挑戦する、“元TNA世界ヘビー級王者”AJスタイルズ。このAJに関して、かつて対戦経験もある棚橋弘至に緊急インタビュー。
■AJスタイルズが、「いまのアメリカマットのトップ中のトップ」っていうのは間違いない
——本日、棚橋さんに聞きたいのは、4.6両国大会に乱入したAJスタイルズについてなんですが。
棚橋 お、今日はAJの話ですか?
——ハイ。おそらく、棚橋さんが新日本の中で、AJスタイルズを一番ご存知かなと。まず、棚橋さんの中で「新日本マットにAJが来た」という事実はどう捉えてます?
棚橋 そうですね。AJはTNA(アメリカで、WWEに次ぐメジャープロレス団体)でずっとトップを張ってきて、で、いまTNAを辞めてもいろんな団体からAJが来れば客が入るっていう存在じゃないですか。
——アメリカ各地の団体にとっては、救世主のような選手というか。
棚橋 アメリカのレスリングファンからも、もの凄く評価の高い人ですよね。僕が2006年に最初にTNAに行った時も、すでにトップスターでしたし。2008年に行ったときも、ボクはアンダーカードでやってたけど、彼は常にトップ選手の中心にいましたから。
——その頃の印象は、どんな感じですか?
棚橋 TNAって “トータル・ノンストップ・アクション”の略なんですよね。まぁ、AJスタイルズってのは、ホントにその団体名を一人で表しているような選手ですね。スピード感、躍動感だったりがズバ抜けてますから。
——まさに一人TNA状態みたいな。
棚橋 ウン。TNAを体現してましたよね。彼のジャンプ力だったり、あとは非常にオリジナルな技が多い。独自の一個一個のムーブ……アレは、彼の身体能力がないと出来ない動きなんですけど。
——どの技をとっても独創的というか
棚橋 大型の選手にも、軽々とスタイルズクラッシュ(AJの必殺技)を決めるから、パワーもある。体格的にはそんな大きい選手ではないですけど(180cm、98kg)。いまのアメリカマットのトップ中のトップっていうのは間違いないです。
——棚橋選手は日本でもTNAとの対抗戦でシングルマッチをやってます(2008年2月17日、両国国技館)けども、実際闘った時の印象は?
棚橋 なんかね、試合やってて……興奮しましたね(ニヤリ)。
——というのは?
棚橋 なんか彼の動きとボクの動きが、想像以上に噛み合ってね。ホントにパズルがドンドンドンドン、ハマっていくような心地いい印象だったんです。
——事前には、そこまで噛みあうとは思ってなかった?
棚橋 ええ。予想は出来なかったけど。当時はボクも黒いコスチュームでね。しかもキャラ的に割とチャラけてたんで、反則もしてましたし。お互いなんか“同じ香り”がするというか。どちらもヤンチャっぽい感じの空気感は出てましたので。
——どこか合わせ鏡のような相手というか。
棚橋 ウン。正直、シンクロしましたね。「これは、シンクロ度高いな!」っていう気分はありました。その当時のAJって、いまのファンの感覚と一緒だと思うんですよ。
——というのは?
棚橋 彼は、アメリカでは非常に有名だけど、日本では、その魅力がもう一つ伝わってなかった。ただ、ボクは、あの1試合で「AJっていうのはこんな技を使う、こんないい選手なんだ」というのをシッカリ伝えてしまったわけです。
——AJのプロモーションに一役買ってしまったと(笑)。
棚橋 ハイ。その一試合で惹きつけてね。ファンが「あ、コイツ、スゲー選手だな」と認めたからこそ、試合後のボクのマイクで「オイ、天才! またやろうな?」って言ったとき、「ワーッ!」と反応したと思うんですよ。ファンが「アイツ、天才かも」と思ってなかったら、マイクも響かないわけじゃないですか。
——試合だけでなく、マイクでもシッカリとプレゼンしてしまったと。
棚橋 しかも当時、ボクが何をマイクで言っても、ウンともスンとも言わない時期だったんで…(苦笑)。ボク自身、そのときAJへのマイクが沸いたから、凄く覚えてるんですよ。「おー、俺のマイクが響いた!」と(笑)。
■「オリジナリティ=高い、身体能力=高い」カテゴリー的には飯伏クンや丸藤選手に近い選手
——AJをタイプ的に言うと、「日本人で言うとこの選手に近い」っていうのはあったりしますか?
棚橋 う〜ん。軽快ですけど、パワー系の技もあるんですよ。で、オリジナル系の技が多い。カテゴリーで分けると飯伏(幸太)クンとか丸藤(正道)選手。ワク的には、そっち系の感じじゃないでしょうか。
——ああ、それはなんとなくわかりますね。
棚橋 プロレスラーを「技の身体能力が高い←→低い」「技のオリジナリティ高い←→低い」ってゲージで図表化したら、ボクはこの下〜のほうに入るんです。「オリジナリティ=低い、身体能力=低い」ていう(苦笑)。
——ワハハ! 自分で言いますか。
棚橋 だから、常に「天才じゃない」って言ってるんです。そこは“逸材”っていうキーワードで切り返しましたけど(笑)。ともかく! AJは「オリジナリティ=高い、身体能力=高い」カテゴリーの選手。そう見たらわかりやすいんじゃないかな。
——飯伏選手や丸藤選手のカテゴリー、そのアメリカ版と言われると、イメージが沸きやすいですね。一個一個の技にもクセがあるし。
棚橋 あくまで、「ザックリ言うと」ですけどね。ただ、いまってアメリカでも「身体はそれほど大きくなくても、十分トップ張れるんだよ」っていう選手がいっぱいいるじゃないですか。「YES! YES!」ってやってる選手とか(笑)。
——WWEのブライアン・ダニエルソン(178cm、95kgながら、現・WWE統一ヘビー級王者)を筆頭に。でも、そのAJが「新日本に本格参戦する」と。これは、どうとらえてますか?
棚橋 前回来た時からは、大分間が空いてますけども。ただ、「新日本が、あのAJのアンテナに引っかかる団体になってきたんだな」っていう手ごたえはありますね。
——TNAを辞めた後、どこを選ぶのかは注目されましたから。
棚橋 ぶっちゃけ、アメリカでは引く手あまたなわけじゃないですか? まぁ、引く手あまた過ぎて、今回シリーズ参戦できてないですけど(苦笑)。
——そこに苛立ちを表明してる選手もいますけど。棚橋さんの中でライバルとまでは、まだいかない?
棚橋 ライバルっていうにはまだ全然、絡みが足りないですよね。要所要所で試合はしましたけど。
——ただアレですよね、棚橋さんにとっても、新日本プロレスにとっても、“予想外の伏線”がありまして……。
棚橋 あ、そうなんですよ!
——ホントに神がかり的なことでしたけど。
棚橋 去年の8月から、彼の必殺技である、“スタイルズクラッシュ”をこっそり使い始めてね……。ま。ホントはこっそりじゃないんですけど。『G1 CLIMAX』で堂々と使ってましたから(笑)。
——日本プロレス界で、バツグンの知名度を誇るリーグ戦で(笑)。あれを使い始めたのは、何かのひらめきですか?
棚橋 ……完全にひらめきですね。しかもハッキリ言って、見よう見まねです!(キッパリ)。
——ワハハ! とくにビデオで研究した成果とかでなく。
棚橋 ハイ。「たしか、こんな感じかな……」と(笑)。
——あてずっぽうで、拝借しましたか(笑)。
棚橋 だからAJに「棚橋のスタイルズクラッシュはヘタクソだ」と言われるんですよ。たしかに、改めて見たら、技の入り方も違うんですよね。AJは、入るときに足を持ってて。まがいもの感が激しいぞと。
——「もう使わせない」と言ってました。そのせいか、オカダ選手との試合も楽しみですが、「棚橋さんとの試合が見たい」という意見も多いですね。
棚橋 へぇ〜、多いですか?
——オカダ戦は決まってますから別として。それ以外の選手では、ファンの期待度は非常に高いですね。
棚橋 なるほど。まぁ、いつかはAJと交わるかもしれないですね。現時点では全然見えてないですけどね。
■“IWGP王者”オカダと“元TNA世界王者”AJ、これは世界中のプロレスファン必見のカードです!!
——そして、今回のIWGPヘビー戦、オカダ・カズチカvsAJスタイルズという試合はどう見ますか?
棚橋 あの〜、さっきのカテゴリーで言うと、じつはオカダもこのAJの部類なんですよね。「身体能力=高い」「技のオリジナリティ=高い」。
——たしかにそうですね。
棚橋 だから、どうなるかは予測不可能ですけど……。ただね。ボクはオカダと何回も闘ってるからわかるんですけど。オカダって、まだ伸びてんすよね。しかもベーシックの部分。基本的な技術のレベルがグングン伸びている。そこは脅威です。
——なるほど。
棚橋 で、この前、AJがマイクで「コイツはTNAのときはヤングボーイだった」って言い方してるじゃないですか。コレね、AJが本当にその認識のまま、いまのオカダは試合やったら面喰いますよ。
——ナメてきたら、さすがのAJでもしっぺ返しを食らうかもしれないと。
棚橋 わかんないですけどね? AJの本音の部分が、どんな感じかわからないですけど……。「俺はアメリカのトップスターだ」って感じで、日本に来たら、きっと「オカダは自分に、物怖じするんじゃないか」と思うと思うんですよ。
——かつてのTNAのグリーンボーイは自分の前で足がすくむんじゃないかと。
棚橋 ただ、いまのオカダはね。プレッシャーだったり、ビッグネームにも動じない精神を持ってる。オカダに堂々と迎え撃ってこられたら、AJも面喰うんじゃないかっていう。おそらく実力的にはかなり拮抗してると思うんですけど。
——AJが凄い選手なのは間違いないが、格上意識丸出しで来たら、足元をすくわれるかもしれないと。
棚橋 危険ですよ。しかも会場の雰囲気って凄くレスラーの動きを左右する。ましてや今回は日本のマットじゃないですか。しかもオカダは福岡で2年連続でIWGP戦やってます。福岡のファンはやっぱり、オカダを推すと思うんですよ。
——会場の空気でも、オカダが有利と予想されますか。
棚橋 ただ、それは置いておいても、今回、AJvsオカダを福岡でやるっていうのは非常に奥ゆかしいですね。というのは、このカードって、正直、世界のレスリングファンが大注目するカードだと思うんですよ。TNAファンはもちろん、アメリカのプロレスファン全員が必見のカードですね。
——おそらく、今回は海外のネットPPVもけっこう売れるんじゃないかなと。AJスタイルズ効果で。
棚橋 ええ。新日本のトップに上り詰めた“IWGPヘビー級王者”オカダと、“元TNA世界ヘビー級王者”のAJの対戦。これはフレッシュだし、もの凄く魅力的なカードですよ。しかも『レスリングオブザーバー・アワード』(アメリカのファンが選出するプロレス大賞)だって、オカダは昨年のMVPレスラーで世界2位ですからね! ……あれ、1位は誰だったかな?(笑)。
■レスリングどんたく2014
5月3日(土)17:00 福岡・福岡国際センター
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『レスリングどんたく』5.3 福岡国際センター大会をスカパー! でPPV完全生中継!!
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