メインイベント(第8試合)では永田裕志が「LIDET UWFルール」で、GLEATのホープである伊藤貴則と対決。
主なLIDET UWFルールは以下のとおり。
●ギブアップ(タップアウト)、KO、レフェリーまたはドクターストップ、ポイントアウト(TKO)、セコンドのタオル投入、反則行為、試合放棄、ノーコンテスト。
●5ロストポイント制。競技者の持ち点は5点、時間切れの場合はポイント差で勝敗が決まる。
●ダウンとロープエスケープでロスト1点。試合再開はスタンドポジションから。
レスリングで輝かしい実績を持つ永田が、かつて学生時代に伝説の団体UWFに強い興味を抱いていたのは広く知られるところ。その後、永田は新日本でプロデビューすると、1995年から開戦したUWFインターナショナルとの対抗戦で若手ながら存在感を示した。それから時を越え、今回はLIDET UWFルールでの戦いに挑む。
対する伊藤はフルコンタクト空手をバックボーンに、WRESTLE-1が運営するプロレス総合学院を卒業したのち、2016年9月にWRESTLE-1でデビュー。その後、デビュー7カ月でWRESTLE-1タッグ王者となり、早くから頭角を現す。WRESTLE-1が活動を休止すると、20年8月にGLEATに入団を果たした。
伊藤は21年7月のGLEATの本格旗揚げ戦でのメインで、当時CHAOS所属だった新日本のSHOを迎撃。敗れるも打撃を軸に一進一退の攻防を繰り広げている。今回は百戦錬磨の永田を相手に、どのような戦いを繰り広げるのか?
永田はセコンドとして藤田晃生を帯同し入場。ゴング前、永田が握手の手を出すと、伊藤はそれを払いのける。
開始のゴング、永田は「来い、コラ!」と気合いを入れる。まずはローキックで互いに牽制すると、永田がフロントネックロックで捕らえ後方に放り投げる。
伊藤はすぐに立ち上がってバックに回るが、永田は腕を取って切り抜け、伊藤にロープを背負わせる。ここで両者は一旦離れる。
伊藤はローキックとボディブロー。すると永田は組み付き、グラウンドに持ち込んで膝十字固めへ。さらにアンクルホールドに移行するが、伊藤も負けじと足を取りに行く。すかさず永田はアキレス腱固めで応戦。伊藤はクロスヒールホールドを狙うが、永田が締め上げるとたまらずロープエスケープ。これで伊藤は残り4ポイント。
スタンドに戻り、伊藤は打撃のコンビネーション。そして鮮やかなフライングニールキックを決める。しかし、永田もフロントネックロックで捕らえ、さらに打撃を放つ。すると伊藤はコーナーに押し込み、膝蹴りの連発でダウンを奪う。永田も残り4ポイントに。
伊藤は左右のローキック。しかし、永田は組み付くと首投げでグラウンドに持ち込み、腕ひしぎ逆十字を狙う。伊藤は切り抜け、アキレス腱固めへ。しかし、永田は回避してスリーパー。そこから伊藤を仰向けの状態にし、挑発しながら張り手とボディパンチを浴びせる。続いて永田はアームロックを狙うも、伊藤は切り抜けてスタンドに戻す。
ここから両者は激しい張り手の応酬に。永田は思わず反則のエルボーを繰り出し、レフェリーに注意されてしまう。
両者は再び張り手の応酬。永田はかわすと一気にエクスプロイダーで放り投げて胴締めスリーパーで捕獲。すると伊藤はロープエスケープ。これで残り3ポイントに。
伊藤はローキックの連発から膝蹴り。さらにサイドスープレックス、ジャーマンとたたみかける。永田はダウンを取られ、残り3ポイント。さらに伊藤はローキックの連発からハイキックで、もう一度ダウンを奪う
。これで永田は残り2ポイントと逆転されてしまう。
優勢の伊藤はキックの波状攻撃。しかし、永田は切り抜けて一気にバックドロップで叩きつけ、残り2ポイントのイーブンに持ち込む。
ここから激しい張り手の応酬に。そして永田は組み付くと、うまく伊藤を崩してグラウンドに持ち込むが、伊藤は三角締めで捕獲。しかし、永田は耐え抜くと一気にナガタロックⅡへ。伊藤は必死に耐え抜くも、危険と見たレフェリーが試合をストップ。永田が粘る伊藤を仕留め、勝利をつかんだ。
永田「いやあ、効きましたね。30年以上前に、プロレスラーになる前にUWFというものに凄く憧れて、いろいろ自分なりに思い描いていたわけですけど、キャリア30年で…まあほぼほぼかな? UWFスタイルは初めてで、自分のドン臭さというかそういうものを感じてしまったというか(笑)。せっかくUWFスタイルというものを期待して呼んでいただいたんですけど、そういうものを期待した皆様には大変申し訳なく思っています。ただ、UWFの技術的なことで言えば、伊藤選手ですか? そういう技術的なことを忘れさせるようなビンタであり、まあ掌底って言わなきゃいけないんだろうけど、それが自分の中の闘志を湧き立たせてくれました。彼はそれに応戦して、より強烈な張り手っていうか…掌底って言っておきましょうか、それを打ってきてくれて。なんかUWFスタイルの技術とかを超越した彼の闘争本能というものを引き出せたというか、感じられて、試合自体もUスタイルとしては無様だったかもしれないですけど、僕としては非常に試合した感が凄くあって良かったですね」
──ルール的な違いはどのあたりに感じましたか?
永田「それはやっぱり、例えば新日本だと押し込まれて、そこでブレイクしないですよね。どっちかの手がロープにかかってないと。あとは一番問題だと思ったのは(自身の右の前腕部を見せながら)これ。プロレスっていうのはヒジの先端はダメなんです。
でも、通常はヒジから手首までの間、あと後ろのバックエルボーですよ。前腕部はフォアアームっていうんですけど、これを反則というのは納得いかなかったですね。おかしいですよ、これは。だって、いいってなんか出てましたからね」
──前腕部は?
永田「前腕部はいいんだよね。でも、先入観でエルボーって見てる。そこはちょっとルール解析というか、もっと厳密なジャッジが必要かなと思いました」
──永田選手のエルボーがあまりにも殺人技に見えたからじゃないですか?
永田「いや、私は使い分けてますから。反則してくる奴に(ヒジの先端部を指して)ここを使ったことも過去にありましたけど、基本的にレスラーとして、最低限のプライドとして、ここ(前腕部)で打ち込むというかね。それはもうここ(ヒジの先端部)が危険なのは分かってますから、そこはしっかり守って。そういうプライドを持って30年やってますから」
──GLEATという団体はいかがでしたでしょうか?
永田「非常にオシャレですね。入場の仕方、皆さん揃ったジャージを着て、会場の演出とかも非常にいいし、若い選手たちも素晴らしい試合。前半の試合とかね。だけど、UWFルールってなっちゃうと難しいよね。本来持っている自分の感情とかを出しづらくなる。ルールによって出しづらくなっているというかね。でも、そんな中でも伊藤選手はガンガンガンガン蹴りが来たり、掌底ですか? もう掌底というよりもビンタ、張り手でいいですよ。それをやったことで自分の腹の底から湧き上がる怒りというものを、このオープンハンドで殴り合った結果、やっぱりそういうスタイルから見れないような彼の本心の感情が見えたような気がしましたね。まだまだ本当に鍛えれば光る宝石だと思います」
──今後も機会があればUWFルールだったり、GLEATのリングは?
永田「そりゃあ、UWFルールっていうのはね…(苦笑)。今日、こういう試合したからもう呼ばれないでしょう、多分(笑)」
──呼ばれないっていうことはないと思うんですけど。
永田「でも、伊藤選手は伸びしろが凄いあるし。あれはグレコローマンやったらいい。グレコローマンのレスリングで体幹をもっと鍛えれば、とんでもない選手になりますよ。あんなに俺がコントロール出来なかったと思います。まだ30年以上前のグレコローマンのかつての底力が残っていた部分もあったんで、結構ベシャッとしちゃいましたけど。でも、彼の体格と柔軟性からして、もっとそういうスタンドレスリングを磨き上げたらとんでもない選手になると思いますし。ただ、負けん気の強さはいいっすね。『こい、コラ!』って気合い入れて殴ったら、彼は今までガードしてたのを落として、バーンと来ましたからね。あれですよ! プロレスの本質っていうのは。腹の底からの怒り。だから、そういうルールに縛られないところでの彼の腹の底の怒りを見せる。今日は無様なUWFスタイルだったと思いますけど、そこだけは良かった。あのスタイルに対するちょっとしたアンチテーゼだと思います。以上です(と言って、カメラに向かって敬礼ポーズ)」
伊藤「負けました。旗揚げから連続で1周年、メインイベントを務めさせてもろうたけど、また新日本プロレスに負けました。ホンマにこの2つ、取り返しのつかんことやと思ってます。でも、この2つを取り返すのは結果しか、結果しかないから! すぐ切り替えを。気持ちは無理かもしれない。でも、言葉だけでも切り替えて、ドンドンドンドン結果を積み重ねて、この取り返しようのない敗戦を、結果でお客さんにもGLEATの中にも認めてもらえるように、ドンドンドンドン結果を積み重ねていきたいと…」
T-Hawk「(伊藤のコメント中に突然入ってきて)伊藤ーッ! この野郎、お前! 言葉と裏腹に下ばっか見やがって、この野郎! 伊藤! こっち見ろ! こっち見ろ、お前! お前、俺たちによ、下向いてるヒマなんかねえんだ、バカ野郎。分かってんな、お前? オイ、伊藤! 俺はお前を実は買ってんだよ。俺たち2人は今日負けたな? 負けたけど、下なんか見ねえよな、伊藤? オイ、自分の言葉で言ってみろ。(ことさらに大きな声で)下なんか見ねえよな、オイ!」
伊藤「ああ! (こちらも声を張り上げて)下なんか向いているヒマはない!」
T-Hawk「オオ、いいぞ、いいぞ! お前、いい声してるぞ! もう一丁いったれ、もう一丁!」
伊藤「伊藤貴則、GLEAT・伊藤貴則は!」
T-Hawk「オオ!」
伊藤「下なんか向かず!」
T-Hawk「オオ!」
伊藤「ドンドンドンドン!」
T-Hawk「オオ!」
伊藤「結果を出して!」
T-Hawk「オオ!」
伊藤「必ず!」
T-Hawk「オオ!」
伊藤「失ったものを取り返します!」
T-Hawk「いいね! いいね! 俺はお前のそういうところ好きだから! オイ、伊藤、今日新発売の俺のシャツと(伊藤のコスチュームを指しながら)お前の何色? 藤色? 藤色か? カラーも合ってんな。俺はお前の気合い、気に入ったよ。伊藤、今月の17日にお前の地元・大阪梅田ステラホールでGLEAT大阪大会あるよな? そこで、俺たち2人でタッグ組もうぜ! どうだ、伊藤!」
伊藤「今日の負けから1発目のGLEAT大阪大会!」
T-Hawk「イエス!」
伊藤「分かりました。あんたと組んで。俺はもう下なんか向いてらんない」
T-Hawk「オオ、いいね!」
伊藤「ドンドンドンドン、上に突き進むからよ!」
T-Hawk「OK! いいね! 最後に1発、お前のビッグボイスで、気合いをよ! このまま行け、このまま行け!」
伊藤「GLEAT!」
T-Hawk「オオ!」
伊藤「1周年!」
T-Hawk「オオ!」
伊藤「1周年もまだまだまだまだ、ドンドン突き進むからよ!」
T-Hawk「よっしゃ!」
伊藤「大阪大会も俺とT-Hawk、俺らのタッグをドンドン見とけ!」
T-Hawk「ウォー! 帰るぞ!」