■ジョン・モクスリー選手の試合後、記者会見
モクスリー 血と汗でベトベトだよ。
カーン社長 あははは、おっと失礼。
モクスリー スポンサー契約しているノンアルコール・ビールのアスレティック・ブルインだ。うまいぞ。
カーン社長 僕も一本いいかな?
モクスリー アスレティック・ブルイン、チャンピオンの飲み物。(笑い起きる)いいキャッチコピーだろう?
カーン おいしいね。
モクスリー みんな持ってってくれ。
カーン社長 じゃ、質問どうぞ。
――おめでとうございます。あなたはクリスマスの朝、シカゴで開催されたRevolution2020でも勝利をあげAEW世界チャンピオンになりました。今回、同じくシカゴで再び勝利をあげAEW暫定チャンピオンになりました。前回の勝利と今回を比較していかがですか?
モクスリー 人生はクレイジーなもんだ。最悪の事が起こったかと思えば、数年後のその出来事を振り返ると「神からの恵みだった」と感じる時もある。逆に最高の出来事があったと思っても、あとから考えるとそうでもない時もある。人間関係も同じだ。出会った時ずっと一緒にいると思ったのに、それから5人別の女と付き合って、ようやく気づくとかな。
前回チャンピオンになった時、あれはクリス・ジェリコ戦で場所はシカゴだったな? 大きなものを手にしたと思ったよ。ひとつのストーリーが終わったというか、道の終わりに辿り着いたような気分だった。しかし、ひとつのチャプター(ひとつの章)が終わったに過ぎなかった。そしてたくさんのチャプターを経て来た。今回は、自分が辿っていると気づいていなかった道の、旅の終わりのように感じる。
もしかしたらまた、新しいチャプターが進むだけかもしれない。それにしてもいい気分だ。これまでは、ファンもいて、いい感じで試合をして、あれやってこれやって、ベルトを獲って……。といい気分でやって来た。しかし、今回は傷だらけでプロレスのリングにいるだけじゃなく、人生というもっと大きなリングで闘っている感じがした。ここ3年やってきた事、プロレスだけじゃなく、まったく違ったフィールドでやっていたことすべてがここに繋がっていた気がしている。全く予想していなかったけど。3週間前はこの大会のメンバーに入るかもわからなかった。まさかメインイベントなんてな。いや、出ることは決まってたか?
カーン社長 それは決まっていたね。
モクスリー そうだな。出場は決まっていた。俺が「Forbidden Door」そのものだ。
カーン社長 出場は決まっていたよ。
モクスリー そうだな。そしてメインイベントで相手はタナハシと聞いて、もちろんやると答えた。俺はAEWとNJPWどっちも大好きだ。プロレスが大好きだよ。どっちも好きだから嬉しい。なんなら俺は試合しなくてもいいくらいだ。ただ、見ているだけでもいいよ。2つの団体が合同開催するなんて最高だ。ちょっと前はコミュニケーション不足があったが、あれは本当にバカだった。こいつらもあいつらもいいヤツで、今はうまくいっている。
もし来年も「Forbidden Door」を開催するとして、本当に俺は出場しなくてもいいんだ。今回は俺が望んでもいなかったメインイベントでの試合をさせてもらって、大会を成功させてもらって感謝してるよ。横にいるから言うんじゃなくて、本当にトニーは頑張った。WWF vs WCWとか、自分の中の妄想を膨らませるのは簡単だ。ゴールドバーグvsオースティン、ロックvsスティングとか、考えるだけなら誰でもできる。それを実際にやるとは大変な苦労だ。
2つの団体をまとめて、対戦カードを決めて、選手をブッキングして、渡航の手配をして、ケガ人も出た。そんな中で合同開催を実現させると言うのは、両方の団体の努力のおかげだ。俺の仕事なんてそれに比べたら楽なもんだよ。みんなが素晴らしいショーを作り上げてくれた。大変な時期でもあったのにファンの前に出られる事は、本当に幸運だと思う。……この会場は、マイケル・ジョーダンがプレーした場所だ。だよね?
カーン社長 そうだよ。
モクスリー ファンはこの場所で特別なものを見たと思っているだろう。俺たちはマイケル・ジョーダンを生で見たと自慢したものだが、今日のファンはここでタナハシを生で見たと、オカダやスズキを見たって話すんだろう。すごいことだ。質問に答えてると……すべて最高だよ。最高の夜だった。
――最高の試合でした。あなたの予想通りの展開になりましたか?
モクスリー 偉大なプロレスラーの一人、タナハシと一緒にリングに上がれたのは、喜びでしかない。ありきたりな解答になってしまうが、本当に嬉しい。俺のパートナー、ブライアン・ダニエルソンの方が表現するのがうまいのだけど、ここで与えられた仕事をしていると感じられる時、人は喜びを感じる。自分がいるべき場所にいる気分になれる。ケガやいろんな事があって、その場所から離れていた時もあった。プロレスをただ楽しむと言うのはすばらしいことだ。
先日もちょうど考えていた。オハイオ州で数百人の前で試合をした時だ。車で運転して、現地に向かって、最高の観客の前で最高の試合ができた。スピードボールやベイリー なんかもいた。試合が終わってトラックに乗り込んで自宅に戻る。家には妻と子供がいて。子供はもうすぐ1歳になるんだ。家に帰ってこれ(ノン・アルコールビール)を飲みながらUFCを見てゆっくりして……。
その時にこの上ない喜びを感じたんだ。カネとか視聴率なんて関係ない、純粋にプロレスができることにね。こんな喜びはドラッグをやっても得られないぞ。信じてくれ、俺はあらゆるドラッグを試して来たんだから。毎日こんな暮らしができたら、最高だ。
タナハシとリングに上がるのには、もちろんプレッシャーもあった。でも、やるべき事はわかっているし、今の俺はかなりアンタッチャブルになっている。やって来たすべてのことがここで正しいタイミングでまとまっている感じだ。俺はここがホームじゃないけど、史上最高のプロレスラーの一人と、この最高の舞台でメインイベントとしてリングに上がる。大変なポジションでもある。マジで俺がやるの? 俺はもうそこまで強くも速くもないのに。宙返りもできない。それでも闘い抜く。今夜の俺はそんな感じだった。いい気分だよ。
――ブラックプール・コンバット・クラブはメンバーチェンジが多いですね。最近ではウィーラー・ユウタ、今日はクラウディオ・カスタニョーリが加入しました。彼らの新加入はあなたのキャリアにどんな影響がありますか? あなたの周囲に人が増える事の影響は良いことですか?
モクスリー とてもいいことだ。ブラックプール・コンバット・クラブにとって完璧なタイミングで、俺にとってもいい影響がある。例えば、クラウディオは本物のプロレスラーで、すでにメンバーだったようなもの。(ウィリアム・)リーガルの弟子だし、長年俺のトレーニング・パートナーだった。当時は遠征にも一緒に行ったし、よく行動を共にしていたんだ。クラウディオとはそんな関係で、何度も試合もした。流血させたこともあるし、アイツとの試合で歯がズレて何年間か歯列矯正していたこともある。同じ道を歩んで来た仲だし、グループの一員になることに何の疑いもない。
俺は常により良くありたいんだ。そのために、今は舞台から飛び降りる時なのかもしれない。今こそが、俺がここ3年くらいずっと思い描いていたことをやるベースができた時で、実現に近づいている。ここがベースであり、スタート地点なんだ。俺はトレーニングが好きで、学ぶのも好きで、常に「より良くなりたい」と思っている。それと同時に、人の役に立つのも好きなんだ。
ウィーラーはまだ若いけど、俺なんかよりずっと才能がある。俺の知識と経験を彼のために使って、彼が強くなったら嬉しい。基本的にグループに嫌なヤツは入れないから、ウィーラーも本当にいいヤツさ。俺が与えるばかりじゃなく、若くてハングリー精神がある彼から俺は後押ししてもらっている。
リーガルもけして妥協しない男だ。さっきの試合後にも話したが、すでにいくつかダメ出しを食らった。「おめでとう」のひとこともなしにだよ? 「ベルト獲ったよ」って言ってるのに「あそこはもっとできたはず」とかね。でも、そういうところが好きなんだ。お祝いの言葉なんて他でいくらでも貰えるから、より強くなる為のアドバイスはありがたい。リーガルは常に俺をシャープな状態にしてくれる。
クラウディオとブライアンはどっちも最高の男だ。ブライアン・ダニエルソンのことは常に気にしていた。よく史上最高のプロレスラーはタナハシだ、クリス・ジェリコは最高だと言うが、俺の中での史上最高のプロレスラーはブライアン・ダニエルソン。そんな男が俺のパートナーなんて、クレイジーだよ。大ファンだったブライアンが俺のタッグチームのパートナーなんだ。
俺の心のトップ3に入るプロレスラーとタッグを組んでいるんだよ。今は2人のブライアンがいるみたいだ。大好きなプロレスラーのブライアン・ダニエルソン。ブレット・ハート的な存在だとして、もうひとり友人のブライアンがいる。お互い父親で、共通の会話もあったりして。自分の中でそのふたりが同じ人だと思えない時があるよ。大ファンのプロレスラーとタッグ・パートナーになれるなんて凄いよな。近くに自分を押し上げてより良い状態にしてくれる人がいる。間近でブライアンのような人を見られると、自分自身ももっと強くなりたいと思う。
クラウディオに関しては、俺はアイツのことをエイリアンだと思っている。人間であんなに強くてスピードがあるなんてあり得ない。しかも賢くていいヤツと来ている。4ヶ国語も喋れる上にスーパーヒーローみたいなパーフェクト・ボディ。リングでの能力だけを見ても普通の人間な訳がない。彼はパーフェクト・プロフェッショナル・レスラーだ。
そして彼も俺のことをより上に押し上げてくれる。試合前だけじゃなく、毎週トレーニングでもお互いに切磋琢磨して常により良い状態になっていける。これから数年後、ブラックプール・コンバット・クラブのメンバーがどうなっているかを想像するだけでヤバいよ。メンバーが俺の近くにいてくれるお陰でレベルアップできている。最高だよ。質問の答えになっているかな。
カーン社長 ありがとう。いいかな? オッケー。
モクスリー 最後に俺がこれから見たいのは……、俺の中の最高のメンバーを聞いてくれ。6人タッグだ。こっち側3人には、ダービー・アレン、スティングとグレート・ムタ。どうやって実現する?
カーン社長 どうだろう。バックステージのみんなと相談しないと。