中西学引退試合。苦楽を共にし、暗黒時代といわれた2000年代の新日本プロレスを支えてきた第三世代カルテットが最後の勢ぞろい。新日本プロレス最前線を走るトップクラス4人と真正面から激突。
解説席に専修大学の先輩でもある長州力が座る中、後藤、飯伏、棚橋、オカダ、永田、小島、天山、中西の順に入場。リングに上がると永田を相手に、差し手争いのデモンストレーション。大「中西」コールに包まれる中、中西とオカダの先発で試合開始のゴングが鳴らされた。
ロックアップからロープに押し込んだオカダはクリーンブレイク。そしてアルゼンチンバックブリーカーを狙ったオカダだが、中西は持ち上がらず。逆にオカダをタックルでダウンさせた中西がアルゼンチンで担ぎ上げたが、オカダは体をひねって後方に滑り下りる。それでも中西のバックに回ったオカダはレインメーカー狙い。中西はこれをかわし、地獄突き、クロスチョップを決めたところで天山にタッチ。そして第三世代4選手がオカダを取り囲んで攻撃を加えていく。
天山とのダブルタックルを決め、中西がボディープレスで追い打ち。中西が羽交い絞めにしたオカダにモンゴリアンチョップを決めた天山は、ヘッドバットを叩き込む。続いて天山がオカダを羽交い絞めにするが、中西が放ったラリアットはかわされて天山に誤爆。これを機に場外乱撃戦に。この間、リング内は天山vs飯伏の展開。エルボーの打ち合いから天山にモンゴリアンチョップを叩き込む飯伏。タッチを受けた棚橋も、飯伏に羽交い絞めにされた天山にモンゴリアンチョップを打ち込んでいく。棚橋が回転エビ狙ってきたところ、踏ん張った天山は上からチョップを振り下ろしたが、かわされてマットに強打。棚橋が逆にモンゴリアンチョップを打ち込んでいった。
替わった後藤はチンロックで天山の動きを止め、鼻っ柱にエルボーを落としていく。さらにコーナーに追い込んで蹴りを叩き込み、串刺し式のニールキックからバックドロップ。エルボーの打ち合いからロープに走った後藤。これをマウンテンボムで返したところで小島にタッチ。
タッチを受けた小島は後藤をコーナーに詰めてマシンガンチョップから串刺しフォアアーム、会場一体になった「いっちゃうぞバカヤロー!」の大合唱からフライング・エルボードロップと攻め立てる。チョップの打ち合いからトルネード式エルボーを決めた小島。さらにコジコジカッター。ブレーンバスターを背後に滑り下りた後藤はGTR狙いうが、小島はブレーンバスターに切り返していった。そしてサポーターを外してラリアットを狙ってロープに走る。後藤はこれを牛殺しに切り返していった。
そしてリング上は永田vs飯伏の顔合わせに。フェイントをかけてからの低空ドロップキックでヒザを打ち抜いた永田に対し、飯伏はカウンターのミドルキックからその場跳びムーンサルトプレス。飯伏の攻撃をかわした永田はエクスプロイダーを決めるとクロスフェース式のナガタロックへ。しかしこれはロープに逃げられてしまう。飯伏はバック宙式のキックを決めたところで棚橋にタッチ。
カウンターのフロントハイキックを浴びながらも倒れない棚橋。永田に張り手を見舞うと、永田も張り手の連発で応戦。カウンターのフロントスープレックス。ここで中西がコーナーから手を差し出してタッチを求める。
逆水平の連発で棚橋をコーナーに追い込むと、串刺しラリアットを狙ったが、棚橋は低空ドロップキックで迎撃。中西をフルネルソンに捕らえた棚橋だが、永田がカットに飛び込んでくる。フロントキックが誤爆すると、永田をアルゼンチンバックブリーカーで担ぎ上げた中西。スワッ、仲間割れか!……と思われたが、中西は飛び込んできた飯伏に肩に担いでいた永田を投げてぶつける。再び永田をアルゼンチン式背骨折りで担ぎ上げた中西は、棚橋にも永田を叩きつけた。ここで永田とともに野人ダンスの競演を披露すると、中西が棚橋にラリアット、永田が飯伏にフロントハイキックを放って見せ場を作る。
さらに棚橋をアルゼンチンバックブリーカーで担ぎ上げた中西だったが、空中でスリーパーに切り返される。中西がバランスを崩したところ、後方に滑り下りた棚橋は、中西を足をつかむとドラゴンスクリュー。永田にもドラゴンスクリューを見舞い、中西をコーナーに詰めてオカダ、飯伏、後藤を呼び込んで連続攻撃へ。そしてハーフハッチを決めてコーナートップへ駆け上がった。しかし素早く立ち上がった中西は、トップロープに足をかけて雪崩式ブレーンバスターで棚橋をマットに叩きつけた。
そして逆にコーナー最上段に上がった中西。十分に間を取ってから、重量感たっぷりのフライング・ボディーアタック。カウント2で返されると、またもやアルゼンチンバックブリーカーで担ぎ上げる。すかさず天山が飯伏にアナコンダバイス、小島が後藤にバファロースリーパー、永田がオカダにアームロックを決めてアシスト。ここでヘラクレスカッターを決めたが、棚橋はカウント2で返していく。
そして右人差し指を天高くかざした中西。棚橋を引き起こすと、大☆中西ジャーマンを狙う。棚橋が踏ん張り、後藤と飯伏がカットが飛び込んできた。しかし中西はカットに入ってきた2人同時にスープレックスで後方に放り捨てた。しかしオカダのドロップキックを浴びて失速。続いて浴びた棚橋のスリングブレイドは永田のカットで命拾いしたものの、飯伏がハイキックで永田をカット。孤立した中西に対し、後藤がGTR、飯伏がカミゴェ、オカダがレインメーカー、棚橋がハイフライフローの波状攻撃。フィニッシュ技を立て続けに浴びては、さすがの野人もカバーを返す力は残されていなかった。
敗れた中西は、しばらくリング中央で大の字になったまま。第三世代の3人が中西を介抱する後方で、現世代のトップクラス4人が勝ち名乗りを受けていた。
天山「ニシオくん、よかった! ホンマお疲れさまでした!」
中西「ありがとうございました! トップどころの4人とやって、この最高のパートナーとやって。やっぱり、凄かった、アイツら! でも、やられたけど受け切った部分はたるんで。これから生きていく思ったら、逃げてたらアカンので。やられてもええから受けきっていきたいと思いますので。そういうやり方で。プロレスで学んだことはそういうことかな、と。俺ばっかり話じゃなく、みんなの話、聞いてください」
永田「いや、先輩の話を(笑)」
中西「いやもう、何を言うたらええねんて(苦笑)。ホンマ、ありがとうございました!」
天山「ホンマ、まだやれるやん!」
中西「いやあ、もう(苦笑)」
永田「リングの上で撤回したらどう?(笑)」
中西「いやいや、金返せ言われるから(苦笑)」
永田「いまなら間に合う(笑)」
※ここで坂口征二相談役が「中西、一番元気がよかった!」と声をかける。
中西「いやいやいや」
永田「ホントだよ!」
天山「最高やったわ、いつでもカムバックしてって。頼むわ、ホンマ」
小島「すばらしい」
天山「最高でしたよ。27年ね、最後の引退試合。こんなすばらしい試合できて。負けはしましたけど、全力で最後まで歯を食いしばって、ニシオくんが。最後までやったっていうのが凄い……。悔いはありませんよね?」
中西「いやまあ、ホンマに。最高のものを揃えたっていうのが。最高のパートナーがいて、最高の相手がいて、最高の団体と先輩がたがいて。後輩たちも最高です。みんな、最高です」
――27年間、新日本プロレスで戦い続けてきたわけですけど、これから新日本で戦っていく選手たちにどんな思いを伝えたいですか?
中西「誰かて歴史と戦ったりとか、いろんなもんと戦ってると思うんですけど、せやけど一番はお客さんなんで。お客さんに喜んでもらえる試合をしてほしいです。この試合をしなアカンということは絶対にないと思うんで。せやけど、お客さんありきだから、プロレスはここまで栄えてきたと思いますし。自分もそれだけのことやったら、胸張れると思います。いろんなことで失敗してるけど、せやけどお客さんに対してやってきたんで。それだけは忘れんといてほしいです」
――それから第三世代への思いもありました。リング上でも永田選手、天山選手、小島選手の名前が上がりましたけれども、あらためてこの三人は中西選手の中でどんな存在なんでしょう?
中西「いや、ホンマにどうでもええ人のことは誰も言わへんし。あんだけキツく言ってもらうということは、まあ、うっとうしいところも自分にはあったんでしょうけど、せやけど『コイツをブッ倒してでも、俺はのし上がってやるんや』っていう、そのくらいの気持ちがあるから言うてくれたことで。それぐらいの価値はあったっちゅうことですね。それは僕もそうやったし。いつも、いがみあってばっかりじゃなく、たまには力も合わせたけど、でも、常にやっぱりライバルやから。これ、出世争いやから。せやけど、やってるうちに、それぞれの道というか、それぞれのやりかたができてきたから。最初のうちはみんな、やってること同じやったかもしれんけど、そういうことやってるうちに、いろんなことを認めていって。いつの間にか頼りにしていて。今日なんか、おんぶに抱っこに肩車でした。まあ、アルゼンチンは俺がやったけどね(笑)」
一同「ハッハッハ!」
天山「俺たち第三世代、俺たち4人やからって。一つの同志、仲間やと思ってるからね。ニシオくんがこうやって辞めるのって、なんか、俺、ありえへんなって思うわ」
中西「すんません」
天山「がんばってな! ありがとう」
中西「ありがとうございます、ホンマに」
――最後まで中西選手、涙はありませんか? 寂しい気持ちは?
中西「いやいや、何回も泣きそうになりましたし。(目に涙を浮かべながら)……お袋が亡くなって、親父がここに来てて。べつに親父にウソついてるわけやないけど、レスリング始めたのはプロレスラーになりたいから始めたことであって。いままでスポーツはしたことなかったから、やりたかったこととか、自分の力でやったことなかったから。ホンマ、プロレスを純粋にやりたかったからレスリング初めて。オリンピックまで行けて、新日本プロレスに入れて。まさか新日本に入れると思ってなかったし。馳さん、長州さんがいる専修大学に入れたし。入ってからも坂口会長にかわいがってもろうて。同期のこの人間に、これだけ鍛えてもらって。磨いてもらって。それでいままで来れたって。一人じゃ絶対に来れへんし。一人じゃ続くところちゃうし。せやからホンマに、この3人にはホンマに感謝の気持ちしかないです」
――きっと天国のお母さまも「お疲れさま」と心から言ってくださってますよね。
中西「言うてくれたらホンマにもう。京都帰ったときに、お袋が好きやったもんでも供えたいと思います」
――中西選手が一番大事にしてきたお客さん、ファンのみなさんに向けて一言お願いします。
中西「本当にいままでありがとうございました! ちょっと図々しいんですけど、第二の人生、これからもよろしくお願いします!」
3人「がんばれ!(と言いながら、拍手)」

――リング上で第二の人生という言葉がありましたけど、これからについては?
中西「行く行くは、長いこと続いてる家業をウチはやってますので。京都の宇治茶を。そのほうをやっぱり兄と一緒に行く行くは継いでいきたいと思います。ただ、いまはプロレスに携わっていきたいと思うし、携わりながらでもそのお茶の仕事はできるはずですから。せっかくやってきたことを活かしていきたいと思います。いや、活かせるかどうかわからないですけど、なんでも一生懸命やるから、それしかないんで。とにかく、いまはそういう気持ちです」
――永田さんは昨日、「完全に覚醒させる」とおっしゃってましたが、今日の中西さんの姿を見ご覧になっていかがですか?
永田「いやもう、今日のお客さんの反応がすべてじゃないですか? 何をするかわからない。まさかね、たまたま誤爆したら蹴っ飛ばされて、担がれてブン投げられるとは思わなかったです(苦笑)。しかも二回も(笑)。やっぱりあの、この四日間、中西さんの持ち技をすべて出させたと思います。一発一発のインパクトは強烈だったし、それがお客さまの反応、すべてを物語ってるんじゃないかなと。とにかく持てるものをフルに吐き出して、最後は完全燃焼したなって試合だったですね。いままで27年、プロとしてとんでもない刺激をね、すぐ目の前で、大きな背中を見せてくれて。これから先輩がいなくなったら、誰が俺にそんな大きな刺激をくれるのかなって、さみしい思いはしますけどね。でも、本当にいまはお疲れさまでしたと言いたいです」
――小島選手は第三世代の中西選手が先に引退されることについては?
小島「私は知り合ってから四半世紀以上、経つんですけど、本当に仲良くなれたのはここ5年くらいのような気がするんですね(苦笑)」
中西「ハハハ」
永田「なんだ、それ(笑)」
小島「新日本に戻ってきて、ずっと敵対していて。本当に仲良くなったのは5年くらい前から。なんか仕事で一緒になったりとか、ずっとお世話になって。本当にこの人の凄さ、すばらしさをずっと毎日毎日、体感して。だから、いまはさみしさしかないんですけど。本当にお疲れさまでした、ありがとうございました」
中西「ありがとうございました」
永田「『中西ランド』さまさまですね(笑)」
小島「『中西ランド』、おもしろかったです(笑)」
中西「(小島に)セミ、取ってあげたじゃないですか!(笑)」
小島「そうですね(笑)。入門した頃のセミを片付けるのを(笑)」
天山「『中西ランド』、やろうぜ、また!」
中西「いやいや、ちょっと制約が強すぎて(苦笑)」
天山「復活しようよ」
永田「やりましょうよ、ヒマになんだから(笑)」
中西「いや、まあ、はい(苦笑)」
――IWGPヘビーを初戴冠した思い出の後楽園ホールでの引退試合でしたが、どうお感じになりましたか?
中西「いや、同じ場所やから同じお客さんが来てるわけやないけど、棚橋に大☆中西ジャーマンにいく指一本あげただけで、あそこまで声援が来たんで。あれはやっぱり、覚えてくれてるっちゅうか、この場所、この空間、もういろんな意味でそういうのがあって。そのとき、会場に来てなくても、観た人はそう思ってくれたっていう。ああ、プロレスってなんか、つながってるんやなっていうことと、やっぱりどこにいて、どこでやってもお客さんは観てるから、絶対に気を抜けへんから。この緊張の中で、一番幸せを感じなアカンのやなと、そう思ったし。やっぱり、棚橋はすごいヤツやと思いましたね……。大丈夫ですか?」
天山「よし!」
中西「ホンマにありがとうございました!」
※報道陣から拍手が起こる
永田「お疲れさまでした」
小島「ありがとうございました」
天山「がんばってよ! ありがとう。俺ら4人、いつまでも、ガッチリ気持ちは一緒。仲間!」
中西「はい!」
オカダ「まあ中西さん、お疲れさまでした。続けていろんな技を喰らっていく中で、中西さんの最後の地獄突きを喰らったのは僕なんじゃないかと思います。いや僕でしょう。まあでもあんだけ元気な人が辞めて、引退で寂しいですけども。それを忘れさせるような闘いを僕たちは見せていきたいと思います。ありがとうございます。ありがとうございました」

棚橋「本当に中西選手には、いろんな節目節目でね、闘ってきて。2009年の後楽園ホール。2009年、大阪府立体育館。不祥事からの復帰戦っていうね。嫌な、嫌だったと思うけど引き受けてくれて……。そん中でも入門して1年目、1999年『G1 CLIMAX』直前、僕と中西さんがね、道場で練習していた時にアクシデントでふくらはぎを肉離れしてしまって……酷くて。それでも中西さんは1999年の『G1 CLIMAX』を勝ち上がって行って、セコンドですみませんすみませんと思いながら、優勝した時は本当に嬉しくて……。本当に長い間、お疲れさまでした。新日本プロレス、頑張っていきます。中西さん見ていって下さい」
※飯伏、後藤はノーコメント