第7試合は棚橋弘至vsクリス・ジェリコのスペシャルシングルマッチ。12.8広島ではジェリコからメッセージVTRが到着。「ドームがオマエの引退試合だ!」というアピールに対し、棚橋は「軽々しく引退なんて言うなよ。俺はまだまだ引退なんてしないから。ただ、オマエの引退試合にしてやるよ」と応戦。世界中が注目する一騎打ちを制するのは果たして?
試合前、ビジョンには棚橋がジェリコのような出で立ちで登場。ロックバンドを背に、マイクで「ジェリコ! スーパースターなのは認めるよ、でもな! 一回サプライズVTR流しただけで、しれっとドームの試合決めやがって、対戦要求が雑じゃないか!? もっと乱入とかしてこいよ! 俺の引退試合? ふざけんなー! 俺だってな、新日本のエースだ! オマエをギッタンギッタンにして、オマエのTwitter350万のフォロワーのみなさんに、俺のすばらしさを伝えてやるよ! 東京ドーム、最高の舞台だ。ジェリコ君、かかってきなさい」とアピール。
一方のジェリコもビジョンに登場。「タナハシ、いや、バカハシと呼んだほうがいいか。もしドームで俺を倒したら、オマエは禁断の領域に足を踏み入れることになる。そう、AEW世界王座への挑戦だ。オマエは俺を倒せると思うか? 俺は思わないね、サヨナラ」と棚橋を挑発する。
棚橋はニューコスチュームでドームの花道を進む。ジェリコはAEWのベルトを腰にリングイン。
開始のゴング、場内は「棚橋」コール。するとジェリコは中指を突き立てる。そして、「バカハシ!」と挑発してからマッスルポーズ。だが、場内はブーイング。逆に棚橋が煽ると、場内は「棚橋」コールが発生。
ショルダータックル合戦は互角となり、互いにマッスルポーズ。続いて棚橋は首投げの連発からエアギター。
ジェリコは棚橋の左腕を捕える。だが、棚橋はアームホイップで逆にジェリコの左腕を捕獲。続いてロープワークの攻防から、リストの取り合いへ。
棚橋はジェリコにコーナーを背負わせ、離れ際にカンガルーキック。さらにセカンドロープから振り向きざまにクロスボディを敢行。そして、アームホイップからジェリコを踏みつけて相手のお株を奪うマッチョポーズ。
ジェリコは怒りの張り手を見舞うが、棚橋も張り手を返す。ここでジェリコはうまく棚橋を場外に排除。そして、棚橋がエプロンに上がると、ロープを利用して三角飛びのドロップキック。
ジェリコは場外戦に持ち込み、棚橋を鉄柵に叩きつける。そして、リングサイドのカメラマンのカメラを奪い、棚橋を撮影。続いてジェリコは棚橋をリングサイド周りの机に放り投げ、その上でDDTを敢行。
戦場をリングに戻したジェリコは、セカンドロープからニードロップ。棚橋も打撃のコンビネーションで反撃するが、ジェリコはダブルアームの体勢からバックブリーカー。そしてエアギターで挑発。
続いてジェリコはトップコーナーに上がってエアギターを披露し、ダイビングボディプレス。だが、棚橋はかわすとニヤリ。
ジェリコは棚橋を場外に投げるが、ロープをつかんだ棚橋は逆上がりでリングにカムバック。そして、フライングフォアアームを決めてから気合の雄叫び。
続く串刺しボディプレスは、ジェリコが海野レフェリーを身代わりにする。無法状態を作り上げたジェリコは棚橋の急所にキック。さらに皮のベルトでムチのように棚橋を引っぱたく。劣勢の棚橋だったが、スキをついてジェリコにローブローでお返し。
棚橋はジェリコにエルボーを連打。だが、串刺し攻撃はジェリコがかわす。そして、棚橋をコーナーに叩きつけようとするが、かわした棚橋はジェリコをコーナーに叩きつけ、背中に追撃のボディアタック。さらにセカンドロープからサンセットフリップをヒット。
ジェリコはバックエルボーで反撃するとライオンサルトを狙うが、棚橋は場外に突き落とす。そして、トップコーナーから場外のジェリコにハイフライアタックを敢行。
ジェリコはカウント18でリングに生還。棚橋はロープをまたいだジェリコの足を捕えるとドラゴンスクリューを連発。さらにスリングブレイドを狙うが、これはジェリコがこらえて、コードブレイカーの体勢へ。だが、棚橋も回避してドラゴンスクリュー。続いてグラウンドでのドラゴンスクリューを連発。
ここから棚橋はハイフライフローを繰り出すも、ジェリコはヒザで迎撃。そしてライオンサルトを決めるが、ヒザを痛めカバーは遅れてしまう。棚橋はカウント2でキックアウト。
ジェリコはジューダスエフェクトを繰り出すが、棚橋はしのぐとダルマ式ジャーマン。だが、ジェリコはカウント2でキックアウト。
棚橋はもう一度スリングブレイドを狙うも、ディフェンスしたジェリコはウォールズ・オブ・ジェリコへ。だが、棚橋はなんとか切り抜け、スリングブレイドを炸裂。そしてファイナルカットを決め、もう一度ハイフライフローへ。しかし、ジェリコはカウンターのコードブレイカー。ジェリコはカバーに入るも、棚橋はカウント2でキックアウト。
続いてジェリコはジューダスエフェクト。だが、棚橋はかわすと張り手で動きを止め、掟破りのコードブレイカー。さらにスリングブレイドを仕掛けるが、こらえたジェリコはウォールズ・オブ・ジェリコへ。これは棚橋が首固めで返す。
さらに棚橋はツイスト&シャウトを決め、スリングブレイドを炸裂。そして、ハイフライアタックを決めるが、ジェリコはその勢いを利して両足を捕獲し、一気にウォールズ・オブ・ジェリコへ。棚橋は苦悶の表情を浮かべ、ついにタップアウト。ジェリコが棚橋を屈服させた。
試合後、ジェリコはAEWのベルトを肩に退場。満身創痍の棚橋はセコンドの肩を借りて引き揚げた。
ジェリコ「お前たち、なんでそんなに静かなんだよ。俺を見て怖気づいているのか? 水だって言ってんだろ!(スタッフが慌てて水を持ってくる)。これが俺にとって3年連続3回目の東京ドーム。最初はケニー・オメガだった。そしてナイトー、そして今日はタナハシとの試合だった。どの試合も最高の試合だったと思っているが、多分自分で一つあげるとするなら、今日の試合が一番好きな試合だったんじゃないかなと思う。そしてタナハシ。彼こそがこの会社のエースということも肌で感じることができた。彼は俺と同じように伝説に残るようなキャリアを持っている。だからこそ、今日の試合の前、俺はタナハシに向けて、もしこの試合に勝つことができるなら、AEWのベルトを懸けて闘おうというコメントをしたんだ。彼は本当に強い男でもあった。多分、自分のアゴが脱臼しているかもしれないし、ヒザもいたんでいる。ドラゴンスクリューでやられたのかもしれないけど、アメリカに帰ってからMRIの検査を受けてみないとわからないけれども、多分だいぶいたんでいるだろう。ここまでリングの中で俺をいためつけた男はなかなかいない。ナイトー、ケニー、EVILともやったけど、ここまで自分の身体がいたんだことはなかった。本来ならば、リングの中で邪悪なことを叫んで終わっているものが、今日はそれもしなかった。なぜならば、この試合が今の自分の中で新日本プロレスのリングに上がるのが最後だからだ。ケニー、ナイトー、オカダ、タナハシなどとリングの上で交えてきたが、全員ともう一度闘いたいという気持ちも大いにある。いろいろな問題もあるし、政治的な問題もあり、自分自身、ビジネスとしてプロレスに集中するためにもこれからやっていかなきゃいけないことがある。俺はプロレスを29年間、続けてきた。自分がここまでのキャリアを築けたのも、ひとえに自分が真面目な労働者だからかもしれない。そして世界中で闘いを繰り広げ、ここまでやってきた。もちろん、まだ闘っていないスズキ、オスプレイなどともリングの上で闘ってみたい気持ちもあるけど、俺は新日本のオーナーでもないし、何も決める権利もない。ただ、みんなに最高のショーを見せる男であることは間違いない。今の時点で俺が日本に帰ってくるかどうかというのはわからないけれども、チャンピオンでありペインメーカーという立場で言わせてもらえれば、自分はビジネスをやり続ける。そして俺こそが、日本とアメリカの橋渡しという立場も担っているんじゃないかと思っている。俺とケニーの試合が、その橋渡しの第一歩になったと思う。日本を知らなかった外国人、そして外国を知らなかった日本人が、あの試合をもって、お互いを知ることができた。そして、世界はあの試合を通して、イブシやオカダ、そして新日本にいるたくさんの日本人レスラーを見る機会に恵まれたんだ。俺は新日本での懸け橋的な役割と同じように、AEWでも同じような仕事をしたいと思っている。アンバサダーであるとか、ビジネスマンであるとか、どういう肩書きになるかわからないけれども、できることなら日本に帰ってきたいし、そのような役割を続けられたらと思っている」
──今の時点で契約はどうなっているんですか?
ジェリコ「ここでは契約内容の話をするつもりはない。ただ一言言えるのは、今の時点での新日本の最後の試合という約束になっているということだけだ。本来ならば、タナともっと早い段階で試合をしたいと望んでいたけれども、去年はナイトーと試合をした。そしてタナとは絶対やってみたいと思っていたので、今年になって実現してよかったと思っている。最後の試合と言っているけれども、もちろん日本に帰ってきたいという気持ちは強くある」
──懸け橋、ブリッジという言葉がありましたけど、それはどういったものなんでしょうか?
ジェリコ「これは多分、今日の試合、タナハシとクリス・ジェリコというもので一つできあがった橋ではないかと思っている。私は試合前に『もし、タナが俺に勝ったらAEWのベルトを懸けてまたやろう』という話をした。もちろん、彼は天才であり、俺自身も同じようにプロレスのジニアスだ。この試合が実現したことで、この橋ができあがったのではないかと思っている。この試合の前のコメントというのも、自分自身でプライベートジェットの前で撮った動画を上げさせてもらった。こういった全ての一連の流れが世界を変えたんじゃないかと俺は思っている。ただ残念ながら、俺は新日本でもAEWでも責任者という立場にはないので、どういう動きになるかは、自分の言ったことが実現するかはわからないけれども、両方の会社に対してこれからも同じように収入を増やし、そして役立てていきたいと思っている」
──今日の試合が一番好きだっておっしゃっていましたけど、それはなぜですか?
ジェリコ「心理戦が今日はとても冴えていたと思っている。そこが好きだ。新日本に戻ってくるにあたって、オカダ、ケニー・オメガ、ナイトーの話はたくさん聞いていたけれども、ついにタナハシと対戦できた気分だった。これはWWEでアンダーテイカーとやった時と同じような気分だった。WWEでも、10年経ってようやく実現した試合だった。その時にもこれまでの長い間、『お前はどこにいたんだよ』っていう気分で、リングの中で凄くいい気分になったのを憶えている。そのような心理戦が思い出されるぐらい、素晴らしい試合だったと思う。もちろん先に述べた選手たちと比べると、機動力や可動域に関してもタナハシは劣っているかもしれないが、彼が持つファンとのつながりがリングの中でも感じられて、それが凄くうれしかった。彼が素晴らしいショーマンであることも肌で感じることができた。また、さっきも言ったように自分のアゴが脱臼する程のパワーも実は持っていて、自分のヒザも彼の技のおかげでだいぶいたんでしまった。そういったパワーも感じることができた。やはりタナハシとの対戦ということで、少し恐怖心もあった。だからこそ、ペインメーカーという自分のキャラクターで行った。今日、タナハシは勝たなかったけども、フィニッシュ以外は全て彼がもっていったんじゃないかという思いすらある。ただ、髪型だけは変えたほうがいいね。あれはあまりにもバカげている。バカハシって言ったことが、そのままになってしまったな。でも、素晴らしい試合だったと思っている。皆さん、またすぐ会いましょう。もしすぐ会えないようならば、お前らどっかにすっこんでろ!」
棚橋「ああ、言葉もないです。悔しいです」
──棚橋選手にとっての1年の始まりが、こういった形でのスタートになりましたが、どういうお気持ちですか?
棚橋「いや、ジェリコに勝ってスタートダッシュ決めるイメージしかなかったから、何も思い浮かばない」
──ジェリコ選手は勝った場合はベルトへの挑戦など、いろんな話がありましたが、この試合の結果を受けて今後どういうふうに考えているんでしょうか?
棚橋「俺もわかんないです。2020年、どういう年になるかわかんないけど、上がっていけばいいだけの話だから。必ずこっから一段一段。逆エビ食らって、息ができない、腰が詰まるような若い頃を思い出しましたね。21年目、気持ちはデビューした時と変わってないつもりだから。始めるに早いも遅いもないでしょう。今はそうやって言っておきます」
──ジェリコ選手は新日本に上がってからマークしていた選手だと思いますけど、実際に触れてみてどうでした?
棚橋「本当ね、実を言えば初めてああいうタイプと。独特のリズム、独特の重さ、ああ世界は広いな、こういう選手がいるんだっていうのが感想です」
──これから上がっていくというテーマの中にジェリコ選手へのリベンジというのも含まれますよね?
棚橋「今回、いろんなものが逃げていったからね。向こうのご厚意を無にしたから。こっからどうやって今の新日本のトップ戦線に戻っていくか? 戻るというか食い込んでいくのか全くわかりませんけど、俺ならまだできるっていう変な自信はあります。ここでね、『まだまだ期待してください!』って言うと、ちょっと俺も心配だから、まだ棚橋に少し期待していてくださいよ」