11月15日(日)プロレス界のレジェンドである天龍源一郎の引退興行が両国国技館で行われ、新日本プロレスからオカダ・カズチカ、石井智宏、獣神サンダー・ライガーが参戦した。
■天龍プロジェクト『〜天龍源一郎 引退〜 革命終焉RevolutionFINAL』
11月15日(日)
東京・両国国技館
観衆:10,522人(超満員札止め)
●第11試合 60分1本勝負
天龍源一郎引退試合
×天龍源一郎
(17分27秒 レインメーカー→片エビ固め)
○オカダ・カズチカ
■試合経過
1976年11月13日にプロレスデビューして以来、数多の激闘を繰り広げて来た天龍の引退試合。自分を含めた昭和の名レスラーたちを見下したオカダを、敢えて対戦相手に指名した。オカダはIWGPヘビー級ベルトを巻き、外道をセコンドに従えて登場。
試合開始直後、オカダがロープ際でクリーンブレイク。その後、天龍がクリーンブレイクせずに逆水平チョップを放つが、オカダが回避。そして、エルボー連打からロープへ走るが、天龍がカウンター逆水平チョップで迎撃し、オカダを場外へ追いやる。そして、レインメーカーポーズを真似て挑発に出るが、オカダは歯を見せて余裕の笑み。
リングへ戻ったオカダは、すぐさまフロントハイキック、エルボードロップ、低空ランニングフロントキックなどで攻勢に転じる。そして、チンロック、変型チンロック、変型コブラツイスト、トップロープ越えのセントーンアトミコで追い討ち。天龍も逆水平チョップで反撃するが、オカダがエルボースマッシュ連打でやり返し、天龍を踏みつけて“本家”レインメーカーポーズ。
次にオカダはセントーンを繰り出すが、天龍がかわして自爆を誘い、低空でヘッドバットを連発。さらに、オカダの額を蹴り上げ、逆水平チョップ&グーパンチ連射、ブレーンバスター、WARスペシャルへ繋げる。
さらに天龍はパワーボムを狙うが、オカダが抵抗し、低空ランニングエルボースマッシュをお見舞い。次のツームストンパイルドライバーは天龍が回避するも、オカダがエルボースマッシュで動きを止め、コーナー最上段からダイビングエルボードロップを投下。
ここでオカダはレインメーカーポーズを披露し、レインメーカーに行く。しかし、天龍がバックエルボーを浴びせて脱出し、カウンターラリアットで逆転。さらに、DDTからパワーボムの体勢に入るが、オカダがバックスープレックスに切り返す。
さらにオカダは、膝立ち状態の天龍へ低空ドロップキックをお見舞い。そして、再びレインメーカーを狙うも、天龍がグーパンチを浴びせて逆襲。その直後、膝立ち状態のオカダに低空で延髄斬りを食らわせる。
ここで天龍がコーナーを背にしてオカダを捕らえ、急角度のパワーボムホイップで叩きつける。そして、垂直落下式ブレーンバスター、グーパンチ3連発で追撃するも、オカダがいきなりカウンタードロップキックを見舞って逆転。
それでも天龍がグーパンチを繰り出すと、オカダが自ら前に出て挑発。そして、低空ドロップキックを食らわせると、天龍の上体を起こしつつ、低空ドロップキック2連発で追撃。
だが、天龍は逆水平チョップ3連射、グーパンチ3連射などで逆襲。しかし、オカダがスタンディングでショートレンジドロップキックを食らわせる。
それでも天龍は、裏拳、逆水平チョップ、グーパンチなどを乱れ打って反撃。ところが、オカダがまたもショートレンジドロップキックを浴びせ、今度こそレインメーカーで勝負を決めた。
試合後、オカダは倒れて動けない天龍に対し、深々と頭を下げてから退場。その後、ようやく立ち上がった天龍は、マイクで「いやあ、負けたー!!」と叫んだ。
■引退セレモニー
天龍にとって全日本プロレス時代からのライバルであるスタン・ハンセン、テリー・ファンクがリングへ登場。それぞれ天龍に花束を手渡し、3人で記念撮影に納まった。
続いて、天龍の愛娘でもある天龍プロジェクトの嶋田紋奈代表がリングへ登場。天龍に花束を贈呈した。
すると天龍が「代表! 代表・・・。今日だけでいいよ。父ちゃんの代わりに、たくさん来て下さったお客さんに、ひとこと感謝のお礼を言いなさい」と言葉をかける。これで「紋奈」コールが起こり、嶋田代表の挨拶となった。
嶋田「本日は天龍源一郎の引退試合に、本当に北海道から沖縄まで日本全国の方が足を運んで下さいました。また、ライブビューイングですとか、いろんなネット環境ですとか、そういったものを整えて、たくさんの方にこの大会をご覧いただくことがかないました。本当に天龍プロジェクトは小さな所帯で・・・(※言葉に詰まり涙声になって)大将(天龍)に本当に苦しい思いをさせてしまうばかりの5年間だったと思いますけど、こうやって皆さんに最高の舞台を与えていただきましたことを、本当に心から御礼申し上げます。ありがとうございました(※と言いながら四方の客席へ礼)」
続いて天龍がマイクを受け取り、ファンに最後の挨拶。
天龍「皆さん、俺は本当に! 腹いっぱいのプロレス人生でした。もうこれ以上、望むものは何もありません。ありがとうございました!(※大拍手の中、四方の客席へ礼) みんなありがとー!(※大拍手)」
ここで天龍がリング中央に立ち、引退のテンカウントゴングが打ち鳴らされる。そして、パンチ田原リングアナウンサーが「赤コーナー! ミスタープロレス、260パウンド、天龍源一郎ーーー!!」とラストコールすると、「サンダーストーム」が鳴り響く中で黄色の紙テープが一斉にリングへ投げ込まれる。最後は、今大会に出場した選手たちが天龍を取り囲み、記念撮影を行なった。
■オカダ・カズチカのコメント
オカダ「見てもらったら、わかるように! これが昔のプロレスといまのプロレスの違いだ。ああ? 技も出してねーぞ? ああ? それが昭和のプロレスかわからない。これが昭和のプロレスかもわからない。もしかしたら、平成のプロレスとも違うかもしれないし。ただ! 年下のスゲー後輩の俺が言ってやる。天龍さんアッパレだよ! それ以外はとくにありません!」
■天龍源一郎のコメント
天龍「今日は、たくさん、ありがとうございました!」
——天龍さん、プロレス人生、最後の試合が終わりました。いまの素直な気持ちを教えてください。
天龍「くやしいです! でも、なんか……この身体の痛さが、いままでの俺の人生のすべてを物語っているようで、心地いいですね」
——オカダ選手はホントに非情なまでに攻めてきましたが?
天龍「プロレスはね、彼と闘って、一歩一歩、進化してると思ってますよ。俺のプロレスは掘り下げるプロレスだったけど。彼は一歩一歩新しいプロレスを、今日は俺に体験させてくれましたよ。ラリアートもシャープでいいのが入りましたよ。ま、こんなこと言うのもシャクだけど、最後にふさわしい相手だと思ってますよ」
——そういう意味では“平成のプロレス”を堪能できましたか?
天龍「いや、もう十分。見せつけられましたよ」
——最初に「くやしい」という言葉もありましたが、そういう意味では「くやしさ」は残る?
天龍「そりゃあ……ねえ? ま、そういうことにしておきましょう(苦笑)」
——最後までご自身のプロレスを出し尽くせたというお気持ちは?
天龍「いや、出せたと思ってますよ。まあ、ちょっとアレだったけど、逆に鋭角的なパワーボムも出せましたし、そこを起きてきたわけだからね? やっぱり、彼も“技術”というモノは持っていると思いますよ。受け身の技術は」
——最後、スリーカウントを聞いた気持ちは?
天龍「あ、なんかわかんなかったですね。なんかいいのがバチャーンとノド元に来たのはわかったんですけどね。スリーが入ったとはホントに思ってなかったですね」
——気づいたら、試合が終わっていた?
天龍「そんな感じですね。飛び蹴りのイイのが何発か入りましたからね。それもあるのかなと思います。けっこうエグイのが、何発かアゴに入ってましたから」
——客席から天龍さんへの歓声が飛んでましたけども。
天龍「いや、今日はね、必死でしたよ(笑)、ハイ。なんかアイツの飛び蹴りがイイところに入ったというのもあるけど、俺自身も今日は必死でしたよ」
——今日はひさびさに黒のショートタイツでした。オカダ選手も試合前に「ショートタイツで来い」と言ってましたが?
天龍「いや、べつにオカダが言ったからどうこうだからじゃなく、やっぱり最後くらいは潔く、というね。オカダの向こうのファンの人たちに見たままを感じてもらえればいいなという俺の気持ちです。だから、今日の試合を観て、そのとおりを語ってもらえればいいし。思ったとおりの。まあ、いまの天龍源一郎だと思います」
——最後にファンに焼き付ける姿がショートタイツというのは素晴らしいプレゼントだったと思います。
天龍「そうですか(苦笑)。いや、あのロングガウンがね、初めて着たロングガウンだったしね。そういう意味では、先祖がえりと言うんですか? 昔の天龍源一郎に戻ってやりたいと思ったけど……。チェッ!(舌打ちして)。いかんせん、IWGPチャンピオンは、けっこうなモンですよ。ハイ。なかなかのモノでしたよ(ニヤリ)」
——あのガウンはデビュー戦と一緒ですか?
天龍「ハイ。デビュー戦と一緒ですね」
——天龍選手を介錯したオカダ選手への言葉はありますか?
天龍「いや、何もないっすよ。このまま伸びて行って、プロレス界を引っ張っていってほしいというのが、俺の希望ですよね」
——テンカウントを聞いている瞬間の気持ちは?
天龍「う〜ん。意外と“無”でしたね。この場は二度とないんだな、というそんな気持ちでした。ま、これからおいおい、いろんな時間ができてくると、考えることもあると思いますけど、いまはホントにオカダ・カズチカと闘いを終えた、というだけですね」
——引退試合が終わったばかりですけど、これからに関しては何か考えてますか?
天龍「いや〜、何も考えてないですよ。いや、ホントに……。まあ、答えがあるとしたら、ビールでも飲みますか?(ニッコリ)」
※報道陣・笑。
※目の前のスーパードライを手にして。
天龍「これはね、俺が(阿修羅)原とやり始めたときに、一番最初に世の中に出たビールだったんですよね。美味しかったですねえ。あの頃と同じテイストがするか? ちょっと失礼して……」
※一口ビールを飲み干して、
天龍「ウン。シャープですね(ニッコリ)」
——スタン・ハンセン、テリー・ファンクとはどういった話を?
天龍「いや、ただ、ご苦労さん、と言われましたね。まあ、彼たちも先に同じ経験をしてますから」
——(娘の嶋田)紋奈代表とは、最後、どんな会話があった?
天龍「いや〜、彼女にはね、この両国をとってくれたりとか、5,6人でこれだけの大観衆を集めてくれて、わが娘ながら、男前ですよ」
——自分の家族のもとに戻るというのはどんな感覚?
天龍「いや〜、ちょっとコチラから一方的に言うわけにいかないから、後で相談します(笑)」
徳光アナ「天龍さん、目を閉じるとどんなレスラーが頭に思い浮かびますか?」
天龍「あ、そうですね。やっぱり、う〜ん……。今日、来てくれたファンクスもそうですけど、やっぱり(ジャイアント)馬場さんもそうですし、(ジャンボ)鶴田選手もそうですし。志半ばでね、ボクのように最後まできなかった方たちのことは思い出します。俺はまがりなりにも、自分の足で立って、みんなから拍手をもらって(リングを)下りれただけでも、幸せだったと思います」
徳光アナ「もの凄い大観衆でしたね」
天龍「いや、ありがたいことです。もう一言、ありがたい、と思うだけでしたね。ホントに、ありがとうございます、という……簡単な言葉ですけど、それに尽きますね」
徳光アナ「今日、来た人たちはみんな天龍さんにありがとうございます、という気持ちでは?」
天龍「いや、ボクのほうはノシを付けても足りないぐらいだと思います(笑)」
——一番、印象に残っている試合は?
天龍「いや、もういまとなったら、すべてが思い出です」
——故郷の福井に関しては?
天龍「いや、福井からみなさん、応援に来てくれてますし。生まれ故郷ですからね。忘れることはないと思います。この土着性を生んでくれたのが福井ですからね」
徳光アナ「奥さんに何か一言はないですか?」
天龍「まあ、言えるとしたら、こんな天龍源一郎を支えてくれて、押し上げてくれたという感謝の気持ちですね。よろしいですか? ありがとうございました、どうも!」
※報道陣から大拍手