3月28日、東京・kino cinema新宿での映画『アイアンクロー』特別先行上映会に先駆けて、棚橋弘至とお笑い芸人の有田哲平(くりぃむしちゅー)さんによるトークイベントが行われた。
撮影/山本正二
テキスト/市川 亨
同映画はアイアンクローを得意技とし、1960~70年代に日本でもアントニオ猪木、ジャイアント馬場らと激闘を展開した、“鉄の爪”フリッツ・フォン・エリック一家の物語。それぞれプロレスラーとして活躍した5人の息子たちが辿った数奇な道のりをドラマチックに描いた作品となっている。
MCの清野茂樹アナウンサーの進行でトークはスタート。まず、映画の感想から始まり、棚橋はレスラーらしく俳優の肉体に着目した見どころを語り、熱狂的なプロレスファンでもある有田さんはマニアックな視点からチェックポイントを挙げた。
棚橋「主演のザック・エフロン(ケビン・フォン・エリック役)がひたすらカッコいいです! プロレスラー役となると、俳優さんだと若干、細いかなっていう、細マッチョのイメージがありますけど、この映画に出ている俳優さんは筋肉量が十分ついている。
役作りのために相当トレーニング、食事に気をつけていたんじゃないかなと思います。この映画はプロレスを真正面から捉えて、練習、精神的な負担、ストレスをレスラーがどう感じているかとか、凄く細かいところまで描いてくれている。現役レスラーの気持ちをみなさんにシェアできるんじゃないかと思います」
有田「ところどころでプロレスファンならうなってしまうような、“あれ?この人あれだよね?”とか“これはあの選手のことだよね?”とか、間違いなくニヤニヤしてしまう場面がたくさん出てくるので、そういうところも楽しんでほしいですね。
試合のシーンもたくさん出てきて、試合の感じもいまの最先端の感じというよりは、その当時の雰囲気で懐かしくていいです。監督さんも含めて細かいディティールにこだわっていて、エリック一家だけじゃなくてちゃんと対戦相手も似せているし、ベルトの形とか会場の様子とか凄くこだわっていると思います」
続いて話題はエリック一家のレスラーも活躍した1970~80年代のアメリカンプロレスについて。棚橋はアメリカンプロレスから受けた影響と、エリック一家に受け継がれる得意技・アイアンクローについて、引退した中西学さんにまつわる逸話(!?)を披露。また、有田さんは当時、印象に残っているレスラーについて語った。
棚橋「どんどんとプロレス技が厳しく、激しくなっていくのをファンのときから見ていたので、(デビューしてから)レスリングに戻していきたいなっていうタイプで、若々しくないファイトスタイルをずっと続けていたら、ブーイングが来まして(苦笑)。ちなみにフライング・フォアアームはティト・サンタナ選手を(参考にした)。そういうオールドスクールのプロレスも勉強して、勉強していったら、なぜかこうなってしまった(笑)。
アイアンクローは中西さんから食らいました(場内笑い)。一時期凄く多用していて、中西さんは手がめちゃくちゃデカくて技としては合ってたんですけど、途中からアレンジをし出して。アイアンクローしながら大外刈りをするっていう。ただ、中西さんは(技を)使い続けないという悪いところがあって、飽きちゃったんですかね(笑)」
有田「ボクが見ていた頃の世界最高のベルト、その当時、象徴だったのがNWA世界ヘビー級のベルト。それを持っていたリック・フレアーが全世界を回って、各テリトリーの強い奴をおちょくって、勝ったか負けたかわからない感じで勝って、ベルトを死守していくみたいな。
その土地、土地のヒーローは勝つんだけど、反則勝ちだからフレアーが防衛とか腹が立つ存在でしたよね。でもいま思うと、プロだったんだなって」
今作のプロレスシーンの監修は、エリック一家と同様に二世レスラーで、かつて新日本に来日経験もあるチャボ・ゲレロ・ジュニアが務めている。
棚橋はレスラー目線から各俳優のプロレスシーンにおける動きをチェックし、「受け身もしっかりと取れていて、ロックアップの足の運び、腕の取り方、ヘッドロックのときの足の開き方とか細かいところまでできていた。チャボ、やりますよ」と太鼓判を押すとともにチャボの名コーチぶりを称えた。
日本マット界の黎明期に活躍した伝説のレスラーであるフリッツ・フォン・エリックは、かつてテキサス州を拠点とした団体『WCCW』を率いていた。同じく新日本プロレス社長として“一国一城の主”の立場にある棚橋は、現在の新日本の状況を分析した上での未来図を語り、有田さんからの質問にも答えていった。
棚橋「いま人気選手が多いけど、ちょっと横並びの感があるんですよね。内藤、SANADAあたりが抜けているけど、令和の海野、辻、上村、成田あたりから誰かボーンと抜けてほしいなって。それで内藤より上に行ったところに、ボクがバァッと行きますんで(笑)。社長になったときに思ったのは、もう一回、新日本プロレスを上げたいなという野心がある。もう一回、皆さんにプロレスを楽しんでもらえるような状況を作る、それをレスラーとしても社長としても両方でやります」
有田「オカダ選手がいなくなったり、オスプレイ選手がいなくなったり、看板選手がいなくなった途端の社長就任で、これからどうしていくんですか?」
棚橋「ここ何カ月かの数字は下がるかもしれないんですけど、新日本プロレスの歴史として上が抜けたら誰かが(出て来る)。三銃士が抜けたら第三世代、そして棚橋、中邑が来て、内藤、オカダが来てって、歴史がちゃんと証明している。オカダ、オスプレイのポジションがいま空いている状態なので、ここに誰が入って来るかを楽しみに見てほしいです」
有田「いまはまだ引き継ぎとかもあるかもしれないですけど、いつ頃から“棚橋・新日本”が見られそうですか?」
棚橋「いま社長も全力勉強中で、自分なりの社長像を見つけようと思っていて。外部の渉外とかも自分で行こうかなと。日本一動く、プロモーションをする社長になろうと。その方がいろいろと契約が成立する可能性も増えますので」
有田「どれぐらいの時期から見られそうですか? 『G1』ぐらい、秋ぐらい?」
棚橋「肉体が整えば(笑)」
有田「早く棚橋カラーの新日本プロレス、変わったなぁっていうのが見たいですね」
棚橋「それを自分の中でしっかりと見つけて、皆さんに見てもらいたいと思います」
最後に2人は「エリック一家が悲劇の一家と言われているけど、本当に悲劇かどうかは皆さんで判断してほしい」(棚橋)「笑って、楽しい映画かどうかは分からないけど、プロレスファンなら絶対に見てほしい」(有田)とあらためて見どころを語り、多岐にわたる話題で盛り上がった約30分のトークショーを締めた。
※映画『アイアンクロー』は4月5日(金)からTOHOシネマズ日比谷ほかで全国ロードショー。
※作品の詳細情報は公式サイト(https://ironclaw.jp/)まで。
Ⓒ2023 House Claw Rights LLC;Claw Film LLC;British Broadcasting Corporation.ALL Rights Reserved.
配給:キノフィルムズ