大好評!ゲームデザイナーの野中大三さんによるプロレスコラム!
■第73回「ジャンル確立の20年」
みなさん、こんにちは!
新日本プロレスマットは新陳代謝の真っ最中。
去る選手のラストマッチと同時に新参戦選手のデビューマッチが行われ、リングの景色が変わろうとしています。
初参戦でタイトルを獲得したニック・ネメス選手とマット・リドル選手が今後どんな活躍を見せてくれるか楽しみですし、3月6日から開幕する『NEW JAPAN CUP 2024』ではジャック・ペリー選手が初参戦となります。初参戦で公式トーナメントエントリーというのは意表を突かれました。
『NEW JAPAN CUP』は今年20回目。すっかり春の名物シリーズとして定着しました。
変化の激しいプロレス界で20年間継続していることは素晴らしいことです。
リング内外の様々な変化にもまれながら20年間という歴史を紡いでこれた理由はなにか?
今回は『NEW JAPAN CUP』継続の秘密とそこから見えてくるトーナメント攻略のカギについてゲーム的に論じていきましょう
それでは、ゲーム的プロレス論、PUSH START!
■春の定番トーナメント
『NEW JAPAN CUP』は2005年に初開催されて以来、毎年開催され今年で20回目。2006年から優勝者にタイトル挑戦権が与えられるシステムとなり、今回もまた優勝者は4.6両国大会でIWGP世界ヘビー級タイトル戦への挑戦が決定しています。
参加選手は昨年から4枠増えて28選手。優勝経験のあるSANADA選手、後藤選手、EVIL選手、ザック選手がシード枠に入りました。そして、これも例年通りIWGP世界ヘビー級王者の内藤選手の参戦はありません。まさしく挑戦者決定トーナメント。
プロレス界でシングルトーナメントは珍しいものではありません。
全日本プロレスの王道トーナメント、DDTのKING OF DDTトーナメント、プロレスリングZERO1の天下一Jrトーナメント、スターダムのシンデレラトーナメントに、東京女子プロレスの東京プリンセスカップと、プロレスファンはトーナメントが大好きです。
しかし、20年もの間、休むことなく継続できているトーナメントは多くありません。
継続開催できるのは団体の運営力、選手層の厚さも理由として挙げられますが、最たる理由はファンに支持されていることです。
ヘビー級のシングル戦線ではベルトを巡るタイトル戦線、さらに一大ブランドの『G1 CLIMAX』があります。
それらと共存しながら20年間継続できたのはジャンル違いのブランド内ブランドとして確立できた証明です。
新日本プロレス内にそれまであった本流とは異なる別ジャンルの闘いを確立した。
これこそが『NEW JAPAN CUP』の成果なのです。
■ジャンル確立の難しさ
ゲーム業界でも本流と異なるジャンルのタイトルやシリーズは存在します。
ゲームはジャンルありきのもの。たとえば、マリオブラザーズと言えはアクションゲームですが、そのマリオでRPGを作ってみようという発想で生まれたのがマリオRPGシリーズです。シリーズが継続され、今年もリメイク作が発売されるシリーズとして定着しました。別ジャンルを確立できた好例です。
他に例を挙げるとドラゴンクエストモンスターズシリーズ、グランブルーファンタジーヴァーサスなどでしょう。
桃太郎電鉄のように本家を大きく超える成長を遂げた作品もあります。
しかし、こういった試みはあまりうまく行きません。1作品として成功を収めることはできても長期的な展開をできているものはごくわずか、というのが現実です。
ジャンル違いのスピンアウト作品はすでに一定数のユーザー数がいる状態でのリリースとなるため、完全新作と比べると、下駄をはいた状態での出発となるためスタートは順調に行きます。1作目は計画本数もクリアして黒字ビジネスになり、早速2作目のプロジェクトがスタートします。
しかし、ここからがうまくいかない。
本家とのすみわけが課題として浮上するのです。
本家の要素を別ジャンルにアレンジするのがスピンアウト作品の制作方針ですが、同一ユーザーを狙うがあまり本家と似たような作品になってしまったり、本家のイメージに反する作品になってしまうのです。
ゲーム会社の経営方針でいうところの“選択と集中”によって継続されない判断が下りてしまいがちなのです。ジャンル違いのブランドを築くのは本当に難しいことです。
■『NEW JAPAN CUP』はすみわけの成功事例
話題を『NEW JAPAN CUP』に戻しましょう。2005年にヘビー級トーナメントとしてスタートした同大会はまさにジャンル違いの新シリーズ。このシリーズが「G1だけでいいじゃん」「ベルトの価値とどっちが上かわからない」といった批判や疑問を生むことなく継続できているのはすみわけが成功しているからです。
・挑戦者決定戦という価値設定
・新日本ヘビー級戦線で唯一のノックダウン方式
この2つのシステムこそが『NEW JAPAN CUP』を『NEW JAPAN CUP』として確立しえた重要要素です。
優勝者にベルトを与えたり、敗者復活ルールを採用するといったことをしないのが成功に導いたのです。
出場する選手もこの方式を理解したうえで対策をしています。
一発勝負のトーナメントであることを活かして新技を投入する選手が勝ち進むことが多く、ベルト奪取まで成し遂げた2020年優勝のEVIL選手、2023年優勝のSANADAはタイトル戦まで見据えた戦略を練り上げていました。
システムが確立されているからこそ参戦選手もそのシステムを前提といた闘い方をする。
このシリーズでしか見られない闘いがあるのが『NEW JAPAN CUP』の魅力なのです。
■注目選手と優勝予想
今大会の注目選手と優勝予想を挙げてみましょう。
まず注目選手ですが、4名います。
1人目は辻陽太選手。
札幌大会で上村選手との抗争に決着をつけ、次のステップを狙う状況。コンディションもメンタルも今一番期待できる選手です。オリジナル技も多く、今大会向けの新ムーブを用意していそうです。
2人目は上村優也選手。
辻選手の次に挙げるのは意外かと思われるでしょうが、負けからはじまるのがプロレスの面白いところ。
敗戦直後に再起を誓うコメントをしていたところから気持ちの強さがうかがえます。逆境から立ち上がるプロレスラーの姿が今一番似合うのが上村選手です。
3人目はTJP選手。
ヘビー級挑戦となるこのトーナメントで対ヘビー級対策を準備していることでしょう。
さらにほとんどの選手がシングル初対決になることも事前準備が効果を発揮しやすい状況です。
4人目はザック・セイバーJr選手。
過去2度優勝。そして今大会への意気込みの真っ先に口にしています。トーナメント制覇だけではなくIWGP世界ヘビー奪取を視野に入れていることも期待できるポイントです。
なにより、2023年のTV選手権防衛ロードで見せた一発勝負の強さが際立っています。
この4選手から優勝予想と行きましょう。
僕が予想するのは、ズバリ上村優也選手です。辻選手とのライバル抗争に敗れて一歩後退しましたが、ポテンシャルはこんなものではないでしょう。
帰国以来、試合運びで変化を見せているものの、新技や新ムーブはほぼなく、フィニッシャーもヤングライオン時代とおなじ閂スープレックスを使い続けています。新たな技、コンビネーションを加える余地は十分にあります。アップデートを果たしてトーナメントを一気に駆け抜けると予想します。
20年を迎えてますます過熱する『NEW JAPAN CUP』。一発勝負の緊迫感を楽しみましょう!
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■『旗揚げ記念日』
3月6日(水) 17:00開場/18:30開始
東京・大田区総合体育館
☆チケット情報 ☆対戦カード
※「ロイヤルシート」は完売、「アリーナ席」「1FスタンドA」「2FスタンドC」は残りわずかとなりました。
■野中大三(のなかだいぞう)
dotswreslerアーティスト、コラムニスト
プロレスラーをドット絵で表現するdotswrestlerをTwitterで公開中。
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●新日本プロレスメールマガジンにてコラム「今週の一点集中」連載中
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