12月19日、ブシロード本社にて、新日本プロレスの木谷高明会長と桜庭和志選手が緊急会見を開き、1月4日東京ドーム大会の中邑vs桜庭戦において、木谷会長が桜庭選手のセコンドにつくことを表明。桜庭選手も同席したうえで、その真意を語った。また、この会見を受けて、菅林社長も緊急コメントを発表した。
■木谷会長のコメント
木谷会長「え〜、これからですね。私が雑誌『KAMINOGE』誌上で、私が出させて頂いた所信表明(1.4東京ドーム大会で桜庭和志選手のセコンドに就きたい旨を表明したファックス)に関する、記者会見を行わせていただきます。
所信表明に関しては、ご覧になって頂いたかと思いますが、そこに書いているとおりでございます。詳しくお話させていただきますと、正直に申しまして、私は70年代は本当に猪木プロレスの大ファンでした。80年代は金曜夜8時のタイガーさん、ハンセンさん、藤波さん、長州さんの時代のファンでした。90年代はドームプロレスを中心とした、大きな空間での力強いプロレスのファンで、一番好きだったのは橋本真也選手でした。2000年代もドームを中心に観に行っていたんですが、じつはどちらかと言うと、PRIDEのほうがファンでした。
そんな中、桜庭さんの活躍をずっと追い続けていた中で、この所信表明にも書いているんですが、2005年の東京ドーム大会の『アルティメット・クラッシュ』(新日本で行われた総合格闘技の試合)ですね。これを観に行ったとき、正直に申し上げます、途中で帰りました。最後までドーム大会を見ないで。それは、あまりにも“格闘技もどき”だったからです。
ですから、8月の『G1 CLIMAX』決勝戦のあとの、菅林社長のコメント、“格闘技もどき”あるいは“中途半端なプロレス”。とくに“格闘技もどき”の部分。これは僕に言わせると、天にツバを吐くような発言。要するに、「自分のことを言ってるんじゃないの?」と。桜庭さんは全然、関係ないんじゃないの、と。その部分で、正直に言って、その日からずっとひっかかるものがありまして……。
これはずっと思っていたんですけど、今回はどんな内容、結果になるかわかりませんが、ここは、桜庭さんの側に、セコンドに付いて、世紀の一戦を見届けたい、応援したい、というのを会長という立場はあるんですが……ちょっと個人としての気持ちのほうが優先してしまいました。
まぁ、中邑選手もじつは大好きな選手ですし。けっこう一緒に……共通の友人がいたりするもので、飲みに行ったりして、長時間話したこともあります。彼自身、いまのプロレススタイルも受けていますが、片方で強さの追求もしている選手ですので。好きな選手なんですが、ここはやはり、自分の感情にちょっと素直に、立場はあるんですが、『ぜひ桜庭選手のセコンドにつかせて頂きたい』ということで、新日本のほうにも了承は得ています。そのへんの裏どりに関しては、このあと菅林社長のほうに確認してもらえれば、と。また、桜庭選手にもお願いして、基本は内諾を得ている次第であります」
■桜庭和志選手のコメント
「え〜と。ま、試合に関しては、選手同士が試合することなので。僕は、毎回いつもそうなんですけど、セコンドは誰でもいいという話はするんですけど。木谷さんがついてくれるということで。『新日本プロレスさんのほうは大丈夫なのか?』というのが気になったんですけど、さっき裏で話を聞いたら、新日本さんのほうも大丈夫だということで。僕は木谷さんの気持ちはうれしいことなので、セコンドについて頂けるんであれば、全然大丈夫なので、お願いしたいところです。…………(長い沈黙)。すいません! やっぱり、もう一個、条件、いいですか? え〜と、息子が『ヴァンガード』にハマってまして(笑)」
木谷会長「小学校6年生でしたっけ?」
桜庭「ええ。小学校6年の息子が。やっぱり、条件を付けさせてもらって、『ヴァンガード』のカードをください。……タダで!」
木谷会長「ま、お金をとったら、ヒドい話になりますけど(笑)。
桜庭「息子が一つ買った、ボックスってヤツがほしいんですけど」
木谷会長「ま、そんな話はお聞きしてたんで……、ボックス含めての盛り合わせをここに用意してあるんですけど(紙袋を取り出して)。……あの、コレ、本当に偶然なんですけど、今回の『ヴァンガード』12月8日に出た副題が、“竜騎激突”なんですよ。まさに今回の試合は、“竜騎激突”かなって。中邑選手はイメージ的にクネクネしてるんで、竜かなと。そして、桜庭選手が騎かな、と。コレは、仕込みでもなんでもなくてイメージがあっているなと。この“竜騎激突”の闘いを桜庭さんサイドに立って、死ぬ気で応援したいな、と。なんで、ぜひ受け取ってください」
■質疑応答
——セコンドというのは具体的にはどういうかたち? キッダーニ男爵は登場するんですか?
木谷会長「あの〜。ま、ステージから一緒に、うしろに並んで登場する。僕だけじゃないとは思いますが、登場する予定なんですが。そういうアイデアも出たんですけど、新日本のリングでは、(キッダーニ男爵は)基本やらないつもりですので。お面を付けるかわかりませんが、基本的には、桜庭さんスタイルで。Tシャツ着て、ズボンかジャージかはわかりませんが、バケツにタオルをかけて、入場したいと思ってます」
——基本的に、新日本に敵対する人に、新日本のオーナーがセコンドに就くというのは、世間一般の人にはよくわからないと思うんですけど。
木谷会長「うーん……そうですね」
桜庭「僕はセコンドといっても、いつも若い選手についてもらうんですけど、若い選手の言うことは聞かないんですけど、やっぱ年上の言うことは聞くので(笑)。だから、いつもシモさん(プロ野球・下柳剛選手)とかについてもらうと。若い選手のアドバイスには、『それは違うだろ〜』と思いながらやってるんですけど、シモさんに言われると、『ハイ! わかりました』って感じで聞く感じなんで。なんで、木谷さんについてもらったら、適切なアドバイスをもらえれば、と。」
木谷会長「普通の会社だったら、よくわからないと思います。ただ、仮にコレ新日本を“スポーツエンターテインメント”という言い方をするとすると、“エンターテインメント”の部分を取り出すと、僕は会社よりも何よりもおもしろいことをいままで優先させてきたんで。非常にワガママかもしれませんけど、自分がやりたいからやるんです。自分がそれをやることで、この大会自体がおもしろくなるんじゃないかと思ったからです。
そうですねぇ……。ちょっと、なんのことを言ってるかわからないかもしれないですけど、もっともっと素晴らしい“アート”にしたいんですよ。重要なのは、大会というか、イベント、もっと小さくすると試合なんですが、そこでどれだけ生き様がぶつかり合っているか、だと思うんですよね。今回、中邑選手と桜庭選手はおたがいの生き様をぶつけ合うわけなんで。僕も、僕の生き様も、リングの中にはまったく入れませんが、外側から生き様をぶつけたいと思ってます。
……だから、桜庭選手が柴田選手と二人で敵地に乗り込んできて、ある意味、孤軍奮闘をしてきた。その生き様に、やはり共感して、僕自身が心を動かされた。もとから、心はあったんですけど、それが増幅して、ついに行動として動いてしてしまった、と」
——将来的には、新日本のビンス・マクマホンになる?
木谷会長「いや、それは考えていないです。あくまでも僕の本業はカードゲームなんで(笑)。申し訳ないですけど、ファンとしての気持ちがかなり。ま、桜庭選手のファンだの部分とか、プロレスファンの部分、場合によっては総合格闘技のファンという部分が、混ざり合って、今回の行動に出てます。べつにリング上にパフォーマンスしたいわけでもなんでもない。
過去の行動を観ていると、そう見えちゃうかもしれないけど(笑)。アレはいきがかり上、そうならざるを得なかった。ZERO1さんのリングでは、スタナーをくらって、曙さんに上に乗られたこともありますが、あんな目には二度とあいたくないんで。あの、ビンスのことは凄く尊敬してますよ? これは、企業経営者として、エンターテイナーとしては尊敬しています。でも、同じことをやろうとはまったく思っていないです」
——プロレスのセコンドとなると、CHAOSなんかは悪いことをやって、試合を妨害したりしますけど、そういうことは全然考えてない?
木谷会長「それは……(笑)。世紀の一戦ですよ? それはもうあっちゃいけないですよね。ええ」
——では、具体的に、セコンドとしてはどんな業務を?
木谷会長「そこは不遜ながら、少し僕の知っているか限りで、アドバイスさせてもらったりとか。ま、あと細かいケアですね。ケアなんかも含めてやりたいなと思ってますね」
桜庭「やっぱ……もう一個、条件出していいですか?(笑)。レフェリーの見ていないところで、相手の脚、すくってもらっていいですか?(笑)」
木谷「えっ……。あの、検討させて頂きます。レフェリーの見ていないところって、シングルマッチではなかなか難しいですよね。じゃあ、気を散らすようなことなら」
桜庭「あ、お願いします(笑)」
木谷会長「いきなりコーナーでお面を被っているとか。ま、セコンドとして最大限の働きをしたいなと思ってます」
——セコンドにつくということは、積極的に試合に参加されるということなので、CHAOS側のセコンドに襲われるという心配は?
木谷会長「え? ああ、セコンドのね? 中邑選手はどう考えても襲って来ないですよね、試合で一生懸命ですから。いや、それはCHAOSのセコンドに殴られたら、しゃあないですよねぇ。覚悟の上ですよねぇ……。でも、さすがにそれはないでしょう」
——でも、レフェリーの注意を引いてたら、ジャマだから、セコンドに襲われますよ。
木谷会長「そっかあ……。契約更改すでに終わった選手は、セコンドにつけないように言っておいたほうがいいですね。契約が終わったから、次は1年後だから、問題ないだろう、と思われたらイヤですね(笑)。ちょっとギャグになってますけど」
——あと、普通にこの会見は、新日本のプロレスラーから反発は出てくると思いますが、それに対しては?
木谷会長「う〜〜ん……そうですね。でも、みんな自分の試合のことで頭がいっぱいじゃないですか? 目先の。でも、1.4が終わってからは、たしかにあるかもしれないですね。あと、対戦相手の中邑選手は、より燃えるんじゃないですかね? クネクネ度が増すんじゃないかなって思いますけど。まぁ、アレですよ、余計なことを心配するヒマあったら、まずは自分の試合のことを考えてください、と。まずは。大舞台ですよ。
さっき数字を見ましたけど、いまのままいくと動員数も8年ぶりぐらいの動員数になろうとしてますから。それだけ注目を集めてるんで、その注目の集まるリングで、それぞれのレスラーは自分の対戦相手だけ、考えてやってほしいです。余計なこと心配しなくていいです、と。だから、僕も……本当を言えば、会場でゆっくり観たかったです。でも、それを何倍も上回っちゃったんで。本当は親しい人と、ワイワイ応援しながら観たかった。でも、その何倍も桜庭さんとの勝負を共有したい、という気持ちのほうが高かった。セコンドにつく自分がそう思ってるくらいなんで、レスラーは自分のことを考えてください」
——桜庭選手、名古屋大会の試合後に、中邑選手に、握手を求めたあとに、ピストルのポーズをしてましたが、あれはどういう意図で。可能であればうかがいたいです。
桜庭「可能じゃないです(笑)。ご想像におまかせします」
木谷会長「最後に、私のほうからですね。ちょっと中邑選手、あと新日本プロレスには、僕個人としての行動で、ご迷惑もお掛けしてる部分はあると思います。その部分を押し切って、今回は桜庭さんをぜひ応援したい、ということでセコンドを買って出るんで。内容、結果次第では、キッチリとケジメはつけたいと、そういう覚悟で望む所存です。だからもう、絶対に勝ってほしいな、と思ってます」
桜庭「……えっ? 負けてしまったら、僕のせいってことですか?」
木谷会長「いや! まぁ、勝負は時の運です」
桜庭「ハイ」
——負けてしまったら、セコンドが悪いのでは?
木谷会長「えっ……。えええ!」
14時からの新日本プロレスリング株式会社木谷高明会長、桜庭和志選手の会見を受けて、新日本プロレスリング株式会社菅林直樹代表取締役社長が緊急会見を行なった。
■菅林社長のコメント
菅林「(木谷会長は桜庭和志選手の)セコンドに付かれるって件ですよね?」
——菅林社長が桜庭選手が参戦する際に「格闘技もどきのプロレスをやるつもりはない」という発言に対し、木谷会長はずっとひっかかっており、「それは天につばを吐く発言」だ、と仰ってました。
菅林「で、セコンドに付くんですよね?それは会長本人から訊いていますよ。もうそれはしょうがないことですよね。パワーバランスからNOとは言えない話ですから。以前、新日本プロレスの低迷時代は総合格闘技が一世風靡していたのは事実で、僕も会場に足を運んだことがあったし、(新日本の)選手が出ていたたこともあるのでわかります。その総合格闘技の人気の立役者が桜庭選手だったということももちろん知ってます。我々も当時は桜庭選手を応援してましたからね。それに柴田(勝頼)選手が新たな闘いを求めて外に出ていった勇気も、同じ社内に居たので知ってます。ただそういう低迷している時期にいま残っているレスラーやスタッフが歯を食いしばって再生することを目的、目標として、やっとここまで盛り返してきましたから。
僕は新日本プロレスの人間ですから、当然東京ドーム大会は桜庭選手、柴田選手ではなく、中邑選手、真壁選手を応援します。新日本プロレスのスタッフ全員も応援しますよ。会場を満員にして「新日本プロレスはここまで立ち直ったんだ」ということを、経営が苦しい時も総合格闘技が台頭していたときも、新日本プロレスリングを支えていてくれたファンと喜びを分かち合いたいですね。プロレスはあくまでリング上がすべて。私たちは闘えるワケではない。まぁ会長の思いはわからないわけではないですよ。ただ新日本のリングはそんなに簡単(に上がれるよう)なリングではないので。その考えはちょっと異質かな、って気がしますけどね」
——-当日はリングサイドで観戦しますか?
菅林「僕は大会運営責任者ですからね。(当日は)いろいろやることがたくさんあるんですよ(笑)。応援はしますよ、当然。応援はしますけど、リングサイドまで行く余裕はないですね(笑)」
■『WRESTLE KINGDOM 7 〜EVOLUTION〜 in 東京ドーム』
2013年1月4日(金)
東京・東京ドーム
15:30開場/17:00開始
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