5月30日、ドラディション後楽園ホールのメインイベントのリングに『BEST OF THE SUPER Jr.30』を終えたばかりのL・I・J、高橋ヒロムが登場。現IWGPジュニア王者として、日本のジュニアヘビー級の礎を築いた藤波辰爾との初対決に挑んだ。
撮影/山本正二
テキスト/小松伸太郎
ヒロムが今回組むのは初代IWGPジュニア王者の越中詩郎、そして第16代IWGPジュニア王者のAKIRAという歴代王者の二人。かつて平成維震軍として新日本のリングを席巻したレジェンドたちとトリオを結成する。
対する藤波は新日本の後輩である船木誠勝と、みちのくプロレスの新崎人生を引き連れての登場。新旧ジュニアの象徴同士が相まみえる豪華6人タッグマッチだ。
先発を買って出るヒロムに対して、藤波も呼応。試合はこの二人でスタートだ。まずはロックアップで組み合ったヒロムと藤波。ここはヒロムがコーナーに押し込むが、藤波が体勢を入れ替えてクリーンブレイクだ。
続いて藤波がヒロムのリストをキャッチ。さらにヘッドロックに移行していく。ヒロムも負けじとグラウンドで体勢を入れ替えてハンマーロック、ネックロックと仕掛けていくが、ここは藤波が立ち上がる。
藤波はブレイクすると見せかけてハンマーパンチで一撃。ならばとヒロムも逆水平チョップで応戦だ。それに対して藤波は元祖ドラゴン張り手を見舞っていく。ここで両軍、AKIRAと船木に交代だ。
同期同士の対戦となったAKIRAと船木だが、じっくりと腕の獲り合いを展開。そこから立ち上がると船木がショルダータックルでふっ飛ばしてみせる。続いては白い袴同士の越中と人生のマッチアップ。いきり立つ越中は人生のショルダータックルに合わせて早速ヒップアタックで一撃だ。
しかし、人生もリストを固めて自軍のコーナーに越中を連行。するとタッチを受けた船木がキックを連打だ。だが、越中も負けじと自軍のコーナーに船木を引きずり込んでAKIRAにタッチ。そのAKIRAに対して船木はキックを連打していくが、AKIRAもすぐに反撃してヒロムにタッチだ。
ヒロムは船木に対して串刺し式のラリアットから低空のドロップキックを炸裂させる。そして、船木のキックによる反撃を食らうもののチョップ合戦を展開。だが、船木のローキック連打からサッカーボールキックを胸板に食らってしまう。これでダウンしたヒロムに、交代した人生がスワンダイブ式のブレーンチョップ、ダイビングショルダータックルを連続で発射する。
さらに人生はヒロムの右腕を捕獲すると拝み渡りを仕掛ける。そうはさせじとヒロムも抵抗。逆に人生に右腕を掴むと、コーナーに上がって掟破りの逆拝み渡りだ。しかし、これは船木がロープを蹴って阻止。股間を強打してリングに転落してしまう。
ここでヒロムは越中にタッチ。しかし、人生はその越中を捕まえると拝み渡りを成功させる。しかし、越中は人生からタッチを受けた藤波がリングインしようとするとヒップバットを連発。そしてボディスラムで叩きつけて、AKIRAにタッチだ。
コーナートップに上がったAKIRAはムササビプレスを投下だ。これを不屈の闘魂で返して立ち上がった藤波。そこにヒロムがトラースキックを発射する。しかし、藤波はヒロムの蹴り足を見事にキャッチ。ドラゴンスクリューで切り返して見せる。
そして藤波はAKIRAを捕まえるとドラゴンバックブリーカーで一撃。最後はドラゴンスリーパーで絞め上げて、勝利を飾ったのだった。
試合後、ロープを挟んで藤波と視線を交わすヒロム。ゆっくりとリングに入ると、何やら言葉を交わして握手を求めるが、藤波はこれに応じなかった。ならばと引き返しかけたヒロムだが、リング下からマイクを持つと、「シングルやりましょう、藤波さん」とアピールだ。
これに対して藤波もマイクを持ち、エキサイトした声で「OK! 待ってろ、じゃあ! そのうちオマエにいい返事を返してやるよ!」と応答。これを聞いたヒロムは、「藤波さん、ありがとうございました! よろしくお願いします!」と返して引き上げていったのだった。
[第6試合 60分1本勝負]
〇藤波辰爾&船木誠勝&新崎人生(12分17秒 ドラゴンスリーパー)越中詩郎&高橋ヒロム&AKIRA ×
■試合後のコメント
●高橋ヒロムのコメント
「アァ、ビックリした。焦った。今日の6人タッグ、ただただ楽しかったよ。ファンに戻ったような楽しさだ。でも、俺にはそれしかなかった。それだけしか残らなかった。やっぱり藤波さんを6人タッグじゃ感じることはできませんでした。生意気なことを言っているのは百も承知です。でも、ああやってやっぱり凄いよね。まさかリング上であんなふうに言われるとは思わなかった。
やらざるを得ないでしょう。やるしかないでしょう。いつでもいいですよ。いつでもいい。今年でもいい。来年でもいい。再来年でもいい。藤波辰爾が俺に勝てる、そう思える時まで俺は待ってます。生意気なんでね! やっぱり俺は間違ってなかった。ジュニアの最初の人間を感じたい。ただそれだけです。藤波辰爾さん、本当にありがとうございます。心の底から尊敬しています。ただ、リング上は生意気なもんで、申し訳ございません」
※越中、AKIRAはノーコメント
●藤波辰爾のコメント
──ヒロム選手と初めて、時間はなかったですけど、触れ合った感触はいかがでしたでしょうか?
藤波「やっぱり体幹っていうのか、あれだけ動いていると俺なんかリング上の足が地に着かないような状況だったけど、そういう相手にせざるを得ないところはあったね。いい汗かいた」
──ああいう形でマイクを持つってかなり珍しいですけど。
藤波「そうですね。マイクは得意じゃないんだよね、あんまり滑舌良くないんで(笑)。でもね、いろんなファンがあれだけ要求っていうかね、やっぱり長くやっているもんだなって。長くやっているとなんか自分が今までに経験してない楽しさを味わせてくれるんで、今日の高橋ヒロムのこともこういう接点は本来はなかっただろうにね、1年も長くやっているからこういう闘いが。そういう部分では、それはいつかは引退は来るんでしょうけど、しばらく自分自身のために自分自身の夢の続きをもうちょっと見ていたい。
いろんなドラゴンスタジアムとかいろいろあって、今度は自分が若手を見ていきたい。その中でどういう選手が化けていくのかな? プロレスラーは不思議なもので、ちょっとしたタイミングで世にボーンと出ちゃう選手がいっぱいいるから。そういう選手のきっかけを作ってやりたい。真っ白な気持ちで若い選手を見たいというところでやっていきたいかなという。とにかく50周年が過ぎて、常にいろんなものをやりたい、ああいうものをやりたいとか、いろんなものが浮かんでくるんで」
──ヒロム選手とシングルも?
藤波「ねえ! 俺もお客さんの、どうしてもファンがあってのプロレスなんだけど、ファンのああいうのについポロッとね。明日とか言わんだろうなって(笑)。それは期限をね。シングルいいよ、受けてやるよっていう、どっかで自分で投げておかないと始まっていかない。だから、ドラゴンスタジアムもそう、これだけレスラーも夢見て入ってくるわけだから。ファンもこれだけ長い年月応援してくれる。ファンと一緒にもう一回盛り上がる材料を作ってあげたいかな。以上です」
※船木、人生はノーコメント