大好評!ゲームデザイナーの野中大三さんによるプロレスコラム! 今回は「SANADA、覚悟のフルリニューアル」
■第60回「魅せろ、SANADAのエッセンス」
みなさんこんにちは!
変わりましたね、景色。
そう、SANADA選手がオカダ選手を破り、悲願のIWGP世界ヘビー級王者となりました。IWGP世界ヘビーの象徴とも言えるオカダ選手から3カウントを取ってのベルト奪取。
「IWGPの景色を変える」を見事に有言実行して見せました。
めでたし、めでたし。
否!
違いますよ。めでたいことはめでたい。でもこれはゴールじゃなくてスタートです。
ここからが新しいIWGPの歴史がはじまるのです。
今回は王者となったSANADA選手がこれからやらなければならないことについてゲーム的に論じていきます。“ここまで”と“ここから”は求められることが全然違うのです。
それでは、ゲーム的プロレス論、PUSH START!
■変化は見せた。次に見せつけるのは……?
前回のコラムでも書きましたが、SANADA選手はリニューアルに成功しました。
現役生活16年、新日本プロレス歴7年で築いてきたいろんなものを捨て去り、たったの一か月でフルリニューアルし、頂点に登りつめました。
両国のオカダ選手戦の緊張感はすさまじいものがありました。
L・I・Jは抜けてしまい、見た目も大きく変えた。そう、もう後戻りできない、ここで取れなければ次いつチャンスが来るかわからない。いや、もうチャンスは来ないんじゃないか?
この緊張感のなか、結果は見事勝利。
CSテレ朝チャンネルでリアルタイム視聴していた僕は文字通りテレビに釘付けでした。
覚悟を決めて、有言実行を成し遂げる男のかっこよさ。痺れました。
景色を変えたのは成功。しかし、ファンが求めているのは景色が変わることだけではないです。
強くて魅力的なチャンピオンが見たいのです。
現時点のSANADA選手は魅力的です。ファンはすごく好きです。
しかし、ここまでは“挑戦者”のSANADA選手。
ベルトを取ってからは“王者”SANADA選手なのです。
王者に求められるのは変化ではありません。
王者に求められるものは、ずばり、本質。そう、“エッセンス”なのです。
■エッセンスなきものは長続きしない
ゲームの製作現場では「エッセンス」という単語がよく出てきます。
「そのタイトルのエッセンスはなんなのだ?」
「エッセンスを守りたいからこのシステムは変えない」
「ここにこのゲームのエッセンスがにじみ出てるよね」
といった具合に本当によく耳にします。
しかし、エッセンスを作るのはものすごく難しいです。
僕自身何十本もゲームを作ってきましたが、その中にエッセンスがあるものは果たして1本あるのかないのか、といったくらいです。
世に出ているゲームにエッセンスと呼ばれるものが認められるものは全体の10%未満でしょう。
例を挙げると、以下になります。
ポケモンシリーズの「多種多様なポケモンのゲット&バトル」を実現した収集、バトルシステム。
マインクラフトの「なんでも自由に作る」クラフトシステム。
スプラトゥーンのTPS×塗りつぶし陣取り遊びのナワバリバトル。
エッセンスは基幹となるゲームシステムではなく、コンセプトに近い概念です。
そのゲームに触れることでおもしろさが伝わり、そのゲームを構成するあらゆる要素がそのおもしろさを盛り上げるために機能している。エッセンスがあるゲームは完成度が高く、たくさん遊んでもなかなか飽きません。
それが優れたエッセンスを持つゲームの特徴です。
グラフィックやストーリー、出演している声優さんなどで話題や表面的な魅力を作ることはできますが、エッセンスには関係ありません。逆にエッセンスがしっかりあるゲームはグラフィック、音楽、果てはテーマを変えても高い完成度を保ちます。
それゆえ、エッセンスがあるゲームタイトルは続編を重ねることで制作者が磨きをかけ、おもしろさも完成度もどんどん高めていけるのです。
そしてエッセンスの弱いゲーム、ないゲームはすぐに飽きられてしまいシリーズにならず、終焉を迎えることになります。
ゲーム業界にシリーズタイトルや、どこかで見たようなクローンタイトルが多いのはこういった背景が理由なのです。
結論。エッセンスを作るのはすごく難しいのです。
■殻を破り捨てた自然体の魅力
王者となったSANADA選手にはエッセンスのある王者像を求められます。
愛を叫ぶ絶対的ベビーフェースの棚橋選手。
圧倒的強さでプロレス界を引っ張るオカダ選手。
何をするかわからない危なっかしさがある制御不能な内藤選手。
IWGP王者は全く一様ではありません。
それぞれがそれぞれのエッセンスを持ち、それが支持を集め、時代を作ってきました。
SANADA選手は自分しかないエッセンスを打ち出すことが求められているのです。
王者としてスタートしたばかりのSANADA選手ですが、何とも言えない頼もしさを感じませんか?
工夫して、努力して、背伸びをして、それでいてクールでどこか斜に構えた感のあったSANADA選手はもういません。攻めるときも受けるときも、そして試合後も、感情を隠すことなくストレートに出すSANADA選手は自然体と言うワードがしっくりきます。
これまでの溜め期間が長かったからこそ、自然体の姿に安心感を覚えるのでしょう。
自然体でプロレスに接し、活き活きとしたハリのある空気を出せるSANADA選手。
その根底には師匠が叫んだプロレスLOVEがあるのかもしれません。
ありのままのSANADA選手が描く新しい王者像にどんな色のエッセンスがあるのか、一緒に探してみましょう。
■野中大三(のなかだいぞう)
dotswreslerアーティスト、コラムニスト
プロレス観戦歴、ゲーム歴ともに38年。
プロレスラーをドット絵で表現するdotswrestlerをTwitterで公開中。
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