2月19日に開催された全日本プロレスの後楽園ホール大会に、新日本プロレスの選手たちが参戦。メインイベントでは永田裕志が宮原健斗を下し、史上最年長で三冠ヘビー級王座を獲得。日本のメジャー3団体のすべてでヘビー級のシングル王座を戴冠する“グランドスラム”も達成した。
■全日本プロレス『#ajpwエキサイトシリーズ2023 ~#ajpwプロレスの日MANIAx~』
2月19日(日)東京・後楽園ホール
●第2試合 20分1本勝負
スペシャル6人タッグマッチ
×花畑正男
本田竜輝
芦野祥太郎
(7分22秒 ジャーマンスープレックスホールド)
○マスター・ワト
田口隆祐
ヨシタツ
【試合経過】
昨年の4.16後楽園ホール「還暦祭」で合体を果たした全日本プロレスのヨシタツと、田口隆祐&マスター・ワトの6or9が今大会で再合体。69キングダムとして全日本のリングに登場する。対戦相手の芦野祥太郎&本田竜輝&花畑正男は元W-1勢で結成されているGUNGNIR OF ANARCHYだが、田口が序盤に捕まってしまう。しかし、回転地獄ケツで流れを変えた田口は、ヨシタツとの同期コンビによるサンドイッチケツを花畑に炸裂させる。最後はワトが花畑から3カウントを奪い、69キングダムが勝利を飾った。
●第3試合 20分1本勝負
スペシャル6人タッグマッチ
オスカー・ロイベ
綾部蓮
○石川修司
(8分14秒 ランニングニー→片エビ固め)
ブラックめんそーれ
矢野通
×大森隆男
【試合経過】
第3試合には昨年タッグとシングルで闘ってきた“北海道登別市観光大使”矢野通と“北海道函館市観光大使”ブラックめんそーれがついに北海道観光大使同士で合体。そこに大森隆男が加わったトリオが実現した。対するは身長195cmの石川修司に2mのJUST TAP OUTの綾部蓮と2m1cmのオスカー・ロイベの巨人トリオだ。例によって巨人トリオに対して及び腰の矢野だったが、石川相手にコーナーパット外しを披露するなど存在感をアピール。しかし、終盤にオスカーと綾部のダブルビッグブーツを食らい場外に転落。その間に大森が石川のランニングニーアタックで3カウントを奪われ、敗戦を喫した。
●第4試合 30分1本勝負
スペシャル6人タッグマッチ
斉藤レイ
斉藤ジュン
○諏訪魔
(9分28秒 バックドロップ→体固め)
藤田晃生
大岩陵平
×中島佑斗
【試合経過】
第4試合は新日本のリングでも成長著しい中島佑斗&大岩陵平&藤田晃生のヤングライオントリオが、諏訪魔&斉藤ジュン&斉藤レイの極悪軍団ブードゥー・マーダーズに挑む6人タッグだ。ヤングライオンの3人は諏訪魔たちがコールを受けているところに先制の奇襲を仕掛けるなど、果敢に立ち向かっていく。いずれも喧嘩腰で食らいついていき、終盤にはトレイン攻撃からの大岩と藤田のダブルドロップキック、さらに中島のミドルキックで諏訪魔をダウンさせるなど奮闘ぶりを見せた。しかし、諏訪魔に仕掛けた逆エビ固めを阻止されると、最後は中島がその諏訪魔のバックドロップに沈んでしまった。
●第5試合 30分1本勝負
シングルマッチ
×安齊勇馬
(10分31秒 逆片エビ固め)
○鷹木信悟
【試合経過】
第5試合には『KOPW 2023』保持者である鷹木信悟が、昨年の「東スポプロレス大賞」新人賞を受賞した期待の若手・安齋勇馬とシングルマッチで対戦。果敢に立ち向かってくる安齋のジャーマンスープレックスを食らったものの、龍魂ラリアット、至近距離からのヘッドバット、パンピングボンバーと容赦なく厳しい技で攻め立て、最後は逆片エビ固めでガッチリ締め上げて貫禄を示した。
●第6試合 30分1本勝負
タッグマッチ
野村直矢
○青柳優馬
(11分14秒 エンドゲーム)
×大森北斗
鈴木みのる
【試合経過】
先日の2.11大阪大会で成田蓮&エル・デスペラードとのトリオでNEVER 6人タッグ王者となったばかりの鈴木みのるだが、全日本のリングでは大森北斗と元ドラゴンゲートの土井成樹と合体して暴れ回っている。今回は北斗とのタッグで、青柳優馬&野村直矢の世界タッグ王者と対戦だ。鈴木は北斗と一緒に野村のヒザを狙って集中攻撃。試合を有利に進めるが、終盤に北斗との連携攻撃を阻まれると、最後は北斗が青柳のエンドゲームに屈した。試合後も怒りの収まらない鈴木は、客のイスを奪うと青柳と場外で対峙。イスを青柳の土手っ腹にぶち込んで、憂さ晴らしをしてから引き上げていった。
●第8試合 60分1本勝負
メインイベント 三冠ヘビー級選手権試合
<第68代王者>
×宮原健斗
(23分06秒 バックドロップホールド)
<挑戦者>
○永田裕志
※宮原が5度目の防衛に失敗。永田が第69代王者となる。
【試合経過】
昨年から全日本に参戦し、ついに2月4日の全日本八王子大会で三冠ヘビー級王者・宮原健斗に挑戦表明をした永田裕志。これまで新日本のIWGPヘビー級、ノアのGHCヘビー級を手にし、グランドスラムに王手をかけていた。2月19日は1954年に日本で初めてのプロレスの国際試合(力道山&木村政彦vsシャープ兄弟)が行なわれたことから「プロレスの日」とされるが、永田はその記念すべき日に、偉大な記録達成をかけて王道のリングに上がる。
ゴングが鳴ると、まずは組み合う両者だったが、ここはクリーンにブレイク。続いてリストの奪い合いから永田がヘッドロックに宮原を捕獲。しかし、宮原もヘッドシザースに切り返していく。これを脱出した永田はフロントネックロックへ。さらにヘッドロックに捕獲する。
続いてはお互いにビッグブーツを顔面にぶち込み一歩も譲らない。ならばと永田はローキック、張り手、ニーリフト、さらに背中へのサッカーボールキックと打撃攻勢。そして倒れた宮原を腕ひしぎ十字固めに捕まえた。
宮原がロープエスケープしてもなかなか手を離さない永田。レフェリーの再三にわたる注意に抗議していたが、その間に場外に逃れていた宮原が永田の足を引っ張って場外へ。永田は鉄柵に叩きつけられ、さらにエプロンに戻ったところをビッグブーツで一撃食らってしまう。
それでもロープを掴んで踏ん張る永田。エプロンで宮原をエルボー合戦に引きずり込み、その左腕を掴んでアームブリーカーだ。今度は永田が場外で攻勢に出る。宮原の左腕をアームブリーカー、ミドルキックで痛めつけていく。
続いて宮原をリングに戻した永田はチキンウィングアームロックから腕ひしぎ十字固めと手を緩めない。宮原が立ち上がるとアームブリーカーで追撃だ。さらにキックで痛めつけ、アームブリーカーに脇固め。立ち上がってくればミドルキックを胸板にぶち込み、エルボーも連打していく。
だが、宮原は続く永田のビッグブーツを避けるとそのヒザに低空のドロップキックで一撃。これで片ヒザを着いた永田の側頭部に続けてドロップキックを炸裂させる。さらに宮原はエプロンで永田を捕まえて、危険なドリル・ア・ホール・パイルドライバーだ。
この一撃でしばらく場外でダウンしていた永田だったが、宮原にヘッドバットで反撃。続けてカウンターで宮原を捕まえて、場外エクスプロイダーも決めてみせた。宮原をリングに戻した永田は串刺し式のビッグブーツで一撃加えてから、宮原をコーナーに上げる。狙うは雪崩式のエクスプロイダーだ。
これは宮原もエルボーを振るって抵抗。しかし永田も簡単には諦めない。頭突きを食らっても踏ん張って意地の雪崩式エクスプロイダーを決める。だが、宮原も立ち上がってジャーマンスープレックス。ならばと永田は大中西ジャーマンだ。これも立ち上がった宮原はブラックアウトを発射。永田もすぐさまエクスプロイダーでお返しして、両者ダウンという状況となった。
永田と宮原は起き上がるとエルボー合戦。ここを優勢に進めた永田は浴びせ蹴りで宮原をダウンさせると、串刺し式のニーアタックだ。だが、宮原はこれをキャッチ。パワーボムのような形で叩きつけてみせた。
そして永田に対してブラックアウトを2発連続で発射。倒れた永田が立ち上がるとシャットダウンスープレックス狙いだ。しかし、これを踏ん張った永田は逆に先程痛めつけていた宮原の左腕をキャッチ。そのまま腕固めに捕らえ、白目を剥いてダメージを与える。
だが、これを脱出した宮原は永田のアームブリーカーを食らいながらもブラックアウトからラリアットを2連発で反撃。さらに二段式ジャーマンスープレックスで追撃すると再びシャットダウンの体勢へ。
しかし、永田はこれも阻止。ブラックアウトを放ってきた宮原のスネに自らのキックを炸裂させて動きを止める。そして立ち上がると再びエルボー合戦だ。宮原のエルボーに押されブラックアウトを被弾した永田だったが、続く一撃は至近距離でキャッチ。リストクラッチ式エクスプロイダーで叩きつける。
そして、右のハイキックで宮原の側頭部を打ち抜くと、最後は必殺のバックドロップホールド。この一撃は宮原も返すことができず。3カウントを奪った永田が新三冠ヘビー級王者となった。
試合後、観客の声援に応えた永田。マイクを握り、「なんで? ここは全日本プロレスのリングだろ? 俺のホームみたいだ。それはさておき、三冠ベルト獲ったぞ!」と絶叫したが、そこに石川修司が姿を現し、リングに上がってきた。
石川「三冠、IWGP、GHC、全部獲った永田さん。チャンピオンって団体にとってどんな存在ですか? どんな存在ですか?」
永田「俺に言わせるのか? お前らのその悔しい気持ち、今ここでよく分かっているよ。悔しいだろ? 獲り返したいだろ? だから石川! 今、こうやって出てきたんだろ? 全部言っちまったか、俺が?」
石川「俺は今でも全盛期だと思ってやってるよ。永田さん、いや永田裕志、俺は今日までアンタが挑戦者、悔しかった。多分、お客さんもそうだったと思う。でも、今日のアンタは全盛期だったな。挑戦受けてくれるんだったら俺と勝負してくれよ!」
永田「大隅社長、よろしいですか? (※石川が去ると)いやあ、チャンピオンになった余韻を少しは味わいたかったんだけどな(笑)。まあしょうがないですね。これが三冠ベルトの重み。このベルトを巻いたからには、このリングをよりさらに面白くしていきますので。もし、この俺がこのベルトを巻いていることに思いっきり嫌悪感を持っている人間がいたら、ドンドン会場に来てブーブー言ってくれ。その他、この永田裕志、新日本プロレスの永田裕志がこのベルトを持って闘う姿が見たいという方は、より声援を送りにこれから会場に来てください。このベルトを持っている限りは、この全日本のリングを盛り上げます。どうもありがとうございました」
万雷の永田コールを全身で受け止めた永田は最後に、「どうもありがとう! 石川修司が今が全盛期って言ったが、全盛期はこっちのセリフだ! まだまだいくぞ! 1、2、3、ゼアッ!」と決めてプロレスの日の後楽園ホールを締めくくったのだった。
【試合後コメント】
永田「どうもありがとうございました」
──初めて挑戦した時とはベルトが変わっていますけど、初めて三冠を手にした感触はいかがですか?
永田「まあ後で改めて自分の試合を見ますけど、これだけの客が入った中で激しい闘いをして勝利できたこと、そしてこのベルトを獲ったことは改めて喜びはひとしおだし、大きな重責というものを既に感じています」
──グランドスラム達成という偉業もありました。
永田「そうですね。まあグランドスラム達成という実感がまだなんとも(笑)。これから多分、メディアの方からのいろんな取材や、そういう周りの反響を記事に書いてもらうことで徐々に分かってくると思います。ただ、31年になるプロレス人生の中で、新日本プロレスに留まることなく、全日本プロレス、ノアというリングに上がって、ただ荒らすだけではなく、ベルトを獲って、リーグ戦を獲って、その中でシリーズを盛り上げていく。新日本プロレスの中だけではなく、メジャーと言われる日本の各団体でそういう仕事をした実感はありますし、このベルトを獲ったということで改めて感じますしね、多分嬉しさはこれから出てくると思いますし、試合が終わって『やった!』と思ったら次に石川修司が来ましたしね。ここはやっぱり大きい選手がいますしね。宮原だって決して小さい選手じゃないし、それは1発1発の技を食らった中で強烈でしたしね。本当にジャーマンとかヒザ蹴りとか何発か入りましたけど、多分明日からまた今日のダメージが残って噛み噛みの自分になりそうです。今のうちだけかもしれないですね、ちゃんと喋れそうなのは」
──しかも三冠の記録で言えば、最年長戴冠記録とキャリア最長戴冠という記録があります。
永田「やっぱり最年長記録という部分で、偉大な天龍源一郎さんの記録を抜けたっていうのが。まあ、元々天龍さんの記録っていうのはIWGPの最年長記録を抜くっていうことに関しては、IWGPよりもさらに歳を重ねた天龍源一郎さんが獲ったベルトですから、その記録を抜いたっていうのは凄く大きな…。まあそう言われると喜びではありますしね。
天龍源一郎さんがあまり体調がよろしくない中で、最近は本当にほぼ音沙汰がなく、ニュースとかで情報が入ってくるんですけど、天龍さんの口から永田という言葉が全く出なくなってきた中で、数年前にどっかの雑誌のコラムで『永田は窓際だけど、あいつは要領がいいからどうのこうの』って、ちょっとコンビニで立ち読みした記憶がありましたけど。まあ天龍さんのべしゃりっていうのは耳に入ってくるものですから。永田は偉大な天龍さんの記録を抜きましたと、是非皆さんからご報告を。もしカチンと来たら、またどっかの雑誌でも週刊誌でも、老害のごとく永田をビシッと叱りつけてくれればと思います」
──20歳年下の脂の乗った宮原健斗に勝てた原動力は何だったんですか?
永田「やっぱり挑戦をなかなか認めず焦らしながらも、いろいろ彼の口の攻撃の1発1発の技というか、そういうものも強力でしたし、宮原ってどうもいけ好かねえ野郎だなって思いましたけど、試合を通じてやってみると不思議なもんで、俺も簡単に相手をいい試合してありがとうっていう気持ちになってしまうのは、もしかして年食ったからかもしれませんけど、そういう思いにしてくれた一人だし、本当に三冠王者…何回も三冠ベルトを獲ってこのベルトを守ってきただけあって素晴らしい選手だったし、ウチの選手にも負けてないと思いました」
──敵地と思えないぐらいの永田コールもありましたけど。
永田「どうでしょう? 本来全日本プロレスの熱烈ファンの皆様からの罵声とか、そういうものを想定していたんですけど、残念ながらなかなか新日本プロレスで永田のこういう晴れ舞台を見れないファンの人のもどかしさも、今日の観客動員に繋がったんじゃないかと思います。それは今日販売した、“THE BLUE JUSTICE 2023復刻Tシャツ”の売れ行きを見ても分かりますね」
──これから全日本を潤していくぞという形ですか?
永田「そうですね。ベルトを持った責任というのがありますね。やはりチャンピオンとしてこの団体を盛り上げることは、ベルトを持っている人間がやらなきゃいけないことですし、ただこれを面白いと思っている人間は全日本プロレスにいないと思うんで、じゃあ頑張ってくれよと。石川だろうがまだまだ後ろに控えているのはたくさんいるし、そういったことは嫌でもこのベルトを獲った瞬間から来てますけども、ただ今は本当にこのベルトを獲った喜びを噛み締めたいと思います。(※ベルト姿での写真撮影に応じながら)思い起こせば8年前、もう一つのメジャー団体のベルトを雪の中で写真を撮って、ちゃんと使ってくれたのは新日本プロレスだけだった(笑)。その記憶が蘇りましたね。だから今日のサービスショットは大きくお願いします。まあ今はよりネットメディア等もありますんで。以上です。どうもありがとうございました」
★この大会の詳細は全日本プロレスオフィシャルサイトでご確認下さい。