12月28日（水）、東京・両国国技館にて開催された『INOKI BOM-BA-YE × 巌流島 in 両国』のメインで、「新日本プロレス提供試合」として柴田勝頼とトム・ローラーが一騎打ちを行ない、マーティー浅見がレフェリーを務めた。

この一戦はUWFルール／30分1本勝負（ロストポイント形式。頭部への一切の攻撃は禁止）で実施。柴田がカード発表会見で「自分にしかできないやりかたでアントニオ猪木の弔いをさせていただきたい」「闘魂の火を消したくない」と闘志あふれるコメントを残せば、一方のローラーも前日会見で「私は柴田と闘うために何年も準備してきました」「私がプロレスラーになった理由も、柴田勝頼が復帰した理由も、明日の試合を見ればわかります」と、こちらも熱い意気込みを見せた。

そして迎えた大一番。まずは『ワールドプロレスリング』のテーマ曲である『ザ・スコアー』が流れ、そのあとに元・新日本の田中ケロリングアナウンサーの呼び込みで、ローラー、柴田の順で入場。

リングサイドでゲスト解説の棚橋弘至が見つめる中、試合開始のゴングが鳴ると、柴田とローラーは互いにローキックで牽制。緊張感あふれる攻防の中、柴田はローラーの蹴り足を捕らえ、4の字固めの体勢に。だが、ローラーが蹴り上げ、両者は一旦距離を取る。

続いてローラーはタックルを仕掛けるも、柴田は切り抜けてバックを取る。ここからバックのすばやい取り合いを経て、再び両者は離れる。今度は手四つの体勢から、柴田が巧みにローラーのリストを捕らえてキーロックへ。

これを脱出したローラーはアンクルホールドを狙うが、柴田も回避して腕を狙いにいく。ここからグラウンドでのせめぎ合いとなり、その流れで共に立ち上がる。そして柴田はローラーの腹部にパンチを入れてからバックを取り、グラウンドでの卍固めを狙う。

だが、ローラーはアンクルホールドで切り返す。これを柴田は回避すると、ローラーの足を取ってサソリ固めの体勢に。しかし、ローラーは脱出すると、変形の膝十字固めで捕獲。柴田はロープに逃れ、ロストポイント1。

続いて両者は猪木アリ状態に。柴田が下からキックを狙うと、ローラーも座り込む。すると柴田は立ち上がり、コーナーに上ってローラーのアリキックを回避。そして柴田は側転からローラーに絡みつくが、ローラーはアームロックで捕獲。柴田はロープにエスケープし、これでロストポイントは2に。

ここから激しい打撃戦に突入し、柴田はナックルパートを食らわせ、さらに串刺しのドロップキックを炸裂。だが、これはUWFルールで認められない攻撃のため、レフェリーがイエローカードを提示。

その直後にローラーは柴田を担ぎ上げてコーナーに勢いよく押し込むと、さらにそのままスパインバスターのようにマットに叩きつける。柴田はダウンカウント9で立ち上がるも、ロストポイントは3に。

さらにローラーは柴田に対し、キックの連発から飛び膝をお見舞い。そして飛びつきのフロントネックロックで捕獲。柴田は何とか切り抜けるも、すかさずローラーは三角締めに連携。そしてオモプラッタから、柴田の両手足を締め上げる複合関節技を決める。柴田は必死にロープに逃れるも、これでロストポイントは4。あと1ポイントで負けと、絶体絶命のピンチに追い込まれる。

勢いに乗るローラーは、続いて豪快なエクスプロイダーを炸裂。さらに掟破りのPKを狙うも、これを柴田は真っ向から受け止めると、担ぎ上げてデスバレーボムを炸裂。そしてPKを食らわせると、一気にスリーパーへ。

これをローラーが切り抜けようとすると、柴田は卍固めに移行。そのまま体勢は崩れるも、柴田がグラウンドで締め上げると、ローラーはたまらずギブアップ。柴田が見事な逆転勝利を収めた。

試合後、柴田はローラーと握手、さらに抱擁をかわして健闘を称え合う。そして猪木さんの実弟である猪木啓介氏から勝利者トロフィーを受け取った柴田は、猪木さんのファイティングポーズで記念撮影に収まってから、マイクを握る。

■柴田選手のマイクアピール

「ありがとー!!!!（場内拍手）。えー、今日はアントニオ猪木に呼ばれて、ここに来ました！（場内拍手）。俺、6年前、約6年前、この両国でほぼほぼ死にかけて。でも、こうやって同じ両国のメインに、戻ってくることができました！（場内拍手）。

元気があればなんでもできる、そのとおりだと思います！（場内拍手）。今日はありがとうございました！　そして、会長！　お疲れさまでございましたー!!!!（場内拍手）。あとは小川（直也）総監督が締めると思いますので、よろしくお願いします。以上！（場内拍手）」

そして柴田は花道を引き上げ、ステージで一礼し、両手を突き上げて場内の拍手に応えてからバックステージに。

このあと、リング上では猪木さんの追悼セレモニーを実施。田中リングアナが猪木さんの名前をコールすると、場内には猪木さんによる『道』の朗読が流れ、そして『炎のファイター INOKI-BOM-BA-YE』が響き渡る。

続いてリング上には今大会の出場選手たちや関係者が集合。最後は藤原喜明が音頭を取り、「来年もいい年でありますように！　1、2、3、ダー!!」と全員で右腕突き上げ、大会を締めくくった。

■『INOKI BOM-BA-YE × 巌流島 in 両国』
12月28日（水）両国国技館
・第10試合　新日本プロレス提供試合　30分一本勝負　UWFルール（頭部への一切の攻撃は禁止）　無差別級
○柴田勝頼（12分30秒 グラウンド卍固め）トム・ローラー●

■柴田選手バックステージコメント

――試合を終えて率直な感想をお願いします。

柴田　今日、アントニオ猪木に呼ばれた人間だけが来てると思うので……。俺には来ないっていう理由がまったく見当たらなかったので、今日ここで試合ができたことは自分にとってとても大きな意味があります。そして、さっきも言ったんだけど、自分は同じ両国でケガをして、だけどこうしてまた再びリングのど真ん中に戻ってくることができるって、それを一つ証明できたと思います。

――対戦相手のトム・ローラー選手の印象は？

柴田　最高でしたね。トム・ローラーでホントに良かったです。トム・ローラーとこのタイミング、この日、もう二度と来ないですよ、この日というのは。会長が亡くなられた後の第1回目の『INOKI BOM-BA-YE』、追悼大会っていうのはもう二度とないので、そこに自分がリングに上がってトム・ローラーと試合ができた。これがいま自分にできる“闘魂”だと思います。

――アントニオ猪木さんへメッセージをお願いします。

柴田　本当にお疲れ様でございました。あとは柴田がやります（キッパリ）。みんな役割があると思ってて、自分にできることは自分がやる。ほかの人間がやれることはほかの人間がやっていけばいいと思います。プロレス界、格闘技界、カポエラ界？どこの世界でもアントニオ猪木ってそんな小さいモノじゃなくて、もっとデカいモノですよ。

――今回の両国のメインイベントでは何を伝えようと想いリングに上がりましたか？

柴田　文字通り闘魂ですよ。ホントに俺ができることって最初に話しいただいて、自分が話した時に「自できることは限られてきます」と伝えて、「そのなかでやれることをどうぞ決めてください」ってことで今回のルール、形式になりました。会場に来てからホントに不思議な時間を過ごしましたね。「俺、なんでここにいるんだろう？」っていう素の自分もいたりして、でも「しっかり弔おう」っていう自分もいて……。今日できることは精一杯やったつもりです。たぶん試合を観たら「あっ、しょっぺぇな」って自分でも反省するところがたくさん出てくると思うんですよ。

――闘魂の言葉通り、やられても立ち上がって最後は執念のグランド卍固めで勝利を奪いました。

柴田　今日このルールで、このタイミングでできる試合をするってなって、全力を出したらああいう形になりました。ホント自分で観ても「もっとこうしたら良かった」ってたくさん出てくると思うし、つねに反省で……。まあでも、今日プロレスラーが一人この大会に上がるっていうことに一番意味があったと思います。なんだかんだ言って会見でも言いましたけど、ほかの格闘技の大会に自分が出れる場所もないです。だけど、今日の大会はアントニオ猪木追悼大会『INOKI BOM-BA-YE』なんで、だから自分はやりました。ありがとうございました。以上！