−−しかも海外武者修行でなく個人で回ったというのは大きな意味があると思います。しかも各国でそれぞれの団体のビッグショーに参戦、しかもベルトという結果まで残しているのは快挙ともいえます。
ライガー いやぁ、あらためてそう言われるとすごいね(笑)。5月にもここ(JPWA)に来てるわけだし。やっぱり呼ばれるうちが華というか。レジェンド的な扱いもあるけど、ボクはそれはイヤなんです。現役でリングに上がる以上はレジェンドというのは関係ない。ライガーはライガーの試合を見せないといけないし、ライガーじゃないと意味がない。リングに上がるからには手加減なんてしてほしくないし。相手がどんなに若い選手であろうと勝負だから。5月の試合(対ホミサイド)が認められたからこそ、今回タイトルマッチが組まれたんだろうと思うし。そういう形でいつまでも呼ばれたいと思いますね。それを今年はアメリカでも、メキシコでもやり通せたかな。
−−ファンの関心度も非常に高いですね。
ライガー 2日目のタイトルマッチでは相手も関節技を得意とする選手だったこともあるけど、ほんとにお客さんはかたずをのんで見てる感じで。その試合のレフェリーをされてた(タイガー)服部さんも言われてましたけど、「ファンが動きの一つひとつを見てる。騒いでるだけじゃなくて、試合をじっと見てる」って。ボクも闘っていてそれを感じましたし、うれしかったですね。雰囲気が日本でのタイトルマッチに似てましたし、後楽園ホールに近い感じもしました。だからやりやすかったのかもしれませんけど。まぁ、ファンが騒げばそれに乗せられていろいろやったりするんですけど、ああいう感じだったからこそ自分の試合ができたし、勝負に集中できた。アメリカのファンってワアワア騒ぐイメージが強かったんですけど、昨日はそうじゃなかったんで。
−−ファンもちゃんとわかっているようですね。
ライガー ボクが初めてアメリカでブライアン・ピルマン選手(故人)とWCWでテレビ(『マンデー・ナイトロ』)のスタート(1995年9月4日=現地時間)のオープニングマッチで闘った試合を見て、プロレスラーになったり、プロモートを始めたっていうのが多くて。あのときに見たライガーを…というので呼んでくれてるわけだし、闘いたいって思ってくれてるわけで。初めて見るファンからしても、マスクマンでわかりやすいキャラクターというのもあるんだろうけど。でも、さっきも言ったようにライガーとしてリングに上がる限りは、10年前のライガーであろうと5年前のライガーであろうと、ライガーはライガーなんだから。単に懐かしいっていうだけで上がりたくはない。それに新日本の選手のレベルはどれぐらいのものなんだろうって見るファンもいるだろうから。こんなもんかって思われたら、ほかの選手に申し訳ないんで責任感もありますけど、それがいいプレッシャーとして働いてるかなって。2日連続でタイトルマッチをやって、日本にベルトを持って帰られるっていうのがそれを証明してるかな。
−−それにしてもこれだけのベテランになって、海外遠征が続くのはきつい部分もあるでしょ?
ライガー 何といっても、新日本プロレスで勤続年数ではボクが一番長くなっちゃいましたから。事務所を見渡しても、ボクが一番なんじゃないかな?(笑)。でもボクはプロレスが好きだから。プロレスが好きでメキシコに渡ってプロレスラーになったぐらいですから。今でもその気持ちはあるし、好きなプロレスをもっと続けていくためにはなにが必要かってなったら、やっぱり練習しかないんです。こうやってベテランであっても海外に出ることで刺激を受けますし。それも重要だと思います。落ち着いちゃったら終わりかなって。
−−どんなタイプの選手でも相手にできるというライガー選手ならではの役割もありますし。
ライガー 来年1月にはメキシコの選手が大挙してやってきますし、メキシコのベルトを持ってますから、そこでタイトルマッチも当然組まれるでしょうし。そこでベルトを守って、またメキシコに行きたいなという気持ちがありますから。プエルトリコからもオファーが来てるみたいなんで。今回、ドイツからそのままイギリスへっていう話もあったんですけど、そうなると年内に日本に帰れなくなっちゃうんで断ったんですけど、イギリスにもまた行きたいですね。
−−今年は悲しい話もたくさんありました。
ライガー 柴田(勝久)さん、安達(勝治)さん(ミスター・ヒト)、山本(小鉄)さん、星野(勘太郎)さん…山本さんはメキシコでボクを拾ってくれた方ですし、それぞれにお世話になりました。安達さんは大阪に遠征に行ってるときに亡くなられて、試合が終わって実家にお別れに行きましたけど、そういうタイミングっていうのも何かあるのかなって。もう会えないのは寂しいですけど、どこかで必ず見てるでしょうから、「ライガー、頑張ってるな」って言われるように。
ボクもいつか天に召される時が来ますから、その時に「ライガー、よく頑張ったな」って迎えてもらえるようになりたいし。悲しいことがあったけど気持ちを切り替えて。まだ老け込みたくないし、いつまでも元気でリングに上がれるように。そのためには練習と節制、そしてこういう刺激と。みんな上でドンチャンやってますよ。橋本(真也)もいるし。天国のプロレスの方が面白いかも。でも、そう言われないように頑張らないといけないと思ってます。