「中邑に食われる可能性は充分ある」25周年大会直前、蝶野正洋インタビュー
「この大会だけ、見てりゃいいんだ、オラ!」と、10月12日(火・祝)の25周年特別興行「ARISTRIST in 両国国技館」を控えた蝶野正洋選手。今回は、大会プロデューサーでもある蝶野選手が、ダブルメインイベント(蝶野正洋&武藤敬司&小橋建太vs中西学&小島聡&秋山準)、そして「IWGPは頂点じゃないのか?」と異を唱える中邑真輔に返答する直撃インタビュー!
■メインは“お祭り”? そのとおりだ
——“遅刻魔”でおなじみの蝶野さんですが、今日の両国大会の会見では、かなり早くいらっしゃってました。
蝶野「フフフフ。それでも、来ようと思った時間の15分遅れだよ(笑)」
——もっと早く着くはずでしたか(笑)。
蝶野「武藤(敬司)さんに先を越されてね。ホント、武藤さんって昔っから必要以上に集合時間に早いんだよ(笑)」
——その会見では豪華なメンバーが揃いました。
蝶野「この6人は、へんなしがらみがないでしょ。控室で話をしたら選手たちも『純粋に試合を楽しみたい』と。選手のフレッシュな気持ちがお客さんに伝わると思うし。日本のプロレス界はこれだけの面子が揃えられる、世界進出も目指せるんじゃないか、と。それぐらい自信を持ってるよ」
——ただ、実質上のセミファイナルに登場する中邑(真輔)選手は、「メインは“お祭り”。俺は“闘い”を見せる!」と息巻いています。
蝶野「ああ、それはそのとおり(キッパリ)」
——そこは認めちゃいますか(笑)。
蝶野「今回、プロモーターとして各試合にテーマを設けてるけど、3WAYやバトルロイヤルというゲーム性の強い試合もある一方で、俺もプロレスの原点は“闘い”、シングルだと思うし、その究極がチャンピオンシップ。俺が今回どうしてもIWGP戦を入れたかったのは、その“闘い”を見せたかったからなんだよ」
——ただ、中邑さんは「IWGPが頂点じゃないのか?」と試合順へ怒りも表明しています。
蝶野「俺たちも、同じような不満を(アントニオ)猪木さん、藤波(辰爾)さん、長州(力)さんにブツけてきた。確かにチャンピオンとしては屈辱だと思うよ。でも、俺らはキャリアが長いぶん、彼らに持ち合わせてないネームバリューや“華”を持ってる。この“おもし”をはねのける試合をやる、という気持ちになってるだけで充分。中邑が何も言わず、メインを譲ってたらさびしかっただろうし」
——ある意味、狙いどおりだ、と。
蝶野「チャンピオンシップじゃなかったけど、俺も過去にアドバルーン的な試合をやらされて納得いかないこともあったよ。あの筋肉モリモリの女性……」
——ああ、ジョーニー・ローラーさん(笑)。
蝶野「彼女と組んだり、電流爆破マッチをやったり……。納得いかなかったけど、そこは次の日の新聞でどれが一面に来るか? という勝負でしょ。与えられた役割や試合順をいかに料理するか? 今回、中邑は相手が大谷晋二郎という骨のある選手で、俺が投げた“橋本真也”という部分もあれば、さらに“アントニオ猪木”というテーマまで持ち出した。メインが食われる可能性は充分あるよ」
■あの二人がいれば、何もしなくてもいいかも
——そのメインはどうなりそうですか?
蝶野「これは大会の“華”だよ。お客さんに“闘い”だけを前のめりで見せるんじゃなく、華やかさの部分。そこはプロレスの一番の特徴であり、ほかの格闘スポーツではこういう表現はできない。そこを思いきりお客さんに見せつけて、『プロレスっておもしれぇな』と思わせてやりたいね」
——パートナーの小橋さん、武藤さんは「美味しいトコどり」を匂わせています。
蝶野「競争はあってしかるべきだけど、俺はあの発言を聞いて、逆に『チームワークができてるな』と思ったよ。言葉でああ言ってるけど、『バックアップするよ』とも聞こえたし。一緒に写真を撮ったとき、あの二人に挟まれただけで『もう何もしなくてもいいんじゃないか』って思ったし(笑)」
——一方の第三世代組に対しては?
蝶野「いずれも今年ベルトを持った選手だけど、相撲でいえば横綱の位置にいるわけだから、厳しく言えばもっとがんばってもらいたいよ。業界をガンガン活性化させる役割は彼らが一番担ってるんだから」
——蝶野さんは「業界を左右する重要な一日」と捉えらえているようですが。
蝶野「いま業界は、手遅れなぐらいの危機感があるし。来年じゃなく5年先のことを話して行動する時期に来てると思う。そこでお客さんが何を求めてるか? そのヒントはこの夏からの各団体のビッグイベントでみんな何かを感じてると思う。今回も各団体のトップが集結してる。立場は違うけど、そういう人間が少し横を向いたら、『まだ、いい料理ができるじゃないか』と手ごたえを感じられるんじゃないか、そう思うよ」
——ただ、乱発に危機感を感じる人もいます。
蝶野「交流戦を乱発して下り坂になった女子プロレスのケースもあるからね。確かに交流がその場しのぎではマズいけど、最近のビッグマッチでファンの期待感、プロレス復興への感触も感じてるし、いまはプロレス界が各団体で細かく動いても世間には伝わりにくい、未来への組み立てをシッカリ考えた上で、一丸となって花火を打ち上げれば、届く可能性があるんじゃないか」
——よくわかりました。最後にお客さんにメッセージを。
蝶野「25周年ということで、いままで向かい合ってた選手と組むことで、自分でもワクワク感が出てきてる。そういう喜びを爆発できるような試合をするから期待してほしい。……いいか、おまえら! 来ないと後悔するぞ、オラ! エ-!!」
——両国に来ないヤツは「ガッデムだ」と。
蝶野「アイ・アム・チョーノ! カモン!!」