「混沌から新しいものが生まれる」/中邑真輔スペシャルインタビュー
壮絶な星の潰し合いが続く「G1 CLIMAX 2009」で、ただ1人連勝街道を突き進む中邑真輔選手(Bブロック)。新日本プロレスの現状に異を唱え、矢野通選手らとCHAOSを結成して約4ヶ月。己の信念を貫く男が、長い沈黙を破った——。
※8月13日名古屋大会の試合前に収録
–公式リーグ戦4連勝と絶好調ですが?
中邑「まぁ、一試合、一試合、真摯に臨んでいるつもり」
–8月8日大阪の杉浦貴(プロレスリング・ノア)戦のあと、「なぜ、杉浦のようなタイプが新日本でもてはやされるのか?」という発言をしていましたが?
中邑「今の新日本をよく表しているんじゃないの? ああいう選手をありがたがるということでは」
–すると、あの杉浦戦が、中邑選手が表現しようとしている形の一つであると?
中邑「そもそも形なんてない。そうやって型にハメようとするから、ハマらないものを拒否したり、『分からない』という言葉で片付けてしまう」
–そんなに簡単なことではないと?
中邑「リング上での闘いは言葉では表現しづらいもの。特に『ストロングスタイルって何だ?』と言われた時に、『こういう風な定義があります』とは誰も言えないと思う。やっぱり、匂いや雰囲気や感覚で知らなきゃいけないことだから。今、そういうものが新日本にはない。まぁ、できる奴はいると思うけど、出そうとしない。でも、俺は、今は名ばかりとなった新日本のストロングスタイルに再び火をつけたいと思っている」
–その方法がCHAOSだったのですか?
中邑「現状に疑問を持ち、不満を感じたから、1度全てをバラすことにした。自分が立ち位置を変えることで、混沌という状況になれば、そこから新しいものも生まれるだろうと」
–そのことによって、ファンも混乱してしまったようですが?
中邑「今の新日本が安定を求めるのなら、それもいい。でも、それは自分がやりたいことではない。俺にしてみれば『安定を求めるレスラーは面白いか?』となる。『CHAOSは主張がバラバラ』と言う奴もいるけど、それでこそ混沌という状況が生まれる」
–8月7日広島では、後藤洋央紀選手に勝利。試合後、「お前もそろそろ吐き出せ」という発言をしていましたが?
中邑「アイツは本来、そういうものを持っているはず。今の後藤は、ただプロレスをやっているだけにしか見えない。アイツなりに何か思うところがあって、だんだん溜まって来ているだろうと、自分は肌で感じるので。アイツはそういうところが不器用かもしれないけど、『吐けるところがあったら吐いとけよ』と。だいたい、『俺はこれでいいです』と思うプロレスラーなんかいないはずなんだから」
–そんな中邑選手が起こした行動の結果が、G1での好成績に表れているようですが?
中邑「自分が何を闘っているのかと言えば、自分自身であったり、この現状であったり、“今”というもの。それを言葉ではなく、リングの上で表現するしかない。G1は勝ちにこだわる大会であり、完全な個人闘争。だからこそ、一試合、一試合、貫いて行くしかないと思っている」
——このインタビュー終了後、中邑選手は永田裕志選手に激勝。無傷の5連勝(10点)でBブロック1位通過となり、早々と決勝トーナメント進出を決めた。必殺技ボマイェ(顔面への膝蹴り)の切れ味もさらに増すばかりで、その勢いを止めることは容易ではないだろう。
かつて“救世主”と呼ばれた男が、自ら呼び込んだ混沌の新日本マット。そこから新たに生み出されるものとは、果たして何なのだろうか……?