6.19大田区で4年ぶりに全日本プロレスに参戦した永田裕志。約10年ぶりに諏訪魔と対戦したもののVOODOO MURDERS仕様で自分勝手に暴れたことから不完全燃焼で終わった。
その延長戦として乗り込んだ6.25黒部、6.26京都。しかし永田は、因縁が深まった諏訪魔との対戦にこだわるのでなく、「いろんな景色を見に来た」として、6.26京都では前3冠ヘビー級王者として全日本を支えてきた1人、宮原健斗とのタッグ対決が組まれた。
永田自身も楽しみにしていた闘い。宮原とは彼がまだプロレスリングNOAHを主戦場にしていた2012年11月9日、「グローバル・リーグ戦」旭川大会での公式戦で勝利している。しかし“最高”のキャラクターを確立させるどころか、まだそのかけらもすらも見えない時期のこと。「この団体を誰が支えてきたか。これまではそれを外から見てるだけだったが、肌で感じたい」との観点からすれば、事実上の初対決といっていい。
京都のリングに上がるのは約3年ぶり(昨年3月に京都府内=福知山のリングには上がっているが、京都市内は2019年9月20日の京都市体育館以来)。永田は“全日本版青義軍”の一員で、タイガーマスクが奪った世界ジュニアヘビー級王座への挑戦が決まっている田村男児を引き連れて登場した。
リングインするや、歩を進めて宮原の前に詰め寄り、無言のままあいさつ代わりの敬礼をした永田は。しばらくにらみ合ったのち一旦コーナーに下がったが、先発を買って出て「どっちが来る?」と挑発する。宮原が先発で飛び出してくる姿勢を見せると、「そうだよな」と自身に言い聞かせるようにつぶやいて試合開始のゴングを待った。
正面からがっちり組み合ったファーストコンタクトでは、バック、リストの取り合いを繰り広げる。その動きの中で宮原がロープに押し込む形に。互いに相手の攻撃を警戒しながらクリーンブレイクした。
2度目のコンタクトではロープワークから宮原がフロントハイキックを放てば、永田も同じ技で返していく。宮原が永田のお株を奪うようにフェイントから低空ドロップキックでヒザを打ち抜いたものの、続いて放っていったドロップキックは永田がが身をかわして自爆させる。すかさずヘッドロックホイップを決めた永田だったが、宮原もすぐに逃れて互いにパートナーにタッチした。
リング内は田村vsライジングHAYATOの展開。コーナーに控えながらも田村闘いぶりから目を放さず、檄を飛ばしていく永田。しかしエプロンから宮原がキックを田村に見舞うと、すぐさま永田はリング下を回って宮原に突っかかっていった。そしてフェンスが置かれていない場外で激しいエルボーの打ち合いを繰り広げていった。
永田と宮原の熱い闘いに触発されたかのように、田村とHAYATOもヒートアップしていく。宮原とHAYATOがダブルショルダータックルを田村に決めれば、田村はフライング・ショルダータックルを返して永田にタッチ。ほぼ同時に、HAYATOも宮原とタッチした。
リングに飛び込んでくるなり互いに引き寄せられるかのように攻撃を仕掛けていく。宮原のフロントハイキックが永田の顔面をとらえれば、永田も宮原の顔面にフロントハイキックとぶち込んでいく。一発入れられれば一発入れ返すといった展開。しかし冷静なのは宮原の方か。いつもなら永田が繰り出すフェイントを入れてからのヒザへの低空ドロップキックを逆に宮原がまたしても決め、片ヒザを着いた状態の永田の頭部に低空ドロップキックを突き刺していった。
さすがにこれには永田も引き下がってはいられない。エルボーの打ち合いに持ち込み、ミドルキック3連発、串刺しフロントハイキックを決めると、ダブルアームスープレックスで前3冠王者を宙に舞わした。宮原もフロントハイキックから投げ捨てージャーマンを返すが、永田は直後に放ってきたブラックアウトの脚をキャッチしてエクスプロイダーで投げ捨てた。ここで永田が田村にタッチして、結果的に両者がリング上でぶつかり合ったのはここまで。
その後、リング内は田村vsHAYATOの闘いが続く。HAYATOのスピーディーなファイトに防戦に回っていた田村だったが、カウンターのラリアットで形勢逆転。リング下で永田と宮原が互いに相手をカットに飛び込まさせないようもみ合っている間に、田村が強引あんラリアットからパワーボムでHAYATOをマットに沈めた。
注目の永田vs宮原はほぼ五分の展開ながら、宮原がうまく相手をはぐらかすような感じだったのに対して、永田は2発のスープレックスを放つなど相手の様子をうかがうのでなく、惜しげもなく引き出しを開けながら闘っていた感じ。とはいえまだ序章に過ぎないという感覚も。7.14後楽園で次なる展開に踏み込むかに期待がかかる。
■試合結果
第5試合 タッグマッチ(30分1本勝負)
○田村男児&永田裕志(14分4秒、パワーボム→片エビ固め)宮原健斗&ライジングHAYATO×
■試合後のコメント
永田「(田村に向かって)自分の力で、誰の助けも借りずに勝ったじゃないか」
田村「はい、勝ちました。これでタイガーマスク(と)の世界ジュニア戦……ま、その前に前哨戦がラジアントホール(7.9横浜)であるんで、そこできっちり感触つかんで、全部ものにして、本番の後楽園ホール、世界ジュニア戦、絶対に(ベルトを全日本プロレスに)取り返します」
永田「タイガーは強いぞ、オマエ。攻撃がエグイぞ。でもオマエ、自分の気持ちではいけんだろ。頑張れよ」
田村「ハイ!」
永田「よし! さてと、今日はようやく、全日本プロレスの柱の1本、宮原健斗に、なかなか暑苦しく、鬱陶しく、ガンガンくるヤツじゃないですか。独特のテンポで客を(自分の)身につける術(すべ)は、見事でしたよ。カーッと熱くなったんで、これ1回で終わらさせず、また目の前に出てきてくれよ。永田裕志の顔見て、あいつもいつも以上に熱くなったんじゃないかなと。そうだという返事をしてほしいね。とにかくやっててあつくて鬱陶しい。相手が相手だけど、これを必ずオレのペースに巻き込んでやる。そういう欲が出てきました」
--宮原選手のようなタイプは新日本にいますか?
永田「あぁ……いそうでいないかもしれない。ただ、一つ言えることは、あの明るいキャラクター、客を引き込むタイプっていうのはウチに1人いるかな。誰とは言わないけど。でも独特の存在感があって、ああいうタイプは初めてかな。光るものがあって、まさに太陽的な人間、ウチにたった1人思い浮かぶね。以上です」
宮原「オイ、お久しぶりですねぇ。今日はタッグだ。触れただけだろ。あとは、あちらさんはなんと言っておりましたか?」
--「あつ苦しくて鬱陶しい、やりづらいけど明るい太陽のような存在」と。
宮原「まぁ、ありきたりですね。世間一般にいわれている宮原健斗のイメージだ。ただ、その先はどうなるかわかんないから。今日はこれぐらいにしておきましょう。さぁ! 6月(の試合)も今日で終わりだ。3冠ベルトを失った次にオレが何をするのか。最短で、あの場所へたどり着く。オレの次の舞台は決まってるからな。あのベルトを最短でオレのもとに取り戻す。いや、あのベルトを、あの舞台で、オレが必ず巻く」
HAYATO「負けた! 言い訳はなんもないです。ただ今のオレより、世界ジュニアに挑戦する田村男児の方が強かっただけ。でもあきらめない。これ以上あきらめない。また、世界ジュニアに向けて、コツコツ積み直していきます」