プロレス界随一の論客・“GK”金沢克彦氏の独特の視点から、現在進行形の新日本プロレスに関するコラムを続々レポート(不定期連載)!!
「新日本vsノアは交流戦にあらず。まさに真っ向勝負の対抗戦だった」1.8横浜アリーナ決戦を大総括!!
■大盛況にして大成功。全面対抗戦の謳い文句に相応しい熱戦が展開され、「プロレスのチカラ」を満天下に示すこととなった
新日本プロレスが横浜アリーナで興行を開催するのは、7年半ぶり。プロレスリングNOAH(以下、ノア)と対抗戦形式で交わるのは約5年ぶりとなる。
なぜ、いま新日本vsノアなのか、果たして対抗戦なのか交流戦なのか――そんな声も一部から聞こえてくるなかで実現した1月8日、『WRESTLE KINGDOM16 ㏌ 横浜アリーナ』大会。
結果からいえば、大盛況にして大成功。全面対抗戦の謳い文句に相応しい熱戦が展開され、「プロレスのチカラ」を満天下に示すこととなった。
やはり、ファンは正直だった。チケットは早々に完売し、コロナ仕様ながら7077人の観客を動員。驚いたのは、新横浜駅からアリーナに通じる陸橋の途中にいた男性ファンが「チケットを譲ってください」と書かれたスケッチブックも持って立っていたこと。
ジャニーズ系の超人気グループのコンサートなどではよく見られるのだが、プロレス興行では極めて珍しいというか、初めて見る光景だった。もはやプラチナチケットと化していたわけである。
試合はダークマッチ2試合をふくめて、全11戦のすべてが対抗戦。戦績は新日本サイドの6勝4敗1分けに終わったものの、だから「どちらが強かった!」という声もとくに聞こえてこない。つまり、勝敗を超えた内容のほうでファンにもマスコミ関係者にもビンビンに響いてくるものがあったということだろう。
ここで、全11戦を振り返っていると、またまた1冊の本が書けるほどの分量となってしまう(笑)。そこで、新日本に関してもノアに関しても過去を見てきたし、現在進行形でも取材している私の胸に響いてきた試合、マッチアップ、ワンシーンなどを記してみたいと思う。
■藤田、矢野が対抗戦に火を点けた役割はじつに大きい。
まず、興行成功のための成否が懸かる第1試合は重要だ。とくに団体対抗戦においては、第1試合で火が点くかどうかによって観客の反応のガラリと変わってくる。
たとえば、史上最大の全面対抗戦と謳われた1995年10月9日、東京ドームでの『激突 新日本vsUインター全面戦争』。第1試合を任されたのは永田裕志&石澤常光(現ケンドー・カシン)vs金原弘光&桜庭和志のタッグマッチ。
これがもうバチバチの闘いとなってドームはいきなり大爆発。リングサイドで観戦していたアントニオ猪木も絶賛し、全8戦のなかから第1試合が『猪木賞』を贈られている。
そのときの光景がふと頭に甦ってくるほどに、ダークマッチの第1試合(藤田晃生vs矢野安崇)は若手同士らしく意地をぶつけ合った。ともに高校レスリング出身。体格では藤田が勝っているが、キャリア面では未だデビュー5ヵ月半の藤田に対して、矢野が1年2カ月で上まわっている。
前半はキャリアの差が如実に出て、矢野がグラウンド、関節技で圧倒しリードする。ところが、伸びのあるドロップキックが功を奏し、後半ヤングライオン藤田が大攻勢。10分時間切れ前になると強烈な逆エビ固めで矢野を追い込んでみせた。
ハッキリ言って、逆エビは完全に決まっていたように見えたが、最後まで耐え抜いた矢野。また、小柄な矢野はふだんダイビング・ボディアタックなどの空中技で活路を見いだすことも多いのだが、派手な空中技は封印していた。
基本技と気迫、意地のぶつかり合い。これぞ若手対決の見本のような一戦。藤田、矢野が対抗戦に火を点けた役割はじつに大きい。
■自分にも他人にも厳しい石井をその気にさせたのだから、稲村は殊勲賞もの
本戦の第1試合となった10人タッグ戦(石井智宏&後藤洋央紀&YOSHI―HASHI&田口隆祐&マスター・ワトvs原田大輔&大原はじめ&稲葉大樹&稲村愛輝&岡田欣也)も想像以上に白熱した。
私個人が期待していたのは、石井と稲村の顔合わせ。稲村はまだキャリア3年余のルーキーなのだが、ごつい身体とスケールの大きいファイトは新人離れしていて、大器という言葉がよく似合う男。彼の得意とするところは、まさにぶちかまし。
ノアマットでは野獣・藤田和之相手にも真っ向勝負を挑んでいく。なんど叩きのめされても怯むことなくぶちかましていく。石井との対戦が実現したらおもしろいな、と戦前期待していたのだが、その期待以上のぶつかり合いが見られたのだ……。
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