大好評! テレビゲームのプロデュースを行っている、野中大三さんによるプロレスコラム。今回は、“USヘビー級新王者” 光射す棚橋弘至のWorld Viewについて執筆!
■『カードファイト!! ヴァンガード overDress Presents WRESTLE GRAND SLAM in MetLife Dome』
9月4日(土) 15:00開場 17:00試合開始
埼玉・メットライフドーム
★チケット情報
★対戦カード
9月5日(日) 13:00開場 15:00試合開始
埼玉・メットライフドーム
★チケット情報
★対戦カード
※「ロイヤルシート」は完売となりました。
■第34回 光射す棚橋弘至のWorld View
みなさん、こんにちは。
株式会社カプコンでゲームプロデューサーをしている野中です。
今年の夏は棚橋弘至選手が熱いですね。
新日本プロレスマットはいくつもの話題が渦巻いていますが、僕が今、心底酔いしれているのが棚橋弘至のプロレスです。
■2021年夏の主役
7月29日の『WRESTLE GRAND SLAM』東京ドーム大会では大会当日に緊急出場が決まり、メインイベントで鷹木信悟選手のIWGP世界ヘビー級王座に挑戦しました。結果は敗れましたが、まさにドームの主役と言える堂々としたファイトを見せてくれました。飯伏選手欠場というピンチをチャンスに変えた棚橋選手でしたが、前日にKENTA選手とシングルマッチを行った翌日朝にドームにメイン出場が決まるという慌ただしい流れは棚橋選手にとってもピンチと言える状況でしたが、全くピンチ感を感じさせないエネルギッシュなファイトでした。
その後、現地時間・8月14日の『RESURGENCE』ロサンゼルス大会でのUSヘビー級王座挑戦を表明した棚橋選手は渡米し、ランス・アーチャー選手相手に熱いファイトを繰り広げてUSヘビー級王座を奪取します。
長身のアーチャー選手に何度もしかけた高さのあるスイングブレイド、終盤に畳みかけたハイフライ弾3連発はものすごい説得力でした。
LA大会が終わった4日後、今度はメットライフドームで飯伏選手を指名してUSヘビー王座戦をぶち上げます。欠場し、ファンが心配する飯伏選手の壁を自ら買って出たのです。しかもタイトル戦というリスクを負っての提案に強い漢気を感じたファンが多いのではないでしょうか。
と、ざっとみなさんが知っているここ最近の棚橋選手の活躍を並べてみましたが、ファンは棚橋選手に酔いしれた状態ではないかと考えます。
ファンが酔いしれたのは棚橋選手のプロレスが持つ世界観、つまり「World View」であると僕は論じます。
■World Viewは簡単に作れない
World View 日本語だと「世界観」になります。
World Viewはゲームの世界でも使われる用語であり、ユーザーがゲームに求める大切な要素のひとつです。
「このゲームは世界観がいい」「独特の世界観が好き」「深い世界観に浸るのが楽しい」
といった感想をみなさんは口や耳にしたことがあるのではないでしょうか。
ゲームの評価要素はたくさんあります。ゲームシステム、操作性、デザイン、グラフィッククオリティ、ステージやアイテムのボリューム、通信システムなどがあげられますが、世界観以外の要素はどれもなんらかの尺度で定量的に測ることができ、比較が容易なものです。
背景グラフィックを例に挙げましょう。
背景を構成するのは、置いている自然物や建築物などのオブジェクトのクオリティと数、空間を表現する描画機能やカメラ、そして空気感を表現するカフィルターやガス表現などの技術要素です。
わかりやすく言うと、置いている樹木がどれも細かく描きこまれていて、ふたつと同じものがなかったり。ステージの遠くまで見えるけどきれいにぼやけて遠近感が表現されていたり、ということです。
アイテムだと数が多かったり、性能が細かく設定されていたり、キャラクターだとその数そのものが評価対象になりますよね。
格闘ゲームを例に挙げると、登場キャラが8キャラのゲームより32キャラのゲームの方が魅力的に感じますよね。「集める〇〇は1000種類以上!」「総プレイ時間100時間以上!」と言った売り文句をよく見かけるのは比較が容易だし、それが価値に直結する要素だからです。
しかし、World Viewだけは評価内容が異なります。
ユーザーさんが褒めることがあってもメーカー側が「このゲームはWorld Viewがすごいぞ」や「素晴らしい世界観を楽しんでね!」と言うことはあまりありません。
あったとしても、作り手側が言うことか?と冷めた目で見られてしまうことでしょう。
ユーザーが求めるWorld Viewは舞台、登場人物、ストーリー、そしてゲームシステムがきれいに組み合わさってできる集合創作物なのです。多くの要素が破綻なく組み合わさることではじめて魅力的なゲームの世界、そのゲームだけがもつ世界、すなわちWorld Viewが完成するのです。
そしてそれは定量的に測定をしたり、他と比較することが非常に困難な要素です。
構成する要素はすべて測定可能なのに、集合体であるWorld Viewはなぜ測定不能なのか?
この答えは簡単です。
答えは、World Viewを評価するユーザーが感情を持つ人間だから、なのです。
■World Viewの評価基準は感動
優れたWorld Viewと評価されているゲームタイトルはいくつもあります。
『Fate Grand Order』、『ゼルダの伝説 ブレスオブワイルド』、『The Last of US』などが最近の代表タイトルではないでしょうか。僕は天穂のサクナヒメもその代表タイトルだと思います。
これらWorld Viewが優れていると評価されているタイトルを遊ぶとき、ユーザーさんは登場キャラクターやアイテムの数、ステータスの多様さ、プレイ時間の長さなどは口にしません。
歩いているステージの風景、空気感、キャラクターのちょっとしたセリフから感じる雰囲気を評価します。
ゲームをプレイすることで感情が動くことを評価するのです。
爽快だ、怖い、かわいい、かっこいい。
いろんな感情が沸き上がり、心が動き、それが心地よい時間となります。
心が動く、つまり「感動」するのです。
優れたWorld Viewが感動を与えてくれ、ユーザーはその状態に心身を預けるのです。
感動に定量的尺度はありません。よってWorld Viewは数値的測定が不可能な要素なのです。
■棚橋選手のWorld Viewは心を揺さぶる。
※撮影/中原義史
棚橋選手に話を戻しましょう。
棚橋選手のプロレスは心が揺さぶられます。リング内だけではなく、リングに向かう姿、試合後のコメントにも心が動きます。そこには棚橋選手のWorld Viewがあるからなのです。
肉体のコンディション、コスチューム、表情、技、受け身。そして対戦相手と試合会場。
棚橋選手のプロレスを構成するいくつもの要素が見事に組み合わさってできる、棚橋弘至のWorld Viewにファンは感動するのです。
そのWorld Viewの魅力を少し掘り下げると、底の見えない包容力、ではないでしょうか。
コロナ禍で先の見えない不安な世の中にあっても、棚橋選手はどんな不安、心配も受けとめてくれる、不変不屈の包容力を感じます。
棚橋選手がいると暗闇の中に光が射し、モノクロだった世界が色鮮やかになっていくような感触を受けます。
どんな闇も明るく照らして光輝く鮮やかな世界に変えてしまう。それが棚橋選手のWorld Viewではないでしょうか。
飯伏選手欠場で穴の開いた東京ドームメインを救い、LAの有観客試合でファンを熱狂させ、そして飯伏選手復帰に最高の壁として立ちはだかる。
全ての点が線になっています。たくさんの要素で構成されるWorld Viewそのものです。
そしてそれぞれの不安を払拭し、明るい雰囲気にしてくれました。
さて、棚橋選手の奥深いWorld Viewはもうすぐゴールなのか、それともまだ道半ばなのか、
メットライフドームの飯伏選手戦に注目しましょう!
棚橋弘至のWorld Viewに心を預けましょう!
■野中大三(のなかだいぞう)
株式会社カプコン プロデューサー
プロレス観戦歴、ゲーム歴ともに37年。
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■野中大三(のなかだいぞう)
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