プロレス界随一の論客・“GK”金沢克彦氏の独特の視点から、現在進行形の新日本プロレスに関するコラムを続々レポート(不定期連載)!!
今回は「ついに飯伏幸太の時代がやって来た!」“激闘続出”の東京ドーム2連戦を大総括!!
テキスト/金沢克彦
※以下、インタビューの「前半部分」をWEBで無料公開!
■2日間のドーム大会、あらためて新日本プロレスという団体のクオリティーの高さ、選手層の分厚さを思い知らされた感がある。
昨年秋口には開催すること自体、まだ危ぶまれていた年明け2021年の1.4&5東京ドーム大会2連戦。その後も情勢は一進一退であり、東京ドーム2連戦の正式発表から前売りチケット販売まではなんとか漕ぎつけたものの、年末にまた状況は一変。
新型コロナウイルスの感染拡大がさらに深刻化してきたことが、大規模イベントにも大きな影響をもたらした。
これに対処するために、新日本プロレスではドーム2連戦のチケット販売は12月29日をもって終了。当日券の販売はなし、と決定した。興行的には大打撃である。ただし、止まっていてはなにも前へ進まない。ここまで選手、スタッフ、関係者間にひとりの感染者を出すこともなく、大会運営を実施してきた新日本プロレス。
その姿勢は徹底していた。私が知るかぎり、おそらくどの業界よりも新日本の新型ウイルスに対する感染防止対策は万全を期していたように思うのだ。
選手たちはもちろん、スタッフ、テレビサイドと、関係者の高い意識の賜物によって、1.4&5東京ドーム2連戦は無事に実現したわけである。まず、ここを大いに評価しておく必要があるだろう。
2日間、第0試合をふくめると、1.4=全7戦、1.5=全8戦が組まれた。たとえば昨年と比較すると、昨年は1.4=全11戦、1.5=全9戦。ここ最近の通例通りにドーム大会でも試合数は絞られていた。
まして、2日目の1.5ドーム大会には驚きさえ感じた。前日の結果を踏まえてのカード編成をみたとき、オカダ・カズチカ、棚橋弘至、内藤哲也の新日本マット3本柱が出場していないのだ。こういった現象は両国国技館大会、日本武道館大会、大阪城ホール大会でもなかなかないことだろう。
ところが、2日間のドーム大会をすべて取材し終わった感想を言うなら、じつに濃かったし充実していた。
もっと踏み込んでいうなら、あらためて新日本プロレスという団体のクオリティーの高さ、選手層の分厚さを思い知らされた感がある。このご時世だから、大盛況とはとうてい言えないのだが、大成功と言う分にはだれも文句をつけられないだろう。
■オカダは自分の立場をよくわかっている。王者ではなくても、ベルト保持者ではなくても、それ以上かそれと同等の価値が自分にあるということ。
それでは、東京ドーム2連戦の試合に関して、とくに印象深い試合、それに付随したエピソードを織り交ぜながら総括してみたい。
まず、初日はセミファイナルとメインイベントに尽きるだろう。セミで組まれたのがオカダ・カズチカvsウィル・オスプレイの元“兄弟”対決。10.16両国の『G1』Aブロック最終公式戦で、オスプレイがまさかの裏切り。
CHAOSを離脱してUNITED EMPIREを立ち上げたオスプレイはオカダへのライバル心、憎悪を剥き出しにしながら、今回の決戦へ挑んできた。
「オカダの下にいるかぎり、オレはトップに立つことができない。世界一のレスラーであることを証明するためにもオカダを踏み台にする。その先に狙うものは言うまでもない」
オカダを倒して一気にジャンプアップ、その実績をもってIWGP&インターコンチの2冠王座に挑戦し頂点に立つ。
単純明快な野望。世界中のプロモーションが欲しがっている超逸材であるオスプレイにしてみれば、新日本マットを主戦場に選び日本を文字通りホームとしたからには、そこへ向けて突き進むのは当然のことでもある。
一方のオカダには、この1年間、雌伏して時を待っていたかのような印象がある。昨年の1.5東京ドームでIWGPヘビー級王者として、IWGPインターコンチネンタル王者の内藤哲也と史上初のダブルタイトル戦を行ない、敗れ去った。
それ以降、まる1年、丸腰で過ごしてきた。シングルのベルトからも、トーナメント優勝からも遠ざかってきたのだ。
「オスプレイが世界一のレスラーだというのは認めますよ。だけど、そのオスプレイに勝てば自分はそれ以上だということ。それにオスプレイはオレに勝って、踏み台にして2冠ベルトに挑戦すると。ただ、自分の場合はオスプレイに勝ったから、それをもってベルト挑戦とはいかないでしょう?」
オカダは自分の立場をよくわかっている。王者ではなくても、ベルト保持者ではなくても、それ以上かそれと同等の価値が自分にあるということ。この数年、プロレス界の高見に君臨していた別格の価値観をもつ人間であることを自分で理解している。
また、周囲もそういう目でオカダを見ていることは疑う余地がないのだ。同時に、この1年の雌伏期間に見てきた新日本マットの流れにも警鐘を鳴らした。
「もしかしたら新日本プロレスから離れてしまったファンもいるかもしれない。乱入、介入での決着に不満を募らせて。そういうものを払拭して、もし離れてしまったファンがいるならその人たちをまたファンに戻すことができるのはオレだけかなと。いまでも2冠というものにはすこし疑問があって、オレが欲しいもの、興味があるのはやっぱりIWGPヘビーなんですけどね」
今回のドーム2連戦を前にして、オカダはその問題点に初めて言及した。そこには、業界の大黒柱としてのプライドだけではなく、メッセージも感じとることができた。
「ドームでオレが新日本プロレスというものを見せてやる!」
そういう気概である。袂を分けたとはいえ、オスプレイとならそういう闘いを体現できるし、間接的に他の試合と勝負しても負ける要素はなにもない。
これはすこし語弊がある表現方法かもしれないが、ついにオカダが本気になったのだ。
■あらためてオカダの怪物ぶりを目の当たりに観客も度肝を抜かれたのではないか?
私はこの試合のテレビ解説についていたが、オカダは怖いほどに、身震いさせられるほどに強かった。
「体重を増やしてからのオスプレイは以前のように飛びまくるというより、地に足がついた試合をするようになった」とオカダが言ったように、ウエートを105㎏までもってきたオスプレイは、真っ向勝負を挑んできた。
もともと身長(185㎝)もあるから、オカダと対峙しても体負けしないし、むしろパワーではオカダを上まわっている部分も感じた。
打撃合戦で互角に渡り合ってきたオスプレイに対し、オカダはその逆をいった。なんと先制のトップロープ越えトぺ・コン・ヒーロを放ったのだ。ふだんであれば、ルチャリブレの祭典『FANTASTICA MANIA』シリーズでしか見せない空中技を、あえてオスプレイに仕掛ける。
このあたりのアドリブ力と引き出しは、さすがという感じ。かと思えば、フラップジャックと見せかけて、ショルダースルーで高々とオスプレイを空中に放り投げる。
これはショルダースルーというより、リフトアップスルー。オスプレイの身体が3メートルほども空中に舞っている。俊敏で受け身の上手いオスプレイでなければ、ヒヤリとするような投げられ方だった。
一方、オスプレイもヘビー級転向のパワーを証明してみせた。場外戦の際に本部席の机に立って鉄柵内のオカダをブレーンバスターの要領でブッコ抜き、横にひねって机上に叩きつけたのだ。机にはオカダの上半身のカタチのままにポッカリと穴が開いてしまった。
空中戦、切り返し合戦と立体的な攻防もありながら、すべてハードヒットなところが凄い。その真骨頂ともいうべきシーンが、オカダがドロップキックを連発したこと。コーナーのトップロープにオスプレイを据えて打ちこんだドロップキックは圧巻。
いつもは蹴りをヒットさせるカタチになるが、今回は両足を最大限に屈伸させて弾き飛ばす感じ。場外に転がり落ちたオスプレイはまたも危険な状態で受身をとった。
正調ドロップキックにしても屈伸式で、ヒットさせるのではなく弾き飛ばす。明らかにオカダは破壊力のある1発を意識して打ちこんでいた。
そこには二つの感情が見え隠れしているように感じた。「叩きつぶしてやる」と「オマエなら受け身をとれるだろ?」という思い。根底には、オスプレイへの信頼感がある。たとえ裏切られようとも、その卓越した力量を認めているということ。
終盤、3度にわたるマネークリップを決められオスプレイはグッタリとしてしまう。仁王立ちしたオカダは、「来いよ!」と叫んでオスプレイに気合を入れるかのように張り手を見舞う。まさに鬼の表情。強すぎるオカダ。
しかし、そこからオスプレイは必死にカムバックして、スパニッシュフライ、ツームストンパイルドライバーからレインメーカーポーズ。そして、掟破りのレインメーカーを本当に決めてみせた。
この一撃がオカダの心を揺さぶったのか、昨年の2.22後楽園ホール(中西学引退記念試合)で見せて以来、封印してきたレインメーカーを解禁。強烈無比な“本家”の1発に粘るオスプレイもついに沈んだ。
なんと勝負タイムは、35分41秒。結果的にメインよりも長い闘いとなったわけである。
いやはや凄まじい試合だった。体格に恵まれた両選手がガンガンにぶつかり合って、ハイスピードで動きまわる。
その決着が、10ヵ月半ぶりに飛び出した“宝刀”レインメーカー。インパクト満点。あらためてオカダの怪物ぶりを目の当たりに観客も度肝を抜かれたのではないか?
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