大好評! 株式会社カプコンで、テレビゲームのプロデュースを行っている、野中大三さんによるプロレスコラム!
■『バルサン Presents WRESTLE KINGDOM 15 in 東京ドーム』
1月4日(月) 15:00開場 17:00試合開始
東京・東京ドーム
☆対戦カード情報
★チケットは販売終了しました。当日券の販売もございません。
※新日本プロレスワールドの生配信もご利用ください。
1月5日(火) 15:00開場 17:00試合開始
東京・東京ドーム
☆対戦カード情報
★チケットは販売終了しました。当日券の販売もございません。
※新日本プロレスワールドの生配信もご利用ください。
★『バルサン presents WRESTLE KINGDOM 15 in 東京ドーム』特設サイトはコチラ!
■第26回「高橋ヒロムのプロレスと感情曲線」
みなさん、あけましておめでとうございます!
株式会社カプコンでゲームプロデューサーをしている野中です。
新年早々に掲載の機会をいただきました。新日本プロレスさん、ありがとうございます!
新日本プロレスファンのみなさん、今年も一緒に新日本プロレスを楽しみましょう!
2021年1回目の当コラムは『WRESTLE KINGDOM 25』の主役の一人とも言える、高橋ヒロム選手についてゲーム的プロレス論を展開していきます。
■ハイリスクな2連戦
今大会のヒロム選手のカードは以下となっています。
1月4日
vs エル・ファンタズモ選手(『SUPER J-CUP 2020』覇者)
1月5日
(1.4に勝てば)IWGP ジュニアヘビー級選手権試合 vs石森太二選手
となっています。そう、1.4で負けしまうと1.5は試合がありません。なんという緊張感の高さでしょう。
この2連戦は、『SUPER Jr.』の覇者と『SUPER J-CUP』の覇者、そして現IWGP ジュニア王者によって行われる、まさしく新日ジュニア最強決定戦です。
勝てば間違いなく一番強いと名乗れますが、負けてしまうと覇者や王者の印象が薄れてしまうというハイリスクな2連戦です。
この2連戦を仕掛けたのは12.11の『SUPER Jr.』優勝決定戦終了後に『SUPER J-CUP』覇者に向けて挑戦をぶち上げた高橋ヒロム選手です。
その声に『SUPER J-CUP 2020』を制したファンタズモ選手、IWGPジュニア王者の石森選手が乗る形でこの2連戦が実現しました。
3選手ともそれぞれ大きな勲章を持っているにも関わらず、負ければ終わりの闘いに挑む構図は戦前からワクワクドキドキが止まりません。
ヒロム選手の2020年はワクワクドキドキの連続でした。今回はそのワクワクドキドキという感情の動きを視覚化して振り返ってみようと思います。
感情を視覚化する手法、それは「感情曲線」という手法です。
■感情曲線は娯楽のものさし
「感情曲線」はエンターテイメントにおける受け手の感情の変化、動きを表現した曲線グラフのことです。
受け手の感情の状態を縦軸に、時間を横軸にして、感情をプロットしていきます。
興奮したり、盛り上がったり、大笑いしたときはプラス域に、悲しんだり、戸惑ったり、絶望したときはマイナス域にプロットします。それぞれの感情の変化の大きさを基準線からの距離で表現します。
感情の高ぶりを数値化するのはできないので、受け手の感覚を元に相対値でプロットしていきます。
現れた曲線は、その娯楽を受けたときの感情の変化が時系列に表現されています。
この手法はゲームはもちろん、小説や映画などでも分析用に用いられます。
エンターテイメントである以上、ユーザーを楽しませることが目的ですから、たくさん楽しんでもらえているか、どれくらい楽しんでもらえているか、飽きていないか、といった分析に用いられるのがこの感情曲線です。
ゲームでの分析例を挙げると、ゲームスタートからクリアまでの感情の変化を記録することで、いろんなことがわかるようになります。
序盤で飽きがなかったのか、盛り上がりのピークはどれくらいの感覚だったのか、クライマックスの盛り上がりはプレイ中最大になっていたのか、といったように、プレイヤーさんがそのゲームをどのように楽しんだのかを視覚化して分析できるのです。映画では上映時間が決まっているので、感情曲線を使ったシナリオ分析は特に効果的と言われています。
ジャンルの異なるエンターテイメントを共通の指標で比べることはナンセンスですが、受け手の感情の高まりを指標にすることでいろんなエンターテイメントを比較して分析することができるのです。
■感情曲線で見る2020年のヒロム選手
2020年のヒロム選手を見たファン(僕です)の感情曲線を1年を振り返りながら作ってみました。
1月はIWGP ジュニア王座の奪取と獣神サンダー・ライガーさんの引退試合の相手を務め、最高のスタートを切りました。
2月の大阪ではライバル、ドラゴン・リー選手を相手に王座を防衛し、上り調子でしたが、3月の内藤哲也との試合がキャンセルになってからは山あり谷ありの1年でした。
『NEW JAPAN CUP』での躍進のあとにEVIL選手の二冠に挑んで玉砕。
ジュニアタッグリーグではBUSHI選手とのタッグで破竹の連勝から、金丸選手、デスペラード選手にまさかの3連敗という大ブレーキ。丸腰で臨んだ『SUPER Jr.』では試合内容、結果ともに新日ジュニアの顔と言えるものを残し、最高に盛り上がった状態で『WRESTLE KINGDOM』に挑むことになります。
この感情曲線こそがヒロム選手が僕たちファンの心を揺さぶった記録になるのです。
■ピークの多さと落差の大きさこそヒロム選手の魅力
可視化したこのグラフの特徴は2つあります。
「ピークが多い」ことと「落差が大きいこと」です。
ピークが多いのはヒロム選手が常に話題になること、注目を集める行動をしていることの証で、落差が大きいことはリスクのある戦いを仕掛けている証でしょう。
また、落ち込んだあとに大きく跳ね上がるのは逆境の強さを証明しています。
リスクを恐れず、おもしろいと思った行動を取り、追い詰められるほど結果を残す。
ヒロム選手のこの特性こそが僕たちファンの「ワクワクドキドキ」を生み出しているのです。
■高まり切った曲線の先にあるもの
今のヒロム選手はファンに興奮を与えている状態です。『SUPER Jr.』の優勝決定戦はまさしく伝説になる名勝負でした。現時点でのファンの興奮度は欠場からの大復活を遂げた2020年の1月を越えつつあります。
この状態でファンタズモ選手、石森選手を連破すると、ファンの興奮は上記のグラフの枠外に飛び抜けるでしょう。一方、1.4、1.5のどちらかに敗れてしまうとカクンと下降線を描いてしまうでしょう。
まさにハイリスク・ハイリターンの2連戦なのです。
今のヒロム選手が背負うのは自分がここまで高めてきた自分自身の価値に他なりません。
ぶっちゃけ、ファンタズモ選手と闘う前に石森選手に挑戦してもよかったと思いますが、とことん自身とベルトの価値を高めようとするところがヒロム選手の魅力なのです。
リスクを顧みず、挑戦を続けるからこそ、ファンはワクワクドキドキさせられ、大きな波の感情曲線が生れるのです。
ファンが描く感情曲線の範囲は過去の経験を元にした想像力の限界です。この想像力の限界を超えることがヒロム選手の最大の武器、魅力と言えるのではないでしょうか。
『WRESTLE KINGDOM』2連戦、そしてその先に広がる2021年に2020年以上に大きな波の感情曲線が描けるようなワクワクドキドキが詰まったヒロム選手の活躍に期待しています。
いざ、レッキン15!
■野中大三(のなかだいぞう)
株式会社カプコン プロデューサー
プロレス観戦歴、ゲーム歴ともに37年。
去年からプロレス元旦が2日間になり、生活リズムが狂いがち。
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https://twitter.com/daizonnonaka
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