プロレス界随一の論客・“GK”金沢克彦氏の独特の視点から、現在進行形の新日本プロレスに関するコラムを続々レポート(不定期連載)!!
今回は「 “隠し玉”を投入してのベルト強奪!それは内藤に向けたEVILの“訣別宣言”だったのか!? 」衝撃の大阪城2連戦を大総括!!
テキスト/金沢克彦
※以下、コラムの「序盤部分」をWEBで無料公開!
■よくもわるくも最大のインパクトを与えた男は、“キング・オブ・ダークネス”EVILであった
あらゆるジャンルのスポーツ、エンターテインメントに先駆けて、有観客の興行を発表したのが新日本プロレスであった。無論その発表にいたるまでには、あらゆる事態を想定しての対策が練られていた。
だから、1万人以上の観客収容が可能な大阪城ホールに関しても、最初からキャパシティの3分の1をマックスとしてチケットが販売されている。ファンにとっても、選手にとっても待ちに待った約4ヵ月ぶりの有観客興行。
7.11&7.12大阪城ホール2連戦は新日本らしい濃密な大会となった一方で、その結末ではバッドエンドどころか、ハプニングと超サプライズが待ち受けていた。
最後まで観戦マナーを守って、拍手と手拍子で選手を応援し後押ししてきた観客のなかからも、エンディングでは我慢の限界とばかり一部からブーイングが飛んだ。
よくもわるくも最大のインパクトを与えた男は、“キング・オブ・ダークネス”EVILであった。6月から開催されてきた『NEW JAPAN CUP2020』(以下、『NJC』)で、小島聡、YOSHI-HASHI、SANADAに3連勝して、結果的に大阪城ホール2連戦で両日ともメインイベントに出場した男。
やはり、『NJC』公式戦からEVILの異常さは際立っていた。これまで無表情というキャラを押し通してきた男の目はギラギラと輝いて、急所へのストンピングというあからさまな反則攻撃で対戦相手に決定的なダメージを与える。
「オレがナンバー1だということを証明するために、何がなんでも優勝する。(勝つために)手段は選ばねぇー!!」
EVILのなかで何かが弾けていた。その覚悟が急所ストンピングという、究極の反則行為に表れていたのだろう。
主役となったEVILの心境に関しては、本稿の後半で考察してみたいと思う。その前に、両日のメインを除く注目の試合を振り返ってみたい。
■マスター・ワト。初陣としては見事な出来だったと思う。ただし、まだまだ引き出しはありそうな雰囲気。
まず、2年半ぶりに新日本マットに凱旋したマスター・ワト。プロレス界の“グランドマスター”を目指す男は、7月3日の無観客試合で姿を現わし、「新日本プロレスの頂点を獲りにいきます」と力強く挨拶したものの、背後から鉄パイプを持ったDOUKIに襲撃された。
それをうけて、7.11大阪城ホールの第3試合でワトvsDOUKIの一騎打ちが組まれた。中国武術・拳法の使い手として、変則的なキックを次々と繰り出すワト。それでいて、やはりイチバン目をひいたのは伸びのあるミドルキックと高角度のドロップキック。
同時に、的確で鮮やかな空中殺法も披露した。いきなりトルニージョを決めたかと思えば、スワンダイブ式のエルボースマッシュという見たことのないムーブも披露。フィニッシュは、コーナーから630度回転してのRPP。
初陣としては見事な出来だったと思う。ただし、まだまだ引き出しはありそうな雰囲気。そういう期待感が余韻として大いに残った。
この一戦が予想以上に白熱したのは、DOUKIが意地を見せつけたこともひとつの要因。高橋ヒロムの凱旋のときと同様に、連日煽りVTRで登場予告されてきたワトはエリートといえなくもない。
一方、和製ルチャドールのDOUKIはメキシコから単身で新日本に乗り込んできた叩き上げ。泥水をすすって生き抜いてきた男である。その対比が際立っていたからこその好勝負だろう。
また、ワトが披露したジャンボスープレックス……パワーボムのように担ぎ上げ後方に顔面から叩きつける荒技は、じつは天山広吉が日本マットで初公開した投げ技。1995年1月にヨーロッパ修行から凱旋した天山は何度かこの投げ技を披露しているが、対戦相手がヘビー級となると完璧に投げ切れないために封印している。
試合後、DOUKIと金丸義信に襲撃されたワトを、天山がいち早く救出したのもそういう縁があるからなのかもしれない。
体格的にみるなら、ヘビー、ジュニアの両刀でいけそうな素材だけに、そういう意味でもワトへの期待感が膨らむ。
■まさにNEVER戦の真骨頂。この試合を観ていて以前、棚橋弘至が語っていたSHOへの期待の言葉を思い出した。
翌7.12大会では3大タイトルマッチが組まれた。まず、純粋なライバル対決といっていい鷹木信悟vsSHOのNEVER無差別級選手権。いうまでもなく、『NJC』1回戦(6.22無観客試合)で、SHOが鷹木からシングル初勝利。その勢いのままNEVER王座へ挑んでいった。
身体のサイズなど超えて、20分以上ガチガチ、ボコボコにやり合った両雄。一歩も退かいシバキ合いは果てしなく続いた。ヘビーとジュニアというジャンルを感じさせない闘いは、まさにNEVER戦の真骨頂。この試合を観ていて以前、棚橋弘至が語っていたSHOへの期待の言葉を思い出した。
「いまのジュニアヘビー級というのは、だいたいスタイルが確立されてきたなと思うんですよ。そのなかにあって、SHOだけが違う闘いを目指しているように感じる。だから、オレはSHOに期待しているんですよね」
ああ、そういうことか、とピンときた。棚橋の示唆していたものを如実に端的に証明してみせたのが、今回の鷹木戦だった。
この一戦を通して、SHOは自ら新しい扉をこじ開けたといえるのかもしれない。鷹木は鷹木でNEVERの意味するところ、その振り幅の広さをあらためて実感したのではないか?
次期挑戦者はこれまたジュニアのエル・デスペラード。『NJC』1回戦(6・16無観客試合)では、敗れはしたものの石井智宏を相手に大健闘してみせたデスペラード。いま、無差別の闘いは文句なくおもしろいのだ。
■IWGPタッグ選手権。ひさびさにタッグマッチの本質というか、プロレスの原点を観ているかのような闘い模様となり、私までワクワクさせられてしまった。
7.12のセミファイナルに組まれたのが、IWGPタッグ選手権だった。これまた因縁渦巻くマッチアップ。王者のゴールデン☆エース(棚橋弘至&飯伏幸太)にチャレンジしたのは、鈴木軍のタイチ&ザック・セイバーJr.組。
これが、ひさびさにタッグマッチの本質というか、プロレスの原点を観ているかのような闘い模様となり、私までワクワクさせられてしまった。
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