ここ数年で劇的な“V字回復”を遂げたことで知られている現在の新日本プロレス。しかし、その“復活”に至る道程には、いったい何が推進力となり、どんな選手が活躍したのか?
その過程を最前線で随時見届けてきた“GK”金沢克彦氏が2010年代からの生まれ変わった“シン・新日本プロレス”に至る歴史を紐解く集中連載も最終回! 20代同士のIWGPヘビー級戦が実現した2012年3月4日、『旗揚げ記念日』を振り返る!
文/金沢克彦
※以下、金沢克彦氏「シン・新日本プロレスが生まれた時代」最終回の序盤を無料公開!
■いまでも伝説の一夜として語り継がれる“レインメーカーショック”が新日本プロレスのみならず、日本マット界に駆けめぐった
2012年2月12日、大阪府立体育会館。IWGPヘビー級王座を1年以上保持し、当時の防衛レコードであるⅤ11を達成した棚橋弘至が敗れた。新王者となったのは、1.4東京ドームで米国遠征から帰国し凱旋マッチを行なったばかりのオカダ・カズチカ。
同王座初挑戦にして初戴冠。しかも中邑真輔に次ぐ24際という若さで頂点へ。なんといっても、試合内容が圧巻だった。フロックとかラッキーといった表現はまったく当てはまらない完勝劇であった。
会場は騒然とした。マスコミ関係者も呆然としていた。いまでも伝説の一夜として語り継がれる“レインメーカーショック”が新日本プロレスのみならず、日本マット界に駆けめぐったのである。
当然の結果とばかりに堂々とベルトを巻いて仁王立ちするオカダに向かって、次期挑戦をぶち上げたのが内藤哲也だった。同大会のセミファイナルで中邑真輔からシングルマッチ初勝利という結果を出しているわけだから、当然の挑戦アピール。
オカダの初防衛戦となる内藤戦は、新日本プロレス旗揚げ40周年の節目となる3月4日、後楽園ホールの『旗揚げ記念日』で開催されることが決定した。
■「通算戦績はオレの1勝0敗。オレはオカダに負けたことはないですから。3月4日は、かならずIWGPのベルトを腰に巻きます」
大会を6日後に控えた2月27日、都内の新日本プロレス事務所で調印式が行われているが、そのときの両選手のコメントがいまとなってはじつに興味深い。まず、挑戦者の内藤。
「新日本が大好きで、新日本のレスラーになりたくて、アニマル浜口ジムに通って、5年かけて新日本に入門しました。新日本へのこだわりは凄く強いです。新日本の生え抜きのレスラーであることに、誇りとプライドを持っています。だから、外から来たオカダ・カズチカ(※闘龍門から07年8月に新日本入団)、オレは認めない。おそらく永遠に認めることはないでしょう。
ま、オカダが新日本に移籍してきて、一番最初に対戦したのはオレ(※07年8月、オカダのプレデビュー戦の相手を務めて勝利)。もう4年半くらい前ですか。そのときだれもオレの話なんか聞いてなかったかもしれないけど、『今後、競い合っていく相手になる』というコメントを出して。オレはオカダが新日本に入ってきた時点から、もの凄く意識してました。会社からの期待だったり、身長が高いとか、若いとか、そういうジェラシーをつねに持っていたんで。そのプレデビュー戦のことはスゲェー憶えてます。それ以来シングルで対戦していないから、通算戦績はオレの1勝0敗。オレはオカダに負けたことはないですから。3月4日は、かならずIWGPのベルトを腰に巻きます」
いま読み返してみても、本当に内藤らしい言葉が並んでいる。まず、驚くほど鮮明な記憶力。過去の戦績、試合内容、自分が発したコメントに至るまで、しっかりと記憶している。
もうひとつが、包み隠すことのないジェラシー。内藤の場合、こういう感情を棚橋に抱くことはまずない。むしろヘビー級としては小柄ながら、それでもエースになれるという歴史の先鞭をつけてくれた棚橋には感謝している。
それとは反対に、体格、ポテンシャルに恵まれた若い選手、同年代へのジェラシーは剥き出しにする。その対象が長年にわたってオカダであり、のちに人気面で先行された飯伏幸太にもジェラシーを全開にしていた時期がある。
もうひとつ、当時29歳の内藤は「20代でIWGPヘビーのベルトを巻く」という自分自身が立てた目標を達成するために躍起になっていた。
一方のオカダは、やはりオカダらしいコメントを残した。
「本物のプロレスラーであるオカダ・カズチカがチャンピオンとしてメインイベントで試合をする。そして当たり前の結果を残します。べつに生え抜きがどうのこうのよりも、いまチャンピオンである人間が新日本の顔であるわけで。生え抜きどうこうより、チャンピオンはすべて正しい。
じゃあ3月4日、勝ってからもっと大きいこといろいろと言わせてもらいます。ま、(新日本)デビュー戦で内藤さんと試合してますけど、凄いレスラーなんじゃないですかね。ただ、内藤さんより凄いレスラーが新日本に戻って来ちゃったんで。内藤さんに謝りたいです。すみませんでした(ニヤリ)」
礼儀正しく、上から目線。すでにオカダは自分のキャラクターを作り上げていたことがわかる。こういった言いまわしは、いま現在もオカダのコメントのベースになっている。
■棚橋弘至も中邑真輔も真壁刀義も後藤洋央紀もいない、旗揚げ40周年という大舞台でのメインのリング。
3.4決戦当日。前売り券は完売。当日券は立見席のみながら、相当数のファンが後楽園ホールの当日券売り場に並んだ。試合は全7戦。カード編成をみると、ほぼメインのIWGPヘビー級選手権1本で勝負していることがわかる。
ここ最近の新日本の興行は第1試合から会場が出来上がっているという空気を感じることが多くなった。ところが、この日はもう試合前から出来上がっていた。
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