• 2020.6.15
  • #Media
『“シン・新日本プロレス”が生まれた時代』第9回「内藤との名勝負数え唄がスタート! 王者・棚橋がついに“V11”達成! “凱旋帰国”オカダにファンが拒絶反応!?」


 
ここ数年で劇的な“V字回復”を遂げたことで知られている現在の新日本プロレス。しかし、その“復活”に至る道程には、いったい何が推進力となり、どんな選手が活躍したのか?

その過程を最前線で随時見届けてきた“GK”金沢克彦氏が2010年代からの生まれ変わった“シン・新日本プロレス”に至る歴史を紐解く集中連載! 東日本大震災が起こった2011年の夏、中邑真輔の大逆襲が始まった!

文/金沢克彦

 

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※以下、金沢克彦氏「シン・新日本プロレスが生まれた時代」第9回の序盤を無料公開!

■9.19神戸大会。IWGPヘビー級王者・棚橋弘至に『G1』覇者・中邑真輔が挑戦する珠玉の一戦。このビッグイベントを前に、なんと棚橋はメキシコへ渡った。

2011年8月27日、日本武道館で開催された32年ぶりのオールスター戦、『ALL TOGETHER』は大成功に終わった。

その後、新日本プロレスには大一番が待ち受けていた。9.19神戸ワールド記念ホール大会。IWGPヘビー級王者・棚橋弘至に『G1』覇者・中邑真輔が挑戦する珠玉の一戦。

言ってみれば、長年ライバル関係にあった両選手が過去最高のシチュエーションで激突する格好となったわけである。

このビッグイベントを前に、なんと棚橋はメキシコへ渡った。メキシコCMLLからのオファーを受けて、8月下旬から9月半ばまでCMLLマットで連日メインイベンターを務めあげた。

約3週間の遠征中、棚橋は黒を基調にしたロングタイツにペイントを施し、ルードとして暴れまわった。殿堂アレナメヒコでは、観客のブーイングを浴びながら堂々とエアギターまで披露している。その間、新日本の11大会を欠場。9.19神戸が新日マット復帰戦、つまり前哨戦なしでのぶっつけ本番のタイトルマッチとなる。

コンディション的には厳しいかもしれないが、精神面は充実していた。帰国した棚橋は私にこう話してくれた。

「ペイントをしてコスチュームを変えるだけで、完全にスイッチが入るんですよ。引き出しが増えたというか、オレはますます進化しますよ。これからますます全国に“逸材感”を広めていくんです。棚橋は本当に100年に1人の逸材なんじゃないかと思わせる空気感。そのことを逸材感というんです」

新用語が生まれた。この時点で日本にプロレスが誕生してから60年ほど。それにも関わらず“100年に1人の逸材”と自称してきた棚橋が、新たに“逸材感”という言葉を口にした。それほど今回のメキシコ遠征は充実していたのだろう。

一方の中邑も自信に満ちていた。ここ最近、IWGPヘビー級選手権では4連敗。ただし、8月の『G1 CLIMAX21』で神がかったように名勝負を連発して初優勝を達成し、一気に自分のステージを上げてみせた。

■「なぜ、今年に入ってからクネクネしはじめたんですか?」


思い出すのは、ちょうど棚橋がメキシコへ飛んだころの8月31日、サムライTVの月イチ番組『ニュージャパンライン』に中邑をゲストに迎え収録を行なったときのこと。

MCは清野茂樹アナウンサーで私が解説を担当し、新日本のビッグマッチ直前に主役となる選手を迎え、その展望を大いに語ってもらうという1時間番組である。

中邑の『G1』の全公式戦と優勝決定戦、さらに『ALL TOGETHER』の試合をダイジェストで流しながら、そこに中邑自身の解説を入れてもらった。

じつは4ヵ月前、5.3福岡国際センターで棚橋に挑戦する前にも、中邑は同番組に出演しているのだが、そのときとはまったく醸し出す空気が違っていた。

歯に衣着せぬ毒舌でトゲトゲしたムードを作り出すのが中邑流であったはずなのに、コメントも冷静で穏やか。攻撃的な発言があまり出てこない。こういうときこそチャンスだと思い、私は中邑に素朴な疑問をぶつけてみた。

「なぜ、今年に入ってからクネクネしはじめたんですか?」

おそらくこれが初めて世に出た回答だったと思う。中邑はすかすことなくストレートに語ってくれた。

「コマの原理を考えてほしいんです。コマは回転しているときに軸がしっかりしている。回転が弱いとバランスを崩す。だから常に動いていることによって、相手のどんな動きにも臨機応変に対処できる。もうひとつは、相手をバカにしているのもありますね(笑)」

なるほど。中邑本人の言葉によって、クネクネした動きが理論づけられた。そして、決定的なひとこと。

「いまの棚橋が相手なら楽勝です」

無論、メキシコ遠征前の棚橋を評しているのだが、そう言いきれるほど自信に満ち溢れていた。

■この棚橋戦以降、中邑は一度もIWGPヘビー級王座に挑戦することなく、海を渡ったのである。


9.19神戸大会は超満員の観客で埋まった。両国国技館クラスのカードなのだから、いまの新日本なら当然の観客動員となるだろう。

26分を超える最高峰の激闘を制したのは棚橋だった。その最大の要因は、中邑の繰り出すボマイェをすべて完封してみせたこと。

最後はうつ伏せ状態の中邑へハイフライフロー。さらにトドメの正調ハイフライフローかと思いきや、ハイフライフローから瞬時にエビ固めへ移行するハイフライ・フロールで中邑から3カウント奪取。これで7度目の防衛に成功した。

「IWGP戦に5連敗。さげすめ! 罵れ! 批判しろ! それでもオレはまたIWGP、また闘ってやろうじゃないの。オレは前を向いて闘うかぎり、ベルトが近くまで寄ってくるんだ。相手が棚橋かどうか関係ない。ベルトを持つ相手、それが闘うべき相手だ」

敗れた中邑はそう胸の内をぶちまけた。ところが結果的に、この一戦が中邑真輔にとって最後のIWGPヘビー級選手権試合となった。この棚橋戦以降、中邑は一度もIWGPヘビー級王座に挑戦することなく、海を渡ったのである。

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★『“シン・新日本プロレス”が生まれた時代』第8回「凄まじい熱気に包まれた“32年ぶりのオールスター戦”『ALL TOGETHER』! 被災地に向かった棚橋が“真菜ちゃん”と再会!」


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