大好評! 株式会社カプコンで、『ロックマン』シリーズ、『めがみめぐり』などのゲームのプロデュースを行っている、野中大三さんによるプロレスコラム!
■マスクマンの魅力、それは生身のアバター体験。
みなさん、こんにちは。
株式会社カプコンでゲームプロデューサーをしている野中です。
世間は新型コロナウイルスの話題で持ちきりですね。外出自粛生活が続いていますが、「自粛」というと何かをガマンしていている感が強くなりストレスが溜まってしまいます。
今回の外出自粛はコロナウイルス封じ込めを目的とした日本全体、強いては世界全体規模の作戦だと解釈して、自分に与えられた任務を全うしよう!と前向きに考えるようにしています。
諦めなければ必ず最後は勝てます。みんなで力を合わせてコロナウイルスから完璧な3カウントを奪いましょう。
さて、今回のテーマは「マスクマン」です。
コロナウイルス感染防止策の基本装備と言えば「マスク」です。マスクと言えばマスクマンでしょう。
プロレスファンのみなさんが止めることのできないこの連想をテーマにゲーム的プロレス論を展開してみます。
■マスクマンは魅力的
マスクマンは皆ものすごく魅力的です。
ザ・デストロイヤー選手、ミル・マスカラス選手、タイガーマスク選手、我らが獣神サンダー・ライガー選手とプロレス界を代表するマスクマンが大勢存在します。
マスクマンの魅力、それはプロレスが持つ最大の魅力「すぐそこにある非現実」を体現する存在だからだと言えます。
プロレスは相手を殴り、蹴り、危険な技を仕掛け、時には二人がかりの攻撃や、反則も繰り出します。
実社会では絶対に認められない行為も、鍛え上げられたプロレスラー同士がリングの中だからこそ許される競技、それがプロレスなのです。
素顔をマスクで隠し、別人格を作り上げて戦いに臨むマスクマンはまさにプロレスの魅力を凝縮した存在と言えるでしょう。
新日本プロレスには現在も魅力的なマスクマンが揃っていますね。
4代目でありながらオリジナルのデザインを入れているタイガーマスク選手。
毎試合異なるマスクをかぶるという驚異のおしゃれ力を発揮するBUSHI選手。
ペイント、カラコンを組み合わせ独特の表情を作り出すエル・デスペラード選手。
「マスク」という要素で光り輝く魅力を生み出しています。
■ゲームキャラも魅力が大切
マスクマンが持つ魅力はゲームキャラに通ずるものがあります。
キャラクター魅力はもちろん性能や容姿に求められます。
かっこよく面白い性能や、かっこいい容姿がキャラクターの魅力の代表的尺度です。
しかし、それら以上にゲームキャラに求められる魅力があります。
それはずばり「アバターとしての共感」です。
ゲームキャラはプレイヤーが操作する際に自分を重ね合わせます。「感情移入」と言われる行為ですね。
感情移入ができないゲームキャラは人形に過ぎません。うまく動かせるか否か、それだけに終わってしまいます。しかし、感情移入が果たせると、ダメージを受けた際に「痛い!」と叫んでしまったり、キャラクターの動きに合わせて体が無意識に動いたりするのです。
プレイヤーがゲームキャラに感情移入し、自分をぴったりと重ね合わせることができれば、それは最高のアバター体験となり、没入感のあるゲーム体験が楽しめるのです。
■マスクマンにはアバターの魅力がある
マスクマンの最大の特徴、それはもちろんマスクですが、裏を返せば「素顔が見えない」ことになります。
顔というものは生まれ持ったもので、個性そのもの、身分証明書のようなものです。
その素顔が見えないマスクマンは、意識的にも無意識的にも自己投影するハードルが低いのです。
マスクマンのマスクの下に自分がいると想像しやすいのです。
これは実験済です。
みなさん、マスクを被って鏡を見てみてください。
そしてその選手のポーズをとってみましょう。
なんという違和感のなさ!想像を絶するしっくり感を味わえます!
強くなったような感覚、なんでもできるような自信が湧いてきます。
素顔を隠すことで自分の殻を破り、そのマスクの選手に自己投影しながらも、新たな自分を見つけたような体験ができるのです。
この感覚がマスクマンへの自己投影、感情移入の証です。
素顔が見えないマスクマンは、あなたがマスクを被ったアバターキャラとして自己投影の対象、つまりは「生身のアバター」となりうるのです。
■感情移入こそマスクマン応援の醍醐味
ぜひ一度応援する選手のマスクを被って応援してみてください。
これは会場でなくても構いません。自宅なら回りの目も気にならないので、おすすめです。
試合だけではなく、新日本プロレスワールドの試合後コメント動画もマスクを被って見ると最高に楽しいです。
選手の息遣いや、身振り手振りを真似してみると、なりきり度は最高潮になります。
素顔を隠し、マスクマンとして生まれ変わったマスクマンのみなさんはファンのみなさんが自己投影する絶好のアバターキャラなのです。
それにしてもマスクマンという存在、プロレスだけの要素にしておくには惜しいですよね。
アーティストや文化人ではマスクマンが存在するので、野球やサッカーなどの他のプロスポーツでもぜひマスクマンが出現して欲しいです。マスクマンの社会進出が進み、様々なジャンルでマスクマンが活躍する、そんな社会になって欲しいなあとマイマスクコレクションを見ながら未来のマスク社会に想いを馳せています。
■野中大三(のなかだいぞう)
株式会社カプコン プロデューサー
『ロックマン』シリーズ、『めがみめぐり』などゲームタイトルのプロデュースを行っている。
プロレス観戦歴、ゲーム歴ともに36年。
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https://twitter.com/daizonnonaka
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