大好評! 株式会社カプコンで、『ロックマン』シリーズ、『めがみめぐり』などのゲームのプロデュースを行っている、野中大三さんによるプロレスコラム!
みなさん、こんにちは。
株式会社カプコンでゲームプロデューサーをしている野中です。
現在、新日本プロレスは新型コロナウイルス感染拡大防止のため大会を自粛しています。
新日本プロレスの試合がないのはものすごく寂しいです。
ですが!
しかし!
僕たちには新日本プロレスワールドがあります!
普段からワールドを毎日視聴している僕にとって試合がない今は“積み試合”を消化するチャンスなのです。
ピンチはチャンス、ということで今回は僕の新日本プロレスワールド活用法をゲーム的視点で展開してみようと思います。
新日本プロレスワールドとゲーム、関連性がないようでものすごくあるのです。
■キーワードは「パースペクティブ」
今回とりあげる新日本プロレスワールドの機能は、過去の試合動画を再生できる、いわゆる「アーカイブ」機能です。
アーカイブというと過去の記録なので、「当時の興奮、感動を改めて体験できる!」というのが一般的な楽しみ方だと思います。
DVDやVHSだと、見たい試合を物理的に掘り出さないといけないし、なにより在庫をそろえるにはそれなりの資金力が必要です。
それが、新日本プロレスワールドだと月額999円で、とんでもない数の試合のアーカイブが閲覧可能になるのです。
過去の試合を掘り起こして視聴するだけでも十分楽しめますが、もう一歩進んだ楽しみ方があるのです。
僕がおすすめする楽しみ方は、過去の試合を立体的につなげて見る、“パースペクティブ”な視聴方法です。
【persepective】 遠近法によった、遠近画法の
パースペクティブとは「パースペクティブな視点」や「パースペクティブな考え方」等で使われることがある英単語です。簡単にいうと、物事を立体的に見る、縦横の情報を関連づけて、記憶、理解する、という考え方です。
終わりのない連続ドラマとも言えるプロレスは、点と点をつなげて線で見ると楽しくなりますが、線と線をつなげて立体で見ることでももっともっと楽しくなるのです。
■ゲームの歴史もパースペクティブで楽しめる
歴史のあるコンテンツはパースペクティブな楽しみ方に適しています。
テレビゲームもまた、僕はパースペクティブに楽しんでいます。
たとえばロックマンシリーズを挙げましょう。
『ロックマン』、『ロックマン2』、『ロックマン3』とシリーズを追ってプレイすることで、ロックマンのゲーム性の進化を見ることができます。これが時間に沿った、“横軸”の楽しみ方です。
パースペクティブな見方とは、“縦軸”の視点を加えることです。縦軸とは同じ時間で起こったできごとを指します。
この場合は、ロックマン1作目が発売された1987年のファミコンソフトを調べてみるのです。
ファミコンが生まれて4年目となる1987年はたくさんのゲームが発売されました。
『熱血硬派くにおくん』『ドラゴンバスター』といったアーケードゲームの移植作品があり、
『ポケットザウルス 十王剣の謎』『飛龍の拳 奥義の書』といったファミコンオリジナル作品も発売されました。
これは1987年のファミコン市場がアーケードゲームの移植作品からファミコンオリジナル作品の過渡期であったことを強く表しています。
ロックマン1作目が生れた1987年はファミコンオリジナルのアクションゲームが次々と生まれている一年だったのです。
各社がファミコンタイトルならではのオリジナリティで勝負をしていた時代、と考えるとロックマン1の当時の魅力、特徴がリアルに見えてきます。この比較が縦軸視点ならではのものです。
時間を追って変化を見る横軸の視点と、同年代に起きたことを見る縦軸の視点を持つことで情報はより立体的になります。
これが「パースペクティブ」な視点なのです。
■新日本プロレスをパースペクティブに楽しむ。
話題を新日本プロレスワールドに戻しましょう。
縦軸と横軸を使った、パースペクティブな楽しみ方をご紹介します!
(1)気になるワードで検索。
今回は今年の『旗揚げ記念日』でメインを戦う予定だった内藤選手を例にします。
今年2月9日、大阪城ホール大会での二冠防衛戦が印象的だったので、過去の大阪城ホール大会を遡ってみましょう。タグで会場名「大阪・大阪城ホール」を使うと過去の同会場大会が表示されます。
(2)検索結果から1試合をチョイス
検索結果を掘っていると気になる試合が出てきました。
2017年6月11日 対棚橋選手のIWGPインターコンチネンタル選手権試合です。
この試合、内藤選手は王者として棚橋選手の挑戦を受けましたが、結果は王座陥落。
防衛ならず、でした。
(3)同大会の別試合をチェック
次に視点を縦軸に移します。
この大会のタブを見ると、気になる試合が見つかりました。
IWGPジュニアヘビー級選手権試合 高橋ヒロム選手vs KUSHIDA選手。
なんと、同じ大会でヒロム選手も防衛戦を行っていたのです。
結果は、KUSHIDA選手に敗れて王座陥落。
なんと、内藤選手とヒロム選手は3年前の同じ日に大阪城ホールでベルトを失っていたのです!
(4)視線を再び横軸へ
視線を時間軸に沿って2020年に戻しましょう。
内藤選手とヒロム選手が交差する瞬間、それは2020年2月19日大阪城ホール大会のメイン後です。そのシーンは「バックステージコメント」で確認できます。
(5)縦横がまじわる瞬間を確認
2017年に同会場でベルトを落とした二人が2020年には揃って防衛を果たし、シングルマッチの提案をしているのです。
内藤選手とヒロム選手の過去エピソードは多々ありますが、この大阪城ホールに関する視点は大きく取り上げられておらず、隠れたネタとも言えると思います。
王者としてきっちり防衛を果たした上での同門マッチの約束。その裏に実は3年前の二人そろっての王座陥落を乗り越えたドラマがあったのです。この点を踏まえて2月11日のメイン後のやり取りを見ると、さらに深いドラマを味わうことができます。
追いかけてみるといろんなところでつながり、ドラマを発見することができるのです。
これが、プロレスを「連続した立体ドラマ」として楽しむ、パースペクティブなワールド視聴法なのです。
是非、みなさんもいろんな検索方法を使って、新日本プロレスワールドをパースペクティブな視点で楽しんでください。プロレスを立体的に見ることでその壮大なドラマをもっとも楽しめますよ!
■野中大三(のなかだいぞう)
株式会社カプコン プロデューサー
『ロックマン』シリーズ、『めがみめぐり』などゲームタイトルのプロデュースを行っている。
プロレス観戦歴、ゲーム歴ともに36年。
Twitterアカウントはコチラ!
https://twitter.com/daizonnonaka
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