2020年1.4&5東京ドーム2連戦で引退を控えた獣神サンダー・ライガーにとって最後のドラディション参戦となった10月27日の大阪・南港ATCホール大会。
当初、ライガーの対戦相手には船木誠勝が組み込まれていたが、腓骨骨折で欠場に。代わって「X」と発表されていたものの、その席は空いたまま当日を迎えた。
第3試合に出場したLEONA。パートナーの倉島信行が冨宅飛駈からバタフライロックでギブアップを奪い勝利すると、最後までリングに残ってマイクをつかんだ。
「大阪の皆さん、お久しぶりです。1年3か月ぶりに復帰することができました。今日、6試合目、メインイベント、僕のデビュー戦の相手を務めてくださった船木さんが負傷欠場となりました。ドラディションのLEONAとして何ができるか考えました。僕は1年3カ月、十分なほど休みました。1試合じゃ足りないんです。メインでも。僕、覚悟してます。期待してください」とXに名乗り出た。
さて、ライガーが出場したメインイベントの6人タッグマッチは「ヒロ斉藤デビュー40周年記念試合」と銘打たれていたが、ライガーからの視点で眺めると、実にプレミアムな組み合わせでもあった。
ヒロとのタッグ結成は、過去2度しかない。しかも1度は素顔時代。同じコーナーに2人が並ぶシーンは実に15年半ぶり。時期こそ異なるが、ともにカルガリーで故ミスター・ヒト(安達勝治)さんからコーチを受けた“兄弟弟子”タッグでもあった。
藤波辰爾との対戦も過去にシングルでは2度だけで、うち1度は「G1 CLIMAX」公式戦。場所は大阪だった(2000年8月7日、大阪府立体育会館)。タッグでも10度しかないのに加え、ライガーが唯一ヘビー級の王座(IWGPタッグ)に挑戦した相手が藤波だった(藤波、西村修組vs武藤敬司、ライガー組=2001年10.19、別府ビーコンプラザ)。
さらに、藤原喜明との対戦はシングルでは過去に2度のみで、うち1度は素顔時代。ここ最近は対戦も多くなっているが、それでもレアであることに変わりない。
さらに、“藤波2世”LEONAとは初対決。彼からすれば、日本マット史に名を残す伝説に、“生きているうちに”触れる最初で最後のチャンス。ここで手を挙げなければ、悔いを残すとの思いからの対戦直訴でもあった。
越中詩郎にしても、藤波が日本に定着させたジュニアヘビー級というジャンルを初代タイガーマスク、ザ・コブラを経て花開かせた。それを受け継いだのがライガーであり、『BEST OF THE SUPER Jr.』『SUPER J-CUP』に昇華させていったのだから、欠くことのできない存在だ。
腓骨骨折で欠場となったことで船木誠勝との再会マッチが流れてしまったのは残念だが、それでも引退前のプレゼントとでもいうような心憎いマッチメークである。
そんなお祝いムード、送別ムードをぶち壊したのがLEONA。試合前、ライガーが握手を求めて差し出した手を「パチン!」とはたいたものだから、一瞬にして獣神に怒りの火がついた。
それはパートナーであるヒロ、越中詩郎がライガーを自軍コーナーに押し戻し、先発で飛び出そうとするところを制して越中が先発で飛び出したほどだった。
越中が間に入ったことでライガーの怒りもクールダウンされたか、LEONAとのマッチアップでは腕の取り合いやグラウンドでの攻防など、静かな立ち上がり。しかし藤原喜明との師弟対決を経て、越中がLEONAを場外戦に誘うと、一転してラフな展開に。
スライディングキックをお見舞いし、越中のエプロンを走ってのヒップアタックをアシスト。さらに場外マットを剥がして、2人がかりのパイルドライバー。救出に飛び込んできた藤原を鉄柱にぶつけた。
リングに戻ってからも動けないLEONA。ライガーはコーナーに控える藤波に対し、「こんなもんか、LEONAは!」と何度も叫んだ。ローンバトルを強いられたLEONAは、ライガーにチョップ、フライング・フォアアームを返すのがやっと。藤原のワキ固めに捕らえられるも、越中がカットに飛び込んできて大きなダメージは負わず。ヒロに対して丸め込みの連続で逆転フォールを狙ったLEONAだったが、スパインバスターからのセントーンでカウント3を聞いた。
残念ながらライガーと藤波の絡みは、ドラゴンスリーパーに捕らえられた越中の救出に飛び込んだ1度だけとなった。
試合後にはリング上で、“兄弟子”であるヒロに「40周年おめでとうございます。僕は来年の1月に引退します。(僕は)30周年。それより10年多いヒロさん、この先50周年、60周年、なんなら70周年いっちゃおう! これからも第一線で活躍してください。本日は本当におめでとうございました」と言葉を贈り、その後、欠場となった船木がリングに上がってヒロに花束贈呈。記念撮影でライガー最後のドラディション参戦は幕を閉じた。
■10月27日大阪・南港ATCホール
ドラディション「DRADITION 2019 RAGING OUTLAW TOUR〜HIRO SAITO 40th anniversary」
[ヒロ斉藤デビュー40周年記念試合 in OSAKA~スペシャル6人タッグマッチ(60分1本勝負)]
○ヒロ斉藤、越中詩郎、獣神サンダー・ライガー(12分55秒、セントーン→片エビ固め)藤波辰爾、藤原喜明、X=LEONA
■バックステージでのライガーのコメント
ライガー「リング上でも言った通り、僕は30年という節目で、来年の1月4日、5日で引退します。ヒロさんはそれよりも10年多い40周年。まだまださらにその上を、あのコンディションならいくでしょう。
45、50……ひょっとしたら60いったらどうするよ? っていうぐらいコンディションいいし、藤原さんもやってて芯がしっかりしてるっていうか、“(攻撃しても)なんで効かないんだろう?”っていうぐらい頑丈だ。心は折れなし。年齢とかキャリアがどうこうじゃなく、結局、レスラーは内面だよな。“負けてたまるか!”っていう気持ち。改めて、ああいう僕より先輩、ベテランの人と試合するっていうのは勉強になります。それから、LEONAのクソ野郎に言っといて。
お前、10年早いって。顔じゃねえって。だいたい、今日のシックスメンに入ったこと自体間違いだ。仮に、もし会社から言われっとしても、『僕はそんなもんじゃないです。辞退します。無理です』って言えよ。
次、会ったら潰すぞって言っとけ、ガキに。お前、ドラディションの囲いの中にいるんだよ、結局。囲いから出てみいや。結局、あいつは囲いの中でギャーギャー言ってるだけ。誰かが反応したらさあっさと隠れるんだよ。藤波さんの背中とか、ドラディションの背中に。出て来いや。俺はいつでも待ってるぞ。
俺はリング上で叫んだよ、『LEONA、こんなもんか?』って。デビューしてから何年やってんだよ? 下手クソなドロップキックやるしよ。スタミナ切れてんのか、足腰ふらふらしてるし。あれで“私はプロです”? レスラーになりたいって直訴した? ふざけんな! 顔じゃねえよ、バーカ!
ヒロさんとのタッグ? それは別に今まで組んだことがあろうがなかろうが、ベテランだよ。リングに上がれば、逆にずっと闘ってたから阿吽の呼吸が生まれるよ。そんなことはどうだっていい。あのバカに言っとけ。辞めろって。早いうちに転職した方がいいよ。いつまでもズルズルやってんな、バーカ!」