10月21日(月)、都内・新日本プロレス本社にて、新日本プロレスがアメリカに設立する新会社の発表記者会見が行なわれた。
まず、会見冒頭に映像が流れ、アメリカのLA道場でコーチを務める柴田勝頼が「新日本プロレスはついにアメリカ法人を設立します。我々LA道場、選手一同、ますます頑張って参りますので、今後ともご期待ください! 以上!」と力強くコメント。
続いて菅林直樹・新日本プロレス会長が以下のコメントを発表した。
★『NEW JAPAN Pro-Wrestling of America Inc.』公式Twitterアカウントはコチラ!
■菅林直樹会長のコメント
「先ほど柴田選手のコメントにもありましたとおり、弊社はこのたび、アメリカに新会社を設立する運びとなりましたので、まずは私のほうから新会社の概要をご説明さし上げます。
まず社名ですが『NEW JAPAN Pro-Wrestling of America Inc.』です。次に役員構成ですが、Chairmanとして私、菅林。CEOとして大張高己。CFOとして西澤道昭。COOに手塚要、という体制になります。
所在地は現在、LA道場のありますアメリカのカリフォルニア州です。設立年月日は2019年11月を予定しております。なお、出資比率については弊社の100%子会社といたします」
続いて新会社のCEOとなる大張高己が、新会社について以下のとおり説明を行なった。
■大張高己CEOのコメント
「私、新日本プロレスで経営企画部長をやっております。本日はアメリカ進出に向けた考え方ですとか、戦略な意味合いですとか、そういったところを簡単にご説明さしあげたいと思います。
まずアメリカへの進出だけではなく、海外への弊社の進出というのは、かつてからじつはございました。“Phase1”というふうに切るとすれば、そのPhase1は選手を派遣するということです。彼らの戦いぶりを観て、新日本プロレスを認知していただく。理解していただく、好きになっていただくという営みがメインでございました。
“Phase2”ですが、こちらは記憶に新しいマジソン・スクエア・ガーデンのモデルが象徴的かと思います。まさに共同開催というかたちで、アメリカであればアメリカの団体と手を組んで。我々がやってきたことというのは、もちろん興行を通じてお客さまに喜んでいただくということなんですけど、その一方で我々が本当にもう一段、アクセルを踏み込んでいいのかどうか。社内的にもマーケットを検証していくという位置づけでございました。
そしていよいよ、“Phase3”に今回入って参ります。“Phase3”は会社を設立して、地域に密着してプロレスファンが、とくにアメリカのプロレスファンが日常で新日本プロレスを観られるような、そんな体制作りを進めていきたいと考えているところです。
少しここで、今後の戦略について触れさせていただきます。環境の変化としましては、社名はあえて出しませんが、一強と言われる時代が今度は二強と言われるのでしょうか。アメリカに巨大資本を持った新規参入団体がございました。彼らがいま繰り広げている競争。こちらが単純なファンの奪い合いであれば、それほど魅力はないのかもしれません。が、一生懸命に幅を広げていくといいますか、新しいファンを開拓しようというふうに健全な競争を繰り広げているものだと思っています。そういう意味では競争を通じて、いまアメリカの市場は拡大をしつつあるのかなという認識でおります。
一方で弊社ですけれども、私もダラスだとかそういう興行に付いて回っておりますが、アンケートを取らせていただくことがありました。やはりストロングスタイルというものへの愛着であったり、それからレスラーのレベルの高さへの愛着であったり。ファンの方々は我々新日本プロレス、向こうではニュージャパンと呼ばれていますけれど、その名前に非常に強い思い入れを抱いてくださっております。
そして我々が持っている、所属している選手のスキルであったり、彼らを鍛え上げ、生み出していくような道場のシステムであったり。いまではLAに道場がございますけれども、野毛とLAで競い合いながら育成をしているところだと思います。
そして、最後にファンの目線ですね。ちょっと触れましたが、ダラスでアンケートをさせていただきましたけれど、なんと7割のファンが『アメリカのほかの団体を長らく観てきて、ここにたどりついたんだよ』と言ってくれています。向こうのスタイルのプロレスではなくて、新日本プロレスが観たくて来ましたと。ある意味、見飽きたという人も多かったように認識しています。
そういう意味では、プロレスを子どものときから観ているけれども、突き詰めていくと新日本プロレスにたどりつくというファンが、アメリカには非常に多いという状況がわかってきました。
いままでの振り返りをしますが、環境が変化をしてきて我々の魅力度が上がったと感じているところです。じゃあ、どうしていくのか。いろいろな入り方があると思います。私たちは創業以来、大事にしてきた各地での興行をアメリカでも展開していきたいと思います。アメリカでも興行を軸にしたビジネス展開を大事にしていこうというふうに考えております。
ですから、アメリカのプロレスファンにとっても、日本のファンと同じように新日本プロレスが身近に感じられる『やってるなら、行ってみようかな』というようにプロレスを観に来られる。そんなかたちのビジネス展開をアメリカでも行なって参ります。
さて、先ほど菅林のほうから名前の発表がございましたけれど。じつはここも紆余曲折というか、議論がいくつかありました。本当に“ニュージャパン”なのかと。“ジャパン”と付けていることが、ちょっとローカル色が強いんじゃないかという話も、内外から聞こえてくることがありました。でも、我々はあくまでも、ファンのみなさんが第一に思ってくださってる新日本プロレスを、そのままアメリカにお届けしようと、そういう考えから“ニュージャパンプロレスリング”という言葉はそのままに、最後に“アメリカ”という地域名をつけさせていただくこととしました。
なお、15時の段階で私たちは新しいツイッターアカウントを開設しています。“@NJPWofAmerica”。こちらにはアメリカのファンの方々の声として『日本の情報もとても大事なんだけど、その中にアメリカの情報が埋もれてしまって探しづらい』というコメントもございましたので、アメリカでの試合に関する情報を中心にピックアップしていくような、そんなアカウントとして運営して参ります。ぜひフォローをお願いします。
次に興行のエリアでございます。日常に浸透すると言っておきながら、年間に一回や二回しか興行がないようでは有言実行と言えませんので、私たちはこのアメリカの広大な大地を、概ね5つのエリアにわけて考えることにしています。西海岸ですと6つの都市、4つの州。中部ですと7つの都市、6つの州といったかたちで、概ねこのエリアをカバーして我々は興行を打っていく計画でございます。
我々の算定によりますと、アメリカにお住いの7割のファンの方が新日本プロレスの興行に参加できるというような計画になっております。まずやはり興行を観ていただかなければ、SNSでのつぶやきも出ませんし、『新日本プロレスワールド』への加入もなかなか進まないと思います。ですので、手軽に近くの興行に参加できるというものを推し進めて参ります。
ここまでお話しすると、日本のファンのみなさま、それからアメリカ以外の国々のファンのみなさまが、ちょっと置いていかれた気分になると思うのですけれど、そういうことではございません。国内のファンのみなさま、アメリカ以外の国々のファンのみなさまにもメリットがございまして、それを簡単にご説明差し上げます。
我々はいままでLA道場をまさに“道場”として使って参りましたが、今度はそこにオフィスも構えます。ビジネスとして基盤を固めることになります。それを通じて、LA道場での選手の育成であったり、さらにはトライアウトもやっています。道場キャンプというのもやっています。それも拡充するかたちで選手の発掘の強化であったり、それから海外の興行を増やしていくということは「新日本プロレスのブランドが好きなんだけれど、日本にわたってまではレスリングができない」ですとか、「アメリカに住んだまま、新日本ブランドで活躍したい」という選手の参戦機会も増えることになります。
ですから、すべてのファンのみなさまにさらに喜んでいただけるような対戦カードや、新しい顔ぶれというものが、このアメリカ展開を通じて実現するものと思っておりますので、みなさま、今後の新日本プロレスにぜひご期待ください」
■質疑応答
――アメリカの興行も増えてきている中、日本とアメリカでの違いなどはありますか?
大張 私も1年間ぐらいですね、ずっと対応して参りました。先ほど申し上げた通り、アンケートもさせていただいたんですけど、まず幅が広いですね。お客様の年齢層、子供から大人まで、やはり競合の団体がテレビを通じて、ファミリーに訴えかけてきた効果があるので、非常に幅が広いです。それから男女比率で言うと、若干男性の方が多いですね。
我々で言うと、6:4ぐらいが男性女性の比ですけど、8:2ですとか、それに近いですね。ただ、年齢と許容度と言いますか、いろんなプロレスのスタイルを楽しんでらっしゃるなという気がします。年齢も若くていらっしゃいますので、我々のファンの方々よりも5歳~10歳お若いですね。
ですから、テレビを観るというよりも、じつはデジタルな世界で情報収集されるケースが多いのかなと思いますね。先ほどTwitterのアカウントを宣伝してしまいましたけど、ああいう形でデジタルな面でも、デジタルは国境を越えますから、我々はアメリカのファンに情報を発信していきたいなという風に考えてます。
――直近で言いますと、『SUPER J-CUP』や東海岸3連戦など連戦も増えてきましたが、今後の日本でのシリーズのような2週間~3週間の長期のシリーズもアメリカで展開していく予定はありますか?
大張 先ほどアメリカ全土の地図をお出ししたと思うのですが、楕円形のエリアですね。さすがに西海岸でやった翌日に東海岸に飛ぶというのは辛いので、西海岸でやるシリーズですとか、テキサスでやるシリーズですとか、そういったものは考えていくつもりでおります。
――いまの話に付随するのですが、これまでは日本のツアーがオフの時に海外で興行をやってきましたが、今後、日本のツアーをやりながら同時に海外でもツアーをやっていくことはありえますか?
大張 基本的なスタンスは日本のツアーのオフの時間にこれまでやってきています。ただ、お客様のご要望が強いケースであったり、そういった場合にはもしかしたら被せる形でやることもありえるかもしれません。
――今後の短期的な目標と長期的な目標というのは?
大張 いま、興行の開催規模で言うと、2,000名ですとか、時には1,000名入るようなキャパとか、前半でも申し上げましたけど、創業の精神と言いますか、我々は興行会社としてまずお客様でいっぱいの会場を作ること。で、そのお客様の熱を外に広げていただくような営みを仕掛けていこうと思いますから、まずは会場をいっぱいにすること。そして、中期的にはもう少し大きな会場をおさえてコンスタントにできるような会社にしていきたいと思ってます。
――年間の予定興行数などはありますか?
大張 振り返りますと、カレンダーイヤーで言うと2018年が一桁だったと思うんですね。で、2019年は二桁に上がっています。来年は今年が12、3興行だとすると、その倍ぐらいいけるかどうかを、まさに隣にいる菅林と話しているところでございます。
――観客動員の目標などはありますか?
大張 いまのところはまだその数字的なところは定めておりません。
――海外興行は新日本プロレスワールドで観戦することはできますでしょうか? また、LA道場を主体とした放送のない道場マッチなども考えていますか?
大張 まず最初の部分ですけど、なるべくワールドで、できればライブで、そうでなくともタイムシフトでご覧いただけるように尽力したいと思います。で、道場マッチという話がありましたけど、まだここは未定なんですけども、LA道場はなかなか広いスペースがございまして、可能性としてはありえるという風に考えております。
――海外興行が増えることで国内の興行が減ってしまうのではと危惧されるファンの方もいると思いますが、その点に関してはいかがですか?
大張 それを減らすことは考えておりません。
――ということは、新日本プロレスの年間興行数が増えるということでよろしいでしょうか?
大張 そうなると思います。
――現地でのテレビ交渉などはこれからでしょうか?
大張 現在、『AXS TV』というアメリカのテレビ局で放映はしていただいておりますので、それが続いていくものという風に考えております。我々は今度、アメリカで事業をやって興行を増やしていく一つの理由は、やはりアメリカ時間で、アメリカ時刻で興行をやることで、なるべくリアルタイムにテレビも通じてご覧いただける機会を増やそうという考えではおりますので、そういったところも向こうのテレビ局と話し合いながら進めていきたいと思っております。