株式会社カプコンで、『ロックマン』シリーズ、『めがみめぐり』などのゲームのプロデュースを行っている、野中大三さんによるプロレスコラム!
今回は「強襲! クリス・ジェリコはレイドボスだ!!」目前となった6.9大阪城ホール決戦のメインイベントに言及!
★6月9日(日)大阪城ホール大会の“情報まとめ”ページはコチラ!
■『SUPER Jr.』のある時代に生きていることを感謝せずにはいられません!
こんにちは。株式会社カプコンでゲームプロデューサーをしている野中です。
今年の『SUPER Jr.』は熱かったですね!
令和初となった『BEST OF THE SUPER Jr.』は文字通り新たな時代の幕開けを感じさせる最高の『SUPER Jr.』でした。
無敗でAブロックを勝ち抜けた鷹木選手の怒涛の勢いはまさに昇り龍そのものだったし、それを下したオスプレイ選手は新日本プロレス愛を背負ったプロレスファンの王様の如き輝きを放ちました。
優勝決定戦の攻防は観るものの息もまばたきも奪うようなハイスピードハイクオリティな一戦でした。
全大会でリーグ戦公式戦がメインイベントで組まれ、全試合が新日本プロレスワールドでLIVE配信されました。世界中のファンが熱い気持ちのままリーグ戦を楽しめたのではないでしょうか。
僕もシリーズ中は寝不足の日々でしたが、高いテンションで楽しめました。
『SUPER Jr.』のある時代に生きていることを感謝せずにはいられません!
■クリス・ジェリコ選手の存在、それはまさしく「レイドボス」です!
さてさて、『SUPER Jr.』の後もビッグマッチは続きます!
いよいよ迫ってきました、上半期の大一番、『DOMINION 6.9 in OSAKA-JO HALL』!
世界中の新日本プロレスファンはもちろん、大阪府民が一年で一番熱狂する大会です。
我々、大阪府民にとっては十日戎と『DOMINION』は欠かすことのできない大切な年中行事なのです!
今年の『DOMINION』も熱いカードが並びましたが、今回はその中でもメインイベントでIWGPヘビー級王座に挑戦する、クリス・ジェリコ選手についてゲーム的プロレス論を展開してみたいと思います。
さっそく結論からですが、
クリス・ジェリコ選手の存在、それはまさしく「レイドボス」です!!
レイドボスとはなんぞや?聞いたことがないぞ?という方もいると思いますので、まずはレイドボスの説明からしましょう。
レイドボスの「レイド」とは英語で「強襲」という意味です。つまり、突然襲い掛かってくるボスキャラのことです。ゲームのボスキャラと言うと、ステージの最深部でプレイヤーがやってくるのを待っている存在でしたが、ネットワーク接続がゲームの主流となった現代では、ボスに挑戦できる期間が限定されているレイドボスという存在が常識となっています。かつてのボスと違ってレイドボスは戦える期間が決まっていて、それをゲーム運営側、つまるところボス側の都合で決められています。
そして大抵の場合はボス側の都合で突然襲ってくるのが、レイドボスです。
いつ現れるかわからないのでプレイヤーは日々、その準備をしながらゲームプレイを行い、ひとたび現れると全力でレイドボスとの戦いに挑むことになります。
この「向こうの都合で突然襲ってくる」点が、ジェリコ選手にぴったり当てはまりると思いませんか?
ジェリコ選手は突然現れて、タイトルマッチ宣言をします。ファンはジェリコ選手が一体いつ現れるのかドキドキしながら待つ、という習慣さえついてきました。
2017年11月の大阪府立体育館大会で当時のIWGP USヘビー級王者のケニー・オメガ選手にVTRで挑戦宣言して以来、新日本プロレスマットでのジェリコ選手の歴史は強襲の歴史と言えます。
VTRでの強襲はもちろん、リアル強襲も行うのがジェリコ選手のスタイルです。
2018年のイッテンヨン前にケニー・オメガ選手を襲い、そのケニー戦後の2018年1月5日後楽園ホール大会では内藤選手を強襲します。その後もEVIL選手、内藤選手への強襲を続けた勝手気ままなふるまいはまさしくレイドボスそのものです。
そして今回のIWGPヘビー級挑戦もVTRでの強襲でした。
このVTRですが、よくよく考えるとハチャメチャです。VTRのどこにもオカダ選手の名前を出していないのです。つまり、オカダ選手が勝とうがSANADA選手が勝とうが関係なく、IWGPヘビー級への挑戦を宣言する魂胆だったのです。
誰が勝っても次の挑戦者はオレだ!という勝手すぎるやり方ですね。
5月4日のIWGP戦ですが、オカダ選手の防衛とSANADA選手の王座戴冠では全く状況が違います。新日本プロレスの流れを大きく左右する一戦だったのは間違いなかったのですが、どちらが勝つかなど全く考えていないのです。さすが世界のスーパースターは空気を読むということを全くしません。
さて、たった1本のVTRでオカダVSジェリコの空気を作ったジェリコ選手は、宣言後に「ペインメーカー(苦痛を与えるもの)」と名乗りだし、オカダ選手に心理戦を仕掛けています。言うまでもなくレインメーカーをオマージュしたフレーズでオカダ選手への挑発行為です。オカダ選手が対戦相手と決まるやいなや次の口撃を仕掛けるあたり、強襲はお手の物です。
前哨戦が全く組まれなかったこの一戦、接触なき前哨戦は完全にジェリコ選手のペースになりました。オカダ選手はジェリコ選手お得意の強襲パターンを受け止めたうえでしっかり防衛することができるのか注目です。
さて、ゲームのレイドボスに話を戻します。
レイドボスにはもうひとつ特徴があります。それは、複数プレイヤーVSボス、という対立構図です。
従来のボスは一人のプレイヤーが挑むものでしたが、多くのプレイヤーがネットワークでつながるようになった今、複数のプレイヤーが協力して戦うのがレイドボス戦の一般的なルールです。
この点もこの一戦に非常に似たシチュエーションだと言えるのです。
ジェリコ選手の挑戦を受けるのはオカダ選手ただ一人なのに、複数プレイヤーVSボスに似ているとはどういうことか?
ファンの多くの方なら気づいていると思われますが、ジェリコ選手と戦うのはオカダ選手とオカダ選手のファンなのです。ニュージャパンカップで最高の内容と最高の結果を出して見事復活したオカダ・カズチカ選手はプロレスの殿堂・MSG(マディソン・スクエア・ガーデン)でジェイ・ホワイト選手からIWGPヘビー級王座を奪還しました。
今のオカダ選手は、オカダ選手史上最高の支持率と言えます。
かつての生意気な若者のイメージはなく、ファンから新日本プロレスの現在と未来を託される頼もしさを備えました。今のオカダ選手まさに令和時代の新ヒーローになろうとしているのです。そこに襲い掛かる、傲慢極まりないレイドボス、クリス・ジェリコ選手。
ジェリコ選手はついにIWGPヘビー級王座に挑戦となります。これは新日本プロレスの本丸に侵攻をしてきたことを意味します。オカダ選手の敗北、IWGPヘビー級王座からの転落は新日本プロレスがジェリコ選手に乗っ取られたことを意味します。
新日本プロレスファンがオカダ選手に想いを重ねてジェリコ選手迎撃に挑む、この構図こそがレイドボス戦を彷彿とさせるのです。
難敵ジェリコ選手の強襲を退け、大阪城ホールに金の雨を降らすことができるのか、オカダ選手に想いを寄せ、声援をぶつけて『DOMINION』を楽しもうではないですか!
■野中大三(のなか・だいぞう)
株式会社カプコン プロデューサー
ロックマンシリーズ、めがみめぐりなどゲームタイトルのプロデュースを行っている。
プロレス観戦歴、ゲーム歴ともに35年。
今年ももちろんドミニオンは観戦します。
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