株式会社カプコンで、『ロックマン』シリーズ、『めがみめぐり』などのゲームのプロデュースを行っている、野中大三(のなかだいぞう)さんが、飯塚高史選手の引退に関して特別寄稿!
『NEW JAPAN ROAD ~飯塚高史引退記念大会~』
2月21日(木) 17:30開場/18:30開始
東京・後楽園ホール
★チケット情報/★対戦カード情報
※当日券は「立見」のみ16:00より発売!(※お1人様最大2枚までの販売とさせていただきます)
★飯塚高史引退記念大会を新日本プロレスワールドで生中継!
■「愛すべき敵キャラ!飯塚高史!」
ゲーム的観点で飯塚高史選手を見るなら、敵キャラの鑑です!
2月21日後楽園ホール大会で飯塚高史選手が引退します。飯塚選手と言えば2008年に天山選手との友情タッグを裏切ってヒールになり、以来G・B・H、CHAOS、鈴木軍とヒールユニットを渡り歩いてきた怪奇派ヒールレスラーです。アイアンフィンガー・フロム・ヘルを手にして、乱入、反則お構いなしの狂乱ファイトを繰り拡げてきました。
対戦相手だけではなく観客も恐怖で震えあがらせる大悪役レスラーなのです。
そんな大悪役レスラーの飯塚選手ですが、ゲーム制作の観点から見ると、敵キャラの素晴らしいお手本と言えます。
ゲームにとって敵キャラはなくてはならない存在です。倒すべき存在であり、攻略対象となるのが敵キャラです。プレイヤーは敵キャラにいかに倒されずにいかに倒すか、このシンプルなかけひきはゲームの原理原則となっています。
敵キャラに求められる要素は3つあります。
「悪い」「攻撃的」「何をするのか一目でわかる」の3つです。
まず一つ目の「悪い」。これが一番大切ですね。世界や大切な人に危害を加えそうな雰囲気を醸し出していること。一見して「こいつは悪いやつだ」とわかることが大切です。
二つ目の「攻撃的」はゲームの原理に作用します。プレイヤーキャラを狙って攻撃してくることで、ユーザーは攻撃される前に攻撃しないといけない、という敵キャラとの関係性が理解できるようになります。
最後に三つ目の「何をするのか一目でわかる」もとても重要です。銃や弓を持っている敵なら長距離攻撃をしてくるとわかるし、剣や斧を持っていれば近距離攻撃をしてくるとわかります。一目見るだけでその敵がどのような性質を持っているのか、どういう危害が迫っているのか、どういうルールのゲームなのかがわかるのです。この3つのどれかを欠いてしまうと、敵か味方かわからずゲームは盛り上がりに欠けてしまいます。
敵キャラはゲームを盛り上げる立役者なのです。
敵キャラ制作の3要素を飯塚選手に当てはめてみましょう。
まず「悪さ」です。頭と眉を剃りあげた風貌で、「ウガァーー!」と奇声を上げて反則技を繰り出す。完全に悪い人です。「悪さ」は満点です。
次に「攻撃性」です。客席から暴れながら登場する飯塚選手は攻撃性むき出しです。油断していると観客ですら襲われてしまいます。「攻撃性」も満点でしょう。
最後に「何をするのか一目でわかる」の点ですが、愛用のアイアンフィンガー・フロム・ヘルはそれを凶器に使うことがわかるし、拘束マスクは噛みつきを抑え込まれていることが一目でわかります。見た目から危険性がにじみ出ていますよね。この項目は満点以上なのです。
結論として、飯塚選手はゲーム的敵キャラの必要要素を完全に満たしている、と言えるです。
しかし、敵キャラは憎まれ役で終わるだけではありません、「愛すべき敵キャラ」になることもあるのです。
『ロックマン』シリーズのメットールや『魔界村』シリーズのレッドアリーマ―などが例に挙げられます。
愛すべき敵キャラに必要な要素、それは「同情の余地」と言えます。
どんなに悪くて、どんなに憎たらしくても、同情の余地を持つことでキャラへの感情移入は敵味方の垣根を越えて愛情に発展するのです。
飯塚選手の同情の余地、それは「友情タッグの崩壊」に他なりません。G・B・Hを追放された天山選手を救出して結成したタッグなのに、実は裏でG・B・Hと結託していた飯塚選手は2008年4月27日の大阪府立体育会館で行われたIWGPヘビー級タッグ選手権試合で天山選手を裏切り、友情タッグを崩壊させます。その直後、飯塚選手は今の怨念坊主の風貌になり、言葉も心も失ってしまうのです。心から悪に染まっていたのなら、そこまでの変化はなかったはずです。姿も心も変えることでようやく友情タッグを捨てることができたのだと僕は捉えています。
天山選手への裏切りへの悲壮な覚悟が、後の怨念坊主のファイトスタイルからにじみ出ているではありませんか!
このドラマこそが「愛すべき敵キャラ」飯塚高史を完成させたのです。
札幌2連戦、そして因縁の大阪府立体育会館では天山選手とタッグマッチで当たりましたが、友情タッグを復活させることは叶いませんでした。飯塚選手の正義の心は戻るのか、友情は復活するのか。
敵キャラは最後まで憎まれ役なのか、愛されてエンディングを迎えるのか。
2月21日の引退の瞬間まで全く目が離せません。
少し早いメッセージになりますが、32年間、ありがとうございました。最後の最後までどんな展開になるのか楽しませてもらいます!
みなさんも愛すべき敵キャラの最後の雄姿を応援しましょう!
■野中大三(のなかだいぞう)
株式会社カプコン プロデューサー
「ロックマン」シリーズ、「めがみめぐり」などゲームタイトルのプロデュースを行っている。プロレス観戦歴、ゲーム歴ともに35年。
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