プロレス評論家・斎藤文彦によるクリス・ジェリコ直撃インタビュー(後編)。今回は内藤哲也、EVILとの闘いをふり返りながら、ジェリコはジェリコが考えるところの“プロレスの定義”について語った。
聞き手/斎藤文彦
撮影/タイコウクニヨシ
※このインタビューは2018年12月16日、新日本プロレス事務所で収録。
※以下、コラムの「序盤部分」をWEBで無料公開!
■ぼく自身のなかにはIWGPヘビー級王座のチャンピオンになるというもうひとつの目標もあります
――チャンピオンベルトを粗末に扱った内藤哲也はバカstupidだというコメントについて、もう少しくわしく説明してください。
ジェリコ この闘いにはいったい何が賭けられているのか。この闘いにはいったいどういう意味があるのか。この部分をコンスタントにオーディエンス(観客)に提示しつづけなければならないということです。10.8両国国技館でぼくがEVILを襲ったときのシーンを思い出してください。黒いケープを着て、マスクをかぶり…。
――マスクは黒いマスク、白いマスクの2枚をかぶっていた。
ジェリコ そうです。全身を覆う大きな黒いケープを身にまとい、二重のマスクをかぶり、マスクの下の素顔には黒いメーキャップをほどこし、しかも、ケープの下には白いIWGPインターコンチネンタル王座のチャンピオンベルトを腰に巻いていた。そんな動きにくい状態でリング内にすべり込んで大暴れするわけです。動きにくかったですよ。でも、このシーンではぼくは白いチャンピオンベルトを必ず腰に巻いていなければならない。
なぜか? それはぼくがチャンピオンだからです。チャンピオンはだれで、チャンレンジャーはだれで、これはチャンピオンシップを争っている闘いなのだということをライブの観客、映像を観ている視聴者といっしょに確認する作業です。
もちろん、チャンピオンベルトは“小道具prop”です。小道具だからこそ、試合のテーマを明確にするために、お客さんがチケットを買ってアリーナに足を運びたくなるように、ファンのみなさんがそれを話題にするように、チャンピオンベルトという小道具は可能な限りオーディエンスの目の届く場所にレイアウトしておかなければならない。
レスリング・ビジネスでいちばん大切なものはチャンピオンシップであり、チャンピオンベルトです。それをどうでもいいもののように粗末に扱うということはありえません。
ぼく自身のなかにはIWGPヘビー級王座のチャンピオンになるというもうひとつの目標もあります。そのチャンスを手に入れるまでは、現段階(※このインタビューは2018年12月16日に収録)でいちばん大切なものはIWGPインターコンチネンタル王座のチャンピオンベルトです。なぜなら、ぼくがそれを腰に巻いているわけですから。これはだれにも渡さない。内藤はそういうふうには考えていないようですが、だとしたら、いったいなんのために闘っているのですかと聞きたい。
――オールドファッションなプロレス哲学ですね。
ジェリコ たしかにオールドファッションなのかもしれないけれど、プロレスというもののベーシック・アイディアはそこにあると考えます。タイトルマッチの記者会見で内藤はぼくのことを「プロレスラーとしてピークを過ぎた人間」とコメントしましたね。
だとしたら、プロレスラーとしていまピークにある内藤は、プロレスラーとしてピークを過ぎたぼくに負けてチャンピオンベルトを失ったことになりますね。彼はそのまぎれもない事実をメッセージとしてファンに向かって発信してしまった。発言内容にはもっと頭をよく使ったほうがいい。ぼくはプロレスラーとしてはピークを過ぎた人間かもしれないけれど、そういうキミよりは1000倍もベターなんだよ、という結論が導き出されます。
■ぼくの目には、オカダと棚橋のあいだにはさまれて、内藤がスタック(立ち往生)しているように見えたんです
――しかし、新日本プロレスのメンバーのトップグループのなかでケニー・オメガのすぐあとの対戦相手としてジェリコ選手が興味を持ったのが内藤哲也だったわけですよね。
ジェリコ 内藤はグレート・キャラクター。自分の軍団を率いた新日本プロレスのベスト・キャラクターです。エロガントarrogant(ごう慢・横柄)で、コンフィデントconfident(自信に満ちた様子)で、グレート・プロモ(マイクアピール)ができるグレート・パフォーマー。彼を観たとき、スーパースターのバイブVibes(強い印象、波動)を感じ、彼はほんとうにああいう人物なんだろうなと、そのアテテュードattitude(姿勢・態度)をぼく自身がホンモノと感じることができた。
――スーパースターとしてのオーラを感じた?
ジェリコ おもしろい状況だなと感じたわけです。新日本プロレスにはオカダ・カズチカ、内藤哲也、棚橋弘至という3人のスーパースター、3人のメインイベンターがいますね。ぼくの目には、オカダと棚橋のあいだにはさまれて、内藤がスタック(立ち往生)しているように見えたんです。ぼくが彼に興味を持ったのはその部分からですね。
ぼくがルーキーだったころ、カルガリーのTVテーピングでこんなことがありました。対戦相手は“ブルドッグ”ボブ・ブラウンという大ベテランでした。ぼくはマイクを持って「おい、オールド・マン! この年寄り! ジジイ!」とアピールしました。
そのあとの試合でぼくは負けた。ぼくはぼく自身が揶揄したオールド・マン、年寄り、ジジイに負けたということです。ぼくがその試合に勝ったとしても、ぼくはオールド・マン、年寄り、ジジイに勝ったことにしかならない。どちらにしてもぼくのコメントではダメだったのです。It doesn’t help either way.
ぼくは内藤に対して「キミは新日本プロレスのビッグスターだ」「キミは現代のベスト・パフォーマーだ」とそのポジションとステータスを評価したうえで「でも、オレはそういうキミに勝ったぞ」「オレのほうがベターだぞ」と発言する。対戦相手を評価し、その試合の意味、その試合結果の意味するところをきっちりとオーディエンスに伝えることが重要なのです。このロジックはぼくの28年のキャリアで培われてきたものです。
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