プロレス界随一の論客・“GK”金沢克彦氏の独特の視点から、現在進行形の新日本プロレスのビッグマッチの感想を続々レポート(不定期連載)!!
今回は「ドーム史上に刻まれる素晴らしい一夜」ケニーvs棚橋の“イデオロギー闘争”~1.4東京ドーム決戦を大総括!」
※以下、コラムの「序盤部分」をWEBで無料公開
■過去15年ほどを思い返してみても、これだけの群衆はちょっと記憶にないほど。
昨年末、新日本プロレスにかぎらず、さまざまな団体の後楽園ホール大会に出向いてみると、東京ドーム周辺がじつに賑わしい。「今日はなんのコンサートかな?」とドーム正面の掲示板を眺めてみると、ジャニーズ系のグループが圧倒的に多く、その他、韓流スターのコンサートであったり、いわゆる懐かしの外タレさん(今回は、あのボン・ジョヴィだった)のライブだったりする。
ライブ開始の3時間、4時間も前にこの賑わいぶり。新日本プロレスの1.4東京ドーム大会(WRESTLE KINGDOM)もこういう感じであってほしい。毎回そう思っていたのだが、はたして今年の1.4当日の賑わいぶりには驚かされた。
正式な第1試合開始時刻は午後5時なのだが、第0試合は午後4時にスタート。しかも、今回は“お祭り的な”ニュージャパンランボー(時間差バトルロイヤル)ではなく、NEVER無差別級6人タッグ選手権への挑戦権が懸かった5チームによるガントレットマッチ(勝ち抜き戦)である。
エントリーメンバーを見ても、過去、東京ドームのメインイベントを張った永田裕志もいれば、鈴木みのるもいる。その他の選手にしてもドーム大会の本戦に名を連ねていて当然のメンツがゴロゴロとひしめいている。
そんな効果もあったのか、聞くところによると正午ころにはもの凄い人だかりがグッズ売り場付近を中心に出来上がっていたというし、私が会場入りした午後2時過ぎくらいには、すでに入場のため観客が長蛇の列が作っている状況で、正直ビックリ。
過去15年ほどを思い返してみても、これだけの群衆はちょっと記憶にないほど。
「これは、ひさしぶりに外野スタンドまで開放されるかも?」
そんな感触も得てウキウキした気分とさせられた。結果的に、観衆は昨年より3167人増の3万8162人と発表された。目標の4万人突破、外野席の開放までは届かなかったものの、フィールド席、内野スタンドは右翼・左翼のポール際までビッシリと埋まっていた。
まあ、これはこれでよろしいと納得しておきたい。3167人の観客増をかるく見てはいけない。東北のビッグマッチ会場である仙台サンプラザホールを札止めにした場合の観衆より多くの人たちが詰めかけたことになるのであるから。
そして、単なる観客数だけでは測れない数値に現れない部分にも驚きと喜びを感じた。第0試合からメインイベントに至るまでの全10戦。正味4時間にわたる興行。その間、ドーム全体が沸きっぱなしという印象だった。
私の場合、放送席の解説についているときは当然ヘッドセットを装着しているのだが、今回は解説がない試合のときもイヤホンで実況を聞ける状態でリングサイドに座っていた。
だから、とくにそこを強く感じた。広すぎる東京ドームのリングサイドというのは意外に観客の熱気や歓声がとどきにくい場所。そこでヘッドセットやイヤホンを付けていると、よけいに反応がわかりにくくなってしまう。それがつねであったのに、もの凄い津波のような声援、熱気がストレートにリングサイドまで押し寄せてくる。
そう、この感覚だ。この感覚が1990年代、新日本プロレスvs全日本プロレス対抗戦や新日本vsUインター全面戦争が開催されたときの熱気。それに近い空気をひさしぶりに感じたのが心地よかった。
その現象ひとつをとっても、新日本プロレスに、「時は来た!」と言っていい強い追い風を感じたしだいなのである。
今大会の全9試合。タイトルマッチが8戦で、終わってみれば全8王座が移動した。こんな事態も初めて。唯一のノンタイトル戦だったオカダ・カズチカvsジェイ・ホワイト戦に関しても、オカダがつねにベルトを巻いているか、チャレンジャーの立場にいた過去からいくと、レインメーカー王者オカダにジェイが挑戦するかのような図式であったから、全試合タイトル移動といってもいい結末であったと思う。過去のドーム大会において、こんな結果も前代未聞である。
さて、ここで全試合を振り返っていたら。コラムの文字数がかるく2万字を超えてしまいそうだ。そこで後半の3試合に絞って、私的総評を記していきたいと思う。
■ジェイという若干難解ながらレスリングに長けた存在を誰かに言い換えるなら、イチバン似た存在は蝶野正洋かもしれない。
第7試合のオカダ・カズチカvsジェイ・ホワイト。まず、ド派手なガウンを脱いだオカダがショートタイツ姿に戻っていたことを知って、大観衆がどっと沸いた。
それ以降、オカダへの大声援のみがドームを支配しつづけた。これほどまでに一方的な“オカダ支持”の空気は過去になかったように思う。裏を返すと、そこまでジェイがヒールとしてホンモノとなった証拠だろう。
昨年の『G1』を契機として、層の厚い新日本マットのトップ戦線に躍り出たジェイ。いまや、BULLE CLUBのリーダー(気取り?)と言ってもいい立場にまで成り上がった。棚橋との因縁にひと区切りがついたあと、ジェイは外道との電撃合体からオカダを徹底的に狙いつづけた。
あまりのジェイの暴走ぶりに、棚橋&オカダのドリームタッグが誕生するという、予想を超えた図式まで現実のものとなった。
ヒールとしてジェイが自分のランクを上げれば上げるほど、オカダ人気が沸騰する。じつは、これが一石二鳥の“ジェイ効果”となったわけだ。
現在無冠とはいえ、率直なところ、この1~2年のオカダ人気は低迷していたと思う。強すぎる王者、安定しすぎている王者、弱点・欠点のない王者。最初はブーイング。ところが、ブーイングが消えると、反応が鈍くなってきた。つまり、あらゆる記録を塗り替えていく絶対的な存在・オカダといえども、壁にぶつかっていたのだと私は解釈している。
結果的に、そこに命を吹き込んだ存在がジェイ。昨年下半期の新日本マットをもっともカオス状態へと導き、活性化させた人物としてジェイの活躍はMVP級だと評価しているのだ。
おそらく読者、ファンのみなさんも私が異常なほどジェイびいきであることに気づきはじめているだろう。ただし、そこにはちゃんと理由がある。
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