株式会社カプコンで、『ロックマン』シリーズ、『めがみめぐり』などのゲームのプロデュースを行っている、野中大三(のなかだいぞう)さんがプロレスコラムを特別寄稿!
今回は“ゲームスピード”に着目した野中さん。プロレス観戦歴35年のゲームクリエイター視点から観たケニーvs棚橋戦の注目ポイントとは?
■『バンドリ! ガールズバンドパーティ! presents WRESTLE KINGDOM 13 in 東京ドーム』
2019年1月4日(金) 15時開場 17時試合開始
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■ケニー選手vs棚橋選手に見るゲームスピードの違い
こんにちは。ゲーム会社カプコンでゲームクリエイターをやっている野中大三です。前回に続いて二回目のプロレスコラムを掲載いただくことになりました。今回もゲームクリエイターならではのプロレスの楽しみ方を紹介してみようと思います。
「ゲームスピード」という単語があります。
単語の定義はゲームタイトルやジャンルによって様々ですが、概ね「プレイする人が感じるキャラクターやゲーム進行の速度」を指しています。決してキャラクターが動く速度や、コンピュータの処理速度ではありません。「ゲームの展開の速度」が「ゲームスピード」です。
使い方の例を挙げると「このゲームはゲームスピードが速くて爽快感がある!」といった肯定的な使い方や「ゲームスピードが速すぎて何をしていいかわからない」といった否定的な使い方があります。
ゲームをしたことのある人なら、なんとなく伝わりますよね?
ゲームスピードに単位はありません。なぜなら判定基準はゲームを遊ぶユーザーの感覚だからです。数値ではなく、遊ぶ人が実際に「どう感じたか」が判定基準になるのです。
ゲーム脳を持った僕はプロレスを観戦するときに、プロレスにもゲームスピードを意識して楽しんでいます。ゲームでのゲームスピードが「ゲームの展開の速度」を指すなら、プロレスにおけるゲームスピードは「試合の組み立ての速度」と定義できます。そして判定基準は僕たちファンの感覚です。
ここまでのお話で、ゲームスピードの速い選手やそうでない選手が頭に浮かんだのではないでしょうか。
1.4東京ドームのメインイベントでIWGPヘビー級タイトルを争うケニー・オメガ選手と棚橋弘至選手の2人はこのゲームスピードが極めて異なる2人だと僕は見ています。
同じルール、同じ新日本プロレスのヘビー級で試合をしているにも関わらず、あたかも違うゲームのキャラクターかと思えるほど違います。特筆すべきはケニー選手のトップギアのスピードでしょう。元ジュニアヘビー級のケニー選手はハイスパート状態に入ると圧倒的なスピードを発揮し、さらにそのスピードを長時間維持することができます。これは現在の新日本プロレスでは類まれなる特徴だと言えるでしょう。
棚橋選手も決してゲームスピードが遅いわけではありませんが、どちらかと言うと速さよりもスピードの調整に優れた選手です。序盤は速めて、中盤に落とし、終盤に一気に速くする、といった変則的な組み立てができるのも棚橋選手らしい技術と言えるでしょう。
ゲームスピードで勝るケニー選手がトップギアを維持し続けると、棚橋選手が技を1つ繰り出す時間にケニー選手は技を2つか3つ出すくらい組み立てに差が出ます。両者の試合の組み立てのテンポがずれ、ケニー選手が1周追い抜いてしまう可能性もあると予想しています。
ケニー選手の展開の速いプロレスは観客の予想を上回り、どんどん先の攻防を見せてくれます。すなわち、「予想外」の連続が僕たちに興奮を与えてくれます。もちろん対戦相手は先手を取られることが多くなり劣性を強いられることが多いですよね。
となると、スピードで劣る棚橋選手は今回のタイトルマッチは不利なのか。
答えは「NO」です。
棚橋選手は今年の『G1 CLIMAX』優勝決定戦の飯伏選手戦で、ゲームスピード上回る選手との一戦をコントロールする試合の組み立てを見せてくれました。手数と機動力で上回る飯伏選手に棚橋選手はゲームスピードを合わせるのではなく、自身のペースで試合を組み立て、周回差で追い抜こうとする飯伏選手を待ち構えるようにして叩き落として、勝利を掴みました。
この一戦の棚橋選手はゲームスピードの異なる飯伏選手にペースを狂わされることなく、得意なゲームスピードで終始試合を組み立てていました。ゲームスピードを制した棚橋選手が勝敗も制した一戦だったのです。
ゲームの話に戻しましょう。
ゲームもプロレスと同じで、ゲームスピードが速い=おもしろい、というものではありません。ユーザーが把握できる速度と、それを少し上回って制御できない速度の行き来くらいがスリリングで心地いいものだと僕は思っています。終始速い展開だとついていけないし、終始遅くても退屈してしまう。
ゲームはユーザーがプレイしてはじめて成立するものなので、ユーザーの感覚がとても大切なのです。
ユーザーの感覚はプロレスだと「対戦相手の感覚」であり、僕たち「観客の感覚」にあたりますね。ケニー選手と棚橋選手はどちらもいろんな対戦相手の感覚と会場の感覚を察知して、最適な試合を組み立てる達人です。しかし、両者のゲームスピードにこそ絶対的な差、違いがあると僕は見ています。そんな2人のタイトルマッチは一体どんなゲームスピードで展開されるのか楽しみでなりません。
棚橋選手がケニー選手の速さについていくのか、それともケニー選手が棚橋選手に付き合うのか。
何度もやりあった両者のタイトルマッチは短時間で決着するとは思えないので、試合中に何度もゲームスピードが変わることも予想されます。ケニー選手は60分をトップギアで戦い抜ける稀有な選手です。長期戦になったとしてもスピードを緩めない戦い方だってできます。しかし、今回のタイトルマッチの挑戦者は棚橋選手です。王者のペースで試合を進めて防衛したとしてもそれはファンが納得できる勝利とは言えません。
ケニー選手が棚橋選手にどこで合わせるのか、合わせないのか。逆もまた然りで棚橋選手はケニー選手について行くのか行かないのか。達人の領域に達した2人のこの一戦はゲームスピードの支配こそが勝敗のカギになると僕はにらんでいます。
全く異なるタイトルの格闘ゲームのキャラクターが戦うように、ゲームスピードに大きな違いがあるこの一戦はどちらに主観を置くかで試合の感じ方は大きく異なるはずです。
みなさんも両選手のスピードの違いに着目してこの一戦を楽しんでみませんか?
■野中大三(のなか・だいぞう)
株式会社カプコン プロデューサー
『ロックマン』シリーズ、『めがみめぐり』などゲームタイトルのプロデュースを行っている。
プロレス観戦歴35年。現在の好きな選手はエル・デスペラード選手。
※お知らせ
『ロックマン』30周年特設サイト
http://www.capcom.co.jp/game/content/rockman/30th/
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2019年1月4日(金) 15時開場 17時試合開始
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