井上亘スペシャルインタビュー(後編)/リングの上の結果
4ヶ月間の失踪という異常事態を招きつつも、メキシコで確かな手応えを掴んだ井上亘選手。11月11日両国国技館大会の新日本マット復帰戦で、IWGP Jr.王者・田口隆祐選手に完勝した。
これを受け、12月8日大阪府立体育会館大会における両者のIWGP Jr.選手権試合が緊急決定。井上選手は、ベルト奪取に絶対の自信を見せた——。
–メキシコに行って、体力面などの変化はありましたか?
井上「一応、体重は98kgになりました。たぶん、もっともっと行けますね」
–まさか、ヘビー級転向を考えているのでは?
井上「今年の1月8日(後楽園ホール)、タナ(棚橋弘至)と組んで、永田裕志、金本浩二組と対戦したんです。その時、永田さんと闘ってみて、これはこれで面白いなと思いました。それと、これはメキシコならではの運命だったんですけど、ウルティモ・ドラゴンさんを助けたことがきっかけになって、越中(詩郎)さんと闘ったんです。それで『(ヘビー級とも)やれる』と、正直言って思いました」
–では、やはりヘビー級に興味が?
井上「今は新日本Jr.でトップを獲ることが一番の目標です。転向とかは考えてないですけど、今の体重でヘビー級の選手と闘っても何の問題もないと思っています。そういうスタンスです」
–改めて、新日本マット復帰戦を振り返って下さい。
井上「大ブーイングも覚悟していました。そして、それさえも利用して、会場を熱狂させようと思っていたんです。メキシコでずっとやってきて、その変え方にも手応えを感じていましたからね。でも、入場したらファンの皆さんが凄く温かく迎えて下さった。正直、客席を見るのが怖い部分もあったんですけど、僕が視線を動かすたびに反応があって。その気持ちに凄く応えたいと思いました」
–IWGP Jr.王者の田口選手を完封しましたね?
井上「錚々たるメンバーを相手に防衛を重ねたチャンピオンなので、ナメてもないし、油断もしてない。ただ(両国では)僕の知らない田口選手の成長した部分は感じられませんでしたね」
–フィニッシュは、変型トライアングルランサーでしたが?
井上「今までのトライアングルランサーは、下半身の力でロープに逃げられてしまうことが多かった。『それなら、脚も固めてしまえ』という発想です。まぁ、正直言って、それほどすぐに出す気はなかったんですよ。でも、意識していた田口から獲れると思ったので。その瞬間、一番自信のある技を出しただけなんです」
–トライアングルランサーにはこだわりがある?
井上「多分、僕はこの技と一生付き合って行きますね。たしかにこの先、新しい技は必要になって来ると思います。でも、多少改良はするにせよ、この技を使い続けます。ほかの新技があっても、僕のフィニッシュはこれでいいんです。選手を代表する技ってありますよね。この技がそうなればいいと思います」
–さらに進化して行く?
井上「まだ違う形が3つありますよ。勝負所で必要だったら出すつもりです」
–メキシコ滞在中、日本の情報は届いていましたか?
井上「雑誌が何週間か遅れで送られて来るぐらいでしたね。でも、ルチャ・リブレにしても、ジャベ(関節技)にしても、自分の考えでは思いつかないようなモノを、時々学んだりするんですよ。そういう出会いがすごく新鮮だったし、そっちの探求の方が面白かったですね。新日本のことはあまり意識してなかったです。自分が強くなって帰ればいいだけの話なんで」
–例の置手紙には「今ある壁を乗り越えて、必ず帰ってきます」と書かれていましたが、実際に乗り越えることはできましたか?
井上「それは、リング上を見て欲しいです」
–その壁とは何だったのですか?
井上「今、言葉でいってもしょうがないです。レスラーはリング上の結果がすべてなんで」
–それでは、IWGP Jr.戦への意気込みをお聞かせ下さい。
井上「ここでシングルを獲らなかったら、僕に後はないですよ。チャンピオンが誰であろうと、(ベルトを)獲る自信があるから帰って来たんです。(ベルトを獲って)俺が新日本Jr.を引っ張って行きますよ」
–井上選手の復活を心待ちにしていたファンへ、メッセージをお願いします。
井上「今回は私の行動で、ファンの皆様、会社の皆様、レスラーの仲間に、大変なご迷惑をお掛けしました。そのことをまずお詫び申し上げます。しかし、僕はプロレスラーです。失踪という形になりまして、それから帰国しました。自信を持って帰国しました。あとはリング上を見て欲しいです。僕は新日本Jr.のトップを獲るために帰って来ました。必ずベルトを巻いてみせます。よろしくお願いします」
——「自分は変わった」。力強い視線で真正面を見据え、そう断言した井上選手。IWGP Jr.戦のリングの上で、貫き通した信念の結果を見せる。